今市隆二の新曲「辛」が「ギャルなの?」とザワザワ。確かな“R&Bへの追求”も

今市隆二の新曲「辛」が「ギャルなの?」とザワザワ。確かな“R&Bへの追求”も

「辛」(提供:LDH)

「三代目 J SOUL BROTHERS from EXULE TRIBE」(以下、「三代目JSB」)のツインヴォーカル今市隆二が、6月17日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にソロとして初登場し、新曲「辛」をテレビ初披露した。

 ソロツアー『RYUJI IMAICHI CONCEPT LIVE 2022 “RILY’S NIGHT”』開催に先がけてデジタルリリースされたシングル第1弾「辛」(読み:つら)は、今市が作詞に参加しており、そのリリックセンスが話題になっている。

 今回は、「イケメンとLDH」をこよなく愛し、所属する音楽プロダクションでは、「R&B」を担当する筆者・加賀谷健が、「辛」を足が掛かりに、今市隆二の音楽性の核心に迫る。

◆中毒性のあるソウル・ナンバー

「辛」は、とにかくキャッチーな曲だ。このキャッチーさ、最近リリースされたソウル・ナンバーなら、ポスト・マローンがドージャ・キャットをフィーチャーした「I Like You」くらい耳にこびりつくように残る。

『ミュージックステーション』オンエアを受けネット上では、都会の片隅にいる男女の等身大の葛藤を歌い込んだリリックが、とにかく大きな話題になった。

 歌詞が「衝撃」で、放送中からTwitter上がザワつく事態に。特にサビの部分である「辛 マジで辛」が、「頭から離れない」「ギャルが作ったの?」などのツイートが散見された。恋する男女の心の揺れや機微を、よくここまでシンプルにかつ的確に読み込み、歌い込んだものだ。

 そして今市特有のソウルフルなサウンドと歌い回しは、一度聴いたら、何度でもループ再生したくなる。そんな中毒性のあるソウル・ナンバーだと思う。

◆R&Bへの傾倒ぶり

 普段なら、我らが“臣君”こと登坂広臣と“岩ちゃん”の愛称を持つ岩田剛典の“臣岩コンビ”を全力で愛でることに心血を注ぐ筆者だけれど、「辛」からソウルの精神をキャッチしてしまっては、あぁ隆二さん!と、つい浮気根性丸出しになってしまう。隆二さん、辛いのは、ほんとこっちのほうですからね、と言いたいくらい。

「三代目JSB」ツインヴォーカルふたりのソロワークスとしては、一般的な指摘として、EDMの登坂とR&Bの今市とされている。登坂が、EDMやループ系サウンド路線で、USトレンドをキャッチしながら楽曲制作するなら、今市は、ある種のマイペースを保ちながら、彼が理想とする90’sのR&Bを追求している。

 それだけに今市のR&Bへの傾倒ぶりは筋金入りだということなのだが、バックボーンとするR&Bを心から楽しんでいるような心地よさがあるのが「辛」最大の魅力だ。

 あの繊細な歌声がR&Bとの適正としてtoo muchであることは筆者が改めて指摘するまでもない。今市は、今や間違いなく日本を代表するソウルシンガーのひとり。リスナーの心を捉えて離さない彼のサウンドは、いったいどこから生み出されるのか。今市の楽曲についての理解を深めるためにも、ここでR&Bの源泉をすこし辿っておきたい。

◆「メロ夜」で語られる絶対的レジェンドたちの固有名詞

 先日、音楽プロデューサー松尾潔がホストを務めるラジオ番組「松尾潔のメロウな夜」(NHK-FM、通称:「メロ夜」)に今市が初ゲスト登場した。冒頭で今市がセレクトしたアーティストを紹介された。ホイットニー・ヒューストン、ボーイズUメン、ブライアン・マックナイト、モニカ。でるわでるわ、90’s R&Bの絶対的レジェンドたちの固有名詞。

