宇垣美里「私たちが映画になったよ」/映画『メタモルフォーゼの縁側』

宇垣美里「私たちが映画になったよ」/映画『メタモルフォーゼの縁側』

宇垣美里さん

元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。

 そんな宇垣さんが映画『メタモルフォーゼの縁側』についての思いを綴ります。

●作品あらすじ:人付き合いが苦手な高校生・うらら(芦田愛菜)は、毎日こっそりBL(ボーイズラブ)漫画を楽しんでいます。

ある日、うららがアルバイトする本屋に75歳の老婦人の雪(宮本信子)がやって来ます。雪は、表紙の絵柄が気に入り、1冊のコミックを手に取りますが、その内容は二人の男子高校生を主人公にしたBL作品でした。

夫に先立たれ孤独に暮らす雪は、男の子たちの恋物語に魅了され、これがきっかけで、うららと漫画について家の縁側で語り合ったり、年の差58歳の友情を深めていきます。

鶴谷香央理による漫画原作を、『泣くな、はらちゃん』『最後から二番目の恋』などヒットドラマ多数の岡田惠和による脚本、『泣くな、はらちゃん』の演出にも参加した狩山俊輔監督で映画化した本作を、宇垣さんはどのように見たのでしょうか?

(以下、宇垣美里さんの寄稿です。)

◆好きを語り合う無限の喜び。私たちが映画になったよ

 観終わった後、あまりの多幸感にうっとりしながらぼろぼろと涙がこぼれてしかたなかった。あぁハンドル名しか知らないあの子に、ただ同じ舞台が好きというだけで?がったあの人に伝えたい。私たちが映画になったよ。この作品で描かれているのは、好きなものについて語り合う相手のいる無限の喜び、つまりは私たちの物語だ。

 75歳の雪さんはきれいな表紙に惹かれBLコミックスを手に取った。初めて触れるその世界に驚きつつも、いつしか夢中になっていた雪さんはいそいそと次巻を求め本屋へと向かう。そしてそこで出会ったのがBL好きなバイトの女子高生・うらら。こうして58歳も年の離れた2人は友達になった。

◆好きの気持ちを人に伝えずにはいられない

 とにかく雪さんがかわいい。続きが在庫切れと聞いて深いため息をつき、1年半に一冊だから……とあと何冊読めるか計算したり、キャラクターに向かって「がんばれー負けるなー幸せになれー!」と拳を振り上げて応援したり。そのひとつひとつに覚えがありすぎて、わかる、わかるよと頷きが止まらなかった。いくつになったって好きなものに出合うのに遅すぎることなんてないのだと、雪さんは教えてくれる。

 一方のうららのおすすめを教えてと言われて山のように漫画を持っていってしまうところも、その後ろ暗さもよくわかる。好きに向き合うのは、決して簡単なことではない。

 出会いをきっかけに2人の歩むその過程すべてがあったかくて眩しくて、芦田愛菜さんと宮本信子さんにあの2人を演じてもらえて本当によかった。この優しい世界がずっとずっと続けばいいのに。

「ずーっと誰かと漫画のはなしをしたかったの!」そう嬉しそうにはしゃぐ雪さんと控えめな笑顔で「私も」と答えるうららの姿に、だから私たちは好きの気持ちを人に伝えずにはいられないんだと胸がいっぱいになった。それがあれば私たちは霞を食ってでも生きていける。

 うららちゃん、満足できない部分もあったかもしれないけれど、初めての締め切りをちゃんと守ったの、めちゃくちゃ偉かったよ。

『メタモルフォーゼの縁側』

出演/芦田愛菜 宮本信子 配給/日活 原作/鶴谷香央理 監督/狩山俊輔 ?2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

<文/宇垣美里>

【宇垣美里】

’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。

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