『鎌倉殿の13人』ヒットの理由は伏線回収のしやすさ?“ネタバレ視聴派”も満足するわけ

『鎌倉殿の13人』ヒットの理由は伏線回収のしやすさ?“ネタバレ視聴派”も満足するわけ

『NHK2022年 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」完全読本』NIKKO MOOK(産経新聞出版)

鎌倉幕府の2代執権となる北条義時を中心に乱世の権力争いを描くNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)。5月8日放送の第18回「壇ノ浦で舞った男」では、ついに源氏軍が平家を滅ぼし、物語は序盤のクライマックスを迎えました。

『鎌倉殿の13人』は放映されるたびにSNSでも複数のワードがトレンドに上位になり、歴史ファン、大河ファンのみならず幅広い層を魅了していることが見受けられます。これほどまでに支持を集めるのは「鬼脚本」と称される脚本・三谷幸喜氏の素晴らしい手腕や、豪華キャストであることはもちろん、それ以外にも様々な理由が考えられます。そのヒットの理由を分析してみましょう。

◆【その1】知名度抜群。馴染みのある人だらけ

『鎌倉殿の13人』は毎週楽しみにしている子供や若者ファンも多いといいます。上総広常役・佐藤浩市さんが出演した4月16日放送の「土曜スタジオパーク」(NHK総合)では「うちの息子(小6)が一番好きなのは上総介*です」という視聴者のお便りが読み上げられ、そのファン層の底深さをうかがい知れました。(*上総広常の呼称)

 ここ数年の大河は金栗四三、明智光秀、渋沢栄一など、歴史上の重要人物ではありますが、大通りから脇道にいるような人物が続いていました。一方、『鎌倉殿の13人』は主演こそ将軍・頼朝の側近である北条義時ですが、のちに政治の実権を担う彼は、源平合戦〜鎌倉時代の間、激動の歴史の流れの中心にいた人物です。源頼朝や源義経など、小学校でも習う有名な人物が主要キャストとして登場するのは、子供のみならず歴史ファンでない大人も関心を寄せやすい要素なのでしょう。

 また関東圏の人にとっては、伊豆や鎌倉などの耳馴染みのある土地が登場し、比企や三浦など武将の名字も関東の土地を連想させるワードが多いのもこのドラマの特徴。それゆえ身近に感じ、内容もすっと入ってきやすいのではないでしょうか。関東近郊は、様々な番組に観光スポットとして紹介される機会も多く全国的な知名度も高いですからね。

◆【その2】テンポよく見せる絶妙な取捨選択感

 4月に最終回を迎えたNHK朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で絶賛されていたのがそのテンポ。『鎌倉殿の13人』でも、疾走するようなスピード感で物語は進んでいます。キャラクターやエピソードを濃く描きながらも、テンポよく感じるのはエピソードの取捨選択が絶妙であるからでしょう。

 不満だという視聴者の意見もありましたが、屋島の戦いはナレーションで終了、源平合戦の最終局面・壇ノ浦の合戦も10分未満で、有名な安徳天皇と二位尼のやり取りもなく終了しました。期待通りの多くのエピソードやキャラクターを入れることもできたでしょうが、その分物語が間延びをしたり横道にそれ、ストーリーの進行を妨げることもあります。この大幅なカットには、歴史をそのままなぞるだけではない『鎌倉殿の13人』の「ひとつの物語作品としての信念」を感じられました。

 その他にテンポの良さを助けているのが、新説やオリジナル設定をふんだんに取り入れていること。義時と八重が結ばれる展開は仮説ではありますが、『鎌倉殿の13人』で時代考証を務める坂井孝一先生が、「八重姫は北条義時と再婚し、泰時を産んだのではないか」と提唱しているものを取り入れたと思われます。腰越状に平宗盛が絡んでいるという展開や、巴御前が和田義盛に気に入られたということも、歴史上の真偽は不明ですが、物語上の展開や登場人物の関係をわかりやすくし、そしてこまごまとした流れを省略させるエッセンスになっています。

◆【その3】ネタバレ視聴派も安心!より伏線を楽しめる

 ドラマや映画などの物語の展開や結末を、先に把握してから見るという“ネタバレ視聴”が、『モーニングショー』(テレビ朝日系)や『スッキリ』(日本テレビ系)などのワイドショーで取り上げられ話題になっています。『スッキリ』によると、その理由として「先に結論を知ってから伏線回収しながら見たい」「ドキドキして心を乱されたくない」「安心して見たい」などの声があるようです。

『鎌倉殿の13人』は既に歴史教科書で流れが把握できている分、ネタバレ視聴派も結末を調べずとも初見でネタバレ視聴と同様の満足感が得られていると思われます。また、昨今視聴者の間で「伏線回収を楽しむ」というドラマの楽しみ方が増えたおかげで、のちの展開へのヒントが随所にちりばめられている三谷脚本の妙を、素人でも察することができるのも満足度を高くしています。

 5月1日放送の第17回で、のちの仇討ちが有名な“曽我兄弟”が、その兄弟かも定かではない状態で一瞬しか出こなかったもかかわらず「これは仇討ちへの伏線だ」となぜかトレンド入りしていたのは驚くべきことです。また、ストーリーの軸が把握されていることによって、三谷氏のセリフ、構成、アイデアを落ち着いて堪能できることも、脚本の絶賛につながっているのでしょう。

 他、現代でもわかりやすい現代にも通じる言葉を使った会話や、どんなに殺伐した展開でも物語の中で随所に織り込まれるギャグや癒し場面など、すべての要素がバランスよくまじりあって『鎌倉殿の13人』は私たちの心を虜にしています。新キャストも続々発表され、ますます今後の展開から目が離せなくなってきました。

<文/小政りょう>

【小政りょう】

映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

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