犬猫を殺処分から救いたい、支援団体ハナコプロジェクトが目指す未来とは

犬猫を殺処分から救いたい、支援団体ハナコプロジェクトが目指す未来とは

(左)山田あかねさん(右)石田ゆり子さん (c)hanako-project

テレビディレクター・作家として活躍しながら、先月20日に、俳優の石田ゆり子さんとともに、飼い主のいない犬と猫の医療費を支援する団体「ハナコプロジェクト」のスタートを発表した山田あかねさん。

 石田ゆり子さんとの関係を中心に聞いた前編に続き、後編では保護犬猫、野良犬の厳しい現状に心を痛めつつ「それを伝えることが自分の仕事なのだから」と揺れていた山田さんが、プロジェクトを始めた理由、そして今後への思いなどを聞きました。

◆「自分はテレビや映画を作る人だから」を超えて

――石田ゆり子さんとスタートさせた「ハナコプロジェクト」ですが、そうした思いに至った経緯を教えてください。

山田あかねさん(以下、山田):2010年に愛犬を亡くしたことをきっかけに、犬猫に関する取材を多くしてきました。福島の原発20キロ圏内に残された動物たちや、多頭飼育崩壊など、さまざまな現場に立ち会って、非常に悲惨な状況、助けなければいけない犬や猫たちを目にしてきました。時には手伝うこともありましたが、基本的にわたしは撮る側です。いつも揺れ動きながら、「それを伝えることが自分の仕事なのだから」と思っていました。

 それが『家族になろうよ』(NHKBSプレミアム2019)の取材で、スノーデン事件をスクープしたことで知られる世界的なジャーナリストのグレン・グリーンウォルドさんに、ブラジルへ会いに行って心を動かされたんです。

 彼はブラジルで自らシェルターをやっています。ジャーナリストの仕事とその仕事は別というか、犬が好きだからやっていると。「何で? 当たり前でしょ?」みたいな感じなんです。「自分はテレビや映画を作る人だから、それに徹して、手を出さなくていいのでは」という考えが、揺れていきました。2019年にアフガニスタンでテロリストの凶弾に倒れた医師・中村哲さんにも感銘を受けました。

◆残りの人生をもうちょっと還元したいと思った

――用水路の整備や農地の再生などでも、尽力された方ですね。

山田:中村さんはお医者さんですが、医療支援をやっていくなかで、医療だけでは助からない命があることに気づいて、自らブルドーザーの運転免許を取って用水路を作った。私も10年の取材を通じて「こういう仕組みがあればもっと助けられるのに」といったことが見えてきたんです。

 それでも「自分が手を出すことじゃないでしょ?」という思いがありましたが、私も年齢を重ねてきて、もちろん取材などは続けていきますけれど、残りの人生でやれることを、もうちょっと還元してもいいのではないかという気持ちになった。そうしたときに石田ゆり子さんと出会って、彼女も同じ思いだと知ったんです。

◆飼い主のいない犬と猫の医療費を支援する「ハナコプロジェクト」

――「ハナコプロジェクト」は、飼い主のいない犬と猫の医療費を支援する団体ですね。

山田:動物保護活動というと、シェルター経営がパッと浮かぶかと思います。しかし色々な現場を見てきて、シェルター運営をするなら今の仕事をやっている場合ではなくなると思いました。ブラジル在住のグレンさんは、ものすごい資産があるのと、お国柄も違います。日本の東京にいる自分に同じことはできないし、私自身、仕事を辞める気はありません。石田さんも俳優としての仕事があります。では自分たちには何ができるかと考えたときに、医療費支援があると思いつきました。

◆できることを着実に。10の動物病院と協力

――“不妊去勢手術”と“ちびっこケア”がすでにスタートしていますね。

山田:イギリスでは飼い主のいない犬や猫を動物病院に連れていくと、割引価格があったり、医療費が動物愛護団体から病院へ充足されるしくみがあります。そうしたシステムを構築していけたら。保護犬猫の不妊去勢手術も、スター獣医さんが月に100匹抱えるのではなく、多くの病院が月に2匹だけやれば相当な数になる。獣医さんは全国に1万人ほどいるわけですし。