 特に今市のルーツを語る上で欠かせないのが、ブライアン・マックナイトだ。渡米した今市が、マックナイトの自宅に2ヶ月間ホームステイした有名なエピソードがオンエアでも回想されていた。

 2018年のソロデビュー後、初のアルバム『LIGHT>DARKNESS』には、マックナイトとの共作曲を2曲(「LOVE HURTS」と「Thank you」)収録。初ソロツアーの埼玉公演では、アンコールにマックナイトが特別ゲスト登場し、ふたりで分かち合うようにしてマックナイトの「Back At One」(2001年リリース)を熱唱した。同アルバムの他の収録曲「Diamond Dance」と「ONE DAY」の2曲もR&Bファンにはたまらないナンバー。

 そして何を隠そう、「三代目JSB」のデビューシングル「Best Friends’s Girl」を手掛けたのが、今市が2010年に挑戦した「VOCAL BATTLE AUDITION」で審査員を務め、これまで彼の成長を見守ってきた松尾だった。ブラックミュージックを専門とする音楽ライターとしての深い造詣から、「お箸の国のR&B」を標榜し、日本におけるR&Bシーンを牽引してきた立役者だ。そんな恩師との90’s R&B談義が、「メロ夜」トークとして盛り上がらないはずがないじゃないか!

◆ラジオ・パーソナリティとしてのトレンド感

 一方、世界のミュージック・シーンの動向にアンテナを張ることも忘れてはいないのが、今市の幅広さ。10周年アニバーサリーイヤーだった「三代目JSB」グループとしても、ソロ活動としても活動自粛を余儀なくされたコロナ禍の2021年は、バラエティに富んだ新譜に触れ、トレンド感をアップデートするのに絶好の機会だったはず。

 今市が木曜日パーソナリティを担当する『SPARK』(J-WAVE)の2021年11月4日オンエアでは、好きなアルバムを紹介するコーナー「RYUJI’S FAVORITE ALBUM」で、エルトン・ジョンがロックダウン中に発表した『Lockdown Sessions』(2021年10月22日リリース)を取り上げている。スティーヴィー・ワンダーなどビッグ・アーティストが参加した同アルバムで今市が注目したのが、エルトンがチャーリー・プースと共作した美しいバラード曲「After All」。

 直接的な影響が認められるわけではないけれど、マーヴィン・ゲイを信奉するチャーリー・プースのメロディアスなバラードナンバーが、今市本人の胸にも響いたのは、音楽体験としてかけがえのない事実。ラジオ・パーソナリティとしてのトレンド感を垣間見せる今市は、何よりも音楽を愛する人なのだと思う。

◆「三代目JSB」の歴史を刻みはじめたきっかけの音

 本題の「辛」に話を戻そう。「辛 マジで辛」。やっぱりクセになる。続く「と思う前に俺に鬼電してよ」。過去の音楽に対するこだわりを貫く、どこか懐かしいサウンドである反面、歌詞は今風の今市ワールドが押し出される。フレキシブルな弾みが特有のビートを刻み、古さと新しさを折衷した唯一無二のグルーヴ感とフローがある。

 シンプルでエモーショナルな「辛」の歌詞を読み込み、中毒性のあるサウンドをリピートするうちに、ふと頭をよぎるのが、「Best Friends’s Girl」であるのは、なぜだろう?

 ピアノ独奏のイントロがあり、指鳴らしで一拍、ヴォーカルが「誰よりも好きなのに 誰も知らない my love to you」と歌い出す。この歌いだしは、今市が担当。つまり今市が、今年12年目に入った「三代目JSB」の歴史を刻みはじめたきっかけの音ということになる。

 この事実に思い当たると、今市隆二のルーツは、グループのデビューシングルからすでに確かなR&Bフローとして確かめられる。この繊細な歌声を、何度でも聴き直し、いつまでも聴いていたい。そしてこのマスターピース(傑作)をずっと抱きしめていたい。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。

ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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