33歳女性中学教師、12年ぶりに再会した教え子に恋して悲劇。100万円を失う

33歳女性中学教師、12年ぶりに再会した教え子に恋して悲劇。100万円を失う

実際に届いたLINE(里美さん提供)

あなたは今まで「大恋愛」と呼べるような恋をしたことはありますか? 自分の全てを投げうったとしても、少しも惜しくないというような相手と関係が持てるというのは幸運なことです。そんな幸運に巡り合うことができた女性教師のエピソードをお聞きしました。

◆教師生活12年目の音楽教師

 大恋愛エピソードを披露してくれたのは里美さん(仮名・33歳)。女子短大の音楽専攻を卒業して、今年で教師生活12年目になる中学校の音楽教師です。里美さんが30歳の時に、かつての教え子だった春樹くん(仮名・22歳)と、とあるコンサート後の打ち上げで再会したことから彼女の恋愛は始まります。

 春樹くんは、教師生活一年目の初めての生徒だったこともあり、とくに印象に残っていた生徒だそうです。

 彼は中学生だった頃から音楽大学への入学を目指しており、とくに声楽に力を入れていました。そのため、よく放課後に歌の伴奏をしてあげていました。

「当時から音楽に熱い情熱を注いでいましたね。それに顔も可愛いというか、整っていて、クラスの女の子のファンもいたみたいです。本人は音楽のことしか頭になかったみたいですけどね」

◆新任の時に担当した生徒との奇跡の再会

「まあ、でも、楽しんでいる自分もいました。波長が合うっていうか、懐いてくれてたので、可愛いな〜、と。音楽好きっていう共通点があったからなのかもしれませんが……」

 子犬みたいに里美さんに懐いていた春樹くん。その後、高校に入ってからも夢を諦めずに努力を続け、当時から志望していた音楽大学に入学しました。

 里美さんと再会した時の彼は、大学生になって垢抜けして、声楽科に籍を置くイケメンテノールになっていました。

「春樹くんは天性の声を持っていましたし、たくさんの努力によって磨きがかかっていて、聞いてるだけで耳がくすぐったくなるような美声になっていました」

 記念すべき教師一年目の生徒の目覚ましい成長に、得体の知れない魅力を感じてしまったそうです。

◆ソロリサイタルの伴奏を担当することに

 里美さんは2年前に同僚だった教師の男性とお別れしフリーでした。奇しくも春樹くんも半年前に彼女とお別れをしたばかりだったそうです。再会の打ち上げの時に話が盛り上がり、春樹くんのソロリサイタルの伴奏をすることになった里美さん。

「彼が伴奏を探していると聞いた時、『じゃあ、わたしがやろっか?』って言ってみたら、とんとん拍子に決まっていきました。教師なんて毎日決まった時間に決まりきった授業をするだけですから何か楽しみを探していたというのもあります」

 その後、週末を利用して二人はリサイタルに向けて練習に励む日々が始まりました。練習が長引いたり、ミーティングをする必要があったり、二人でいる時間は長くなるばかりです。そのうち、レッスンスタジオから近かった里美さんの部屋に春樹くんが泊まり込むようになります。

◆100万円以上の費用を里美さんが払う

「思ったよりも仲良くなってしまって、いつの間にか私の方が彼のことを好きになっていました」

 気が付けば、リサイタルに必要な費用を出費していた里美さん。練習スタジオ費用、ホール使用費用、ポスター印刷費用、衣装費用などその額は100万円超にまで膨れ上がっていました。

 春樹くんの弛(たゆ)まぬ努力と、里美さんの出費によって、リサイタルは大盛況となりました。なんとクラシック関連雑誌からも取材が舞い込み、業界でもちょっとした話題になったそうです。

「二人して、次のリサイタルに向けて燃えていました。今度はもっと大きな場所でやりたいね、とか、プレスリリースも出してみようか、とか、曲目をもっと難しいものにしてみようとか、ハイになっていました」

 そんな矢先、里美さんに悲劇が襲います。

◆人差し指を骨折、泣く泣く伴奏をあきらめる

 なんと里美さんが運動会の設営中にテントに指を挟んでしまい人差し指を骨折するというアクシデントに見舞われてしまったのです。

「とても悔しかったですが、さすがに骨折してしまってはどうしようもありません」

 仕方なく、次期リサイタルの伴奏は春樹くんの後輩のK子さんに委ねられることに。それからもLINEで連絡は取り合っていたり、練習終わりに家まで寄ってくれたりしていたそうですが、リサイタルも間近になってくるとそれどころではなくなっていました。里美さんも進路指導の主担当を任されて、仕事が立て込んでいてなんとなく二人はすれ違っていました。

◆愛する人の成功に感動

 春樹くんの二度目のリサイタルも無事に成功を収め、前回以上の反響がありました。業界内で知られている大物音楽家も会場に来ていて、彼を讃えて帰っていったほどだったとか。かつての教え子、そして、愛する人が成功するのを間近で見て、感極まった里美さん。

 その興奮が収まってきた頃に、春樹くんから一通のLINEが里美さんのもとに届きます。そこには目を疑うような内容の文面が書かれていました。

◆突然の報告にア然「子どもができた」

 里美さんの代わりに伴奏をお願いした後輩のK子に子どもができたというものでした。もちろん、父親は春樹くんです。その文面をじーっと見つめて立ち尽くす里美さん。里美さんの心中には様々な思いが駆け巡ります。

 なぜ? どうして? 私のことはどう思ってるの? これから春樹くんはどうするの?

「困惑や苛立ち、悲しみの感情が一気に押し寄せてきました。その晩は眠ることもできずに、泣き明かしていました」

 一晩泣き明かした翌朝、不思議と里美さんの心は澄み切ったように穏やかになっていたそうなのです。

◆短い一文を送ってLINEをブロック

 職場と家の往復するだけの毎日に突如として現れたかつての教え子。彼と再会し、放課後の練習の続きのような日々を短い間だけだったけれども過ごせたこと。彼と一緒に頑張ったことや、音楽に一生懸命になったこと。春樹くんが夢を叶える瞬間に立ち会えたこと。何より、誰かに何かを教える喜びを思い出させてくれたこと。

「だから、春樹くんのために使った100万円という大金も少しも惜しくはありませんでした」

 里美さんはLINEを開き、「教えてくれてありがとう」と短い一文を送ってから、春樹くんをブロックしました。

「何の後悔もありませんでした。一生分の私の愛情を彼に注ぐことができた満足感でいっぱいでした。もちろん、寂しくはありますけど」

 でも、教師ってそういうものですから。みんな、卒業していくんです。と里美さんはぽつりと言葉を付け足しました。

◆「教師の仕事が楽しくなった」と語る里美さん

 春樹くんと後輩のK子さんのその後については知らないそうです。でも、春樹くんと過ごした短い日のことは自分の心の中で消えることはなく、自分を照らしてくれる、里美さんはそう信じています。

 それからは、今まで以上に、教師という仕事が楽しくなったそうです。誰かに何かを教える喜びや、夢を叶える手伝いをできることに感謝しながら、教職という仕事に邁進しているそうです。

「きっと、“教師”は私の天職なんだと思います」

 話の締めくくりに里美さんはそう言いました。

―シリーズ「私の大恋愛」―

<文/浅川玲奈>

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