 ただイギリスなどは、動物愛護団体に集まる寄付が年間数百億円だったり、動物病院も自社ビルも持っていて、そこで働いている人も何千人もいる。企業の寄付なども桁違い。大体歴史が200年くらいあります。そんなところに1〜2年で追いつけるわけがありません。

 無理なことをやろうとすると潰れていきます。気持ちだけでは回らない現実は何度も見てきました。だからできることを着実に。本当はいろいろな医療ができればいいですが、まずは、“不妊去勢手術”と“ちびっこケア”に行きついたんです。

――現在は10の動物病院と協力されています。

山田:全国47都道府県に1軒ずつくらいあるのが理想ですけど、大勢の獣医さんそれぞれと7〜8ヶ月ほどかけて何度もやり取りして、プロジェクトに賛同していただける病院を見つけていきました。増やしていきたい気持ちはありますが、命を預かるところですから、すぐには決め難いですね。

◆想像以上の反響。あっという間に最初のクラファン目標金額を突破

――プロジェクト発表から、今月末までのクラウドファンディングをスタート。ものすごい反響です。(※6月23日現在、支援者1万人超、支援総額7千万円以上)

山田:それまで石田さんと私の寄付だけでやっていましたから、正直、どこまで続けられるかも分かりませんでした。クラファンで1千万くらいを目標にして頑張りながら、その間に考えていこうと。事前の宣伝は一切しませんでした。石田さんということで、どうしても目立ってしまうけれど、そのことで注目を集めるのではなく、ひっそり始めて、地道に伝わっていけばいいと思っていました。

 それが、石田さんがInstagramに書いたら、ダダダ!と、あっという間に最初の設定ゴールだった1千万を超えて。ビックリしました。ネクストゴールを立てないといけないということで「じゃあ、2千万にしようか」と相談しているうちにそれも超えて。もう、どんどんどんどん。嬉しい驚きの連続でしたが、メールもものすごい数がくるし、数日は全く寝られませんでしたね。みなさんからの石田さんへの信頼度はこんなにすごかったんだと、私の想像をはるかに超えていました。

◆悩むことも多いけど、本当にありがたい

――現在、数人で動かしているそうですが、ここまで大きくなってくると、医療費支援の活動のほかに、プロジェクト自体を動かす人員も必要になってくるのではありませんか?

山田:色々整理をしているのですが、クラファンが落ち着いた段階で次の仕組みに動けるようにと考えています。自分たちだけで回していける範囲を超えてきたのは事実ですからね。自分のやってきたキャリアの蓄積で対応できることではなく、初めてだらけの連続なので、悩むことが非常に多いです。本当に大変ですが、一方で長い人生こうした経験はそうはできないのだから、本当にありがたいと思っています。

◆もっと命を救うために。小さな積み重ねが大きな力になる

――わたし自身、自分になにができるかと照らし合わせると、正直保護活動は難しいですが、寄付なら参加できると思えます。同じように考える人は多いと思います。

山田:そうですよね。お金持ちの人がたくさん寄付するのもいいですが、普通の人がちょっとだけするといったことも大事なんじゃないかなと。その積み重ねが大きな力になる。今回、本当に多くのみなさんが支援してくださっていて、しみじみありがたいことだと思っています。

 犬や猫に関心を持つ人が増えるのは、やっぱりいいことだと思うんです。生体販売であるとか、飼い方の悪い人がいたりとか、色々と問題はありますが、基本的には動物の命を助けたい人たちの方が圧倒的に多いと思いますから、そうした母体が増えることは力になる。

 私が10年前に取材を始めた時、犬と猫の殺処分は約17.5万匹(平成23年度・環境省)。今は2万匹台です。すごいスピードで9分の1ほどに減ったわけです。もちろん現場の頑張りがあるし、世の中の関心もある。そしてメディアで頑張って伝えてきた甲斐があったなと思います。これからも伝えていけば、世界は少しずつ変えていくことができるという実感もあります。

 ただハナプロに関しては、私たちもまだまだ力不足ですし、見守っていただけると嬉しいです。「日本を変えるぞ。おー!」といった感じではなく、自分たちにできることを少しずつやっていこうと思っています。

<取材・文/望月ふみ>

【望月ふみ】

70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi

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