48歳妻が夫を“クビ”に追い込んだ理由。「恐ろしいセリフ」で会社を味方に

48歳妻が夫を“クビ”に追い込んだ理由。「恐ろしいセリフ」で会社を味方に

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馬場ふみか演じる専業主婦が、モラハラ夫(野村周平)を社会的に抹殺しようと計画するドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(テレビ東京系、火曜深夜0時30分~)。話題のドラマを、夫婦関係について著書多数の亀山早苗さんが読み解きます(以下、亀山さんの寄稿)。

◆虐げられた妻が、夫を退職に追い込んだ方法とは

ドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』の3回目。職場結婚をして1年になる奥田茜(馬場ふみか)は、イケメン広告デザイナーである夫・大輔(野村周平)のモラハラに耐えて「いい妻」であり続けたが、夫のせいで流産したことから、復讐を決意する。

ネット上と玄関に差し入れられる手紙でしか接点のない「謎の仮面さん」の誘導にしたがい、夫を社会的に抹殺していく決意を固めた茜。5つの方法のその1は、ポジティブ感情を奪うこと。前回、不倫相手の前で強烈な恥をかかせて関係を終わらせたことで、夫のポジティブ感情を崩壊させたはずなのに、夫はどうやらまた社内で若い女性にちょっかいを出している。そのあたりは社内の後輩が情報を流してくれている。

5つの方法の2番目は、夫がこれまで築いてきた達成感を奪うこと。「仮面さん」からの連絡で、茜は夫がこれまで、部下たちのデザインを自分の名前で使っていたことを知る。部下たちは、「次はきみの名前で出すからさ」という大輔の言葉を信じて、無断盗用について意義を唱えられずにいた。これは強烈なパワハラである。

茜は、友人のライターに情報を流し、夫のしてきたことを世間に暴露、さすがに今の時代、社内の幹部たちもこれは容認できず、夫は会社を辞めるはめになった。

◆夫を本当に“社会的に抹殺”した、ある48歳女性の実話

実際に、夫を社会的に抹殺した経験をもつヒデミさん(仮名・48歳)は、当時を振り返って話してくれた。

ヒデミさんは、大手流通企業に勤めている。同期のカズヒロさん(仮名)と結婚したのは29歳のときだ。共働きで、ひとり娘を育ててきたが、どちらかといえば妻は仕事に重点を置き、夫は家庭を愛していた。

「そこはバランスですからね、うちはバランスがいいと思っていました。部署も私は営業、彼は事務職だったから、どうしても私のほうが忙しい。出張などもありました。でも夫は『いいよ、オレは定時で帰れるから』といつも言ってくれていた」

休みの日には、家族3人で、娘の行きたいところへ連れていった。ときには娘を実家に預けてふたりでデートすることもあった。

「幸せだなとずっと思っていました。好きな仕事を思い切りやることができて、家に帰れば優しい夫とかわいい娘がいて。だからいつも夫には感謝していたんです」

◆ある夜「お父さんが帰ってない」と娘

ところが8年前のことだ。同僚の女性から、「だんなさん、大丈夫?」と突然言われた。何が起こったのかヒデミさんにはわからなかった。よく話を聞いてみると、夫と社内の若い女性がつきあっているのではないかと噂になっているという。

「そのときは、まさかと一笑に付しました。同僚も『そうだよね、カズヒロさんはヒデミに惚れ込んでるもんね』と言ってくれた。当時、私は地道に業績を上げてきたことが評価されて、社長から賞をもらったり、女性初の役員になるのではないかという話がちらほら出ていたんです。組織って何が起こるかわからないから、周りの噂は信じない、踊らされないというのが私の持論。だから自分の出世のことも、夫の浮気のことも信じることなく、仕事に集中していました。周りにはいい仲間もたくさんいたので、仕事は楽しかった」

あるとき、ヒデミさんが3日間の出張に出た。出かけたその晩、電話をすると娘が出た。

「お父さんが帰ってないと娘が言うんです。ご飯も食べてない、と。その日、夫は代休をとれるから娘のことは任せろと言ったんですよ。それなのに。あわてて母に連絡して、家に来てもらうことにしました。夫とは連絡がつかなかった」

◆問い詰めると、夫の目がキョロキョロして

出張を切り上げるわけにはいかなかった。まんじりともせず翌朝を迎えると、夫から電話がかかってきた。学生時代からの親友が事故にあって瀕死の状態となり、病院にいたというのだ。

「娘に連絡くらいしてよと言ったら、『ほんっとにごめん。さっき電話した』と。その場はそれですませましたが、なんだか違和感があった。たとえ親友が事故にあったのが本当だとしても、娘の夕飯を忘れるような人じゃない。いったん家に戻るなり、私の母に連絡するなり、それくらいは頭が回るはず。おかしいと思いました」

出張から戻って出社すると、例の同僚女性が「カズヒロさんの相手と噂されている子が、出社途中でケガをして休んでるのよ」とまたも情報をくれた。探ってみると、ヒデミさんが出張に行ったその日に、彼女は貧血を起こして駅の階段を転げ落ちてしまったという。

「問い詰めるしかない。帰宅してみると、夫はどこか不安げというか、私の目を見ようとしない。どういうことなのか、何があったのかと聞くと、日頃から親しくしている社内の後輩がケガをして、と言い訳する。『ナナコさんね』と言ったら、夫の目がキョロキョロして。しれっと嘘をつけるタイプじゃないんですよね、悲しいことに」

◆「離婚しますが、会社は夫をとりますか、私をとりますか」

男女の関係があるのねと問いただすと、夫はワッと泣き出した。こんなときに泣くなよと、ヒデミさんは怒鳴りつけてしまったという。頭を打ったから心配でたまらないんだと泣きながらつぶやく夫に、ヒデミさんはそれまで築いてきた信頼感が崩れていく音を、自分の脳内で聞いていた。

「病院に行きなさいよ今すぐ、と夫を放り出しました。それから母に連絡して、翌日からしばらく来てもらえないかと相談。次の日、会社に行って上司に洗いざらいぶちまけたんです。そして『3人とも同じ会社でこんなことがあったら、私は仕事をしていけない。私は離婚するけれど、会社は夫をとりますか、私をとりますか』と迫ったんです。私をとるなら、夫には会社を辞めさせてほしい、と。もちろん、冷静に言いましたよ」

それまでの実績があるから、会社はもちろんヒデミさんをとった。夫とナナコさんは辞表を提出するようやんわりと求められた。ふたりは応じたという。ヒデミさんはもちろん、離婚。共同名義で買ったマンションはヒデミさんのものとなり、結婚後の預金もヒデミさんが子どものためにともらうことになった。

◆夫が今どうしているかはわからない

「養育費も慰謝料もいらないから、私の目の届かないところへ行ってちょうだい。夫に告げたのはそれだけです。のちに弁護士を入れて、きちんと書類も作りました。会いたいなら娘には会わせることにした。それ以上は何も望むな、と」

会社が自分を取るとわかっていたから、彼女は夫に復讐を遂げることができたのだ。その後、ナナコさんは回復。夫と、一回り以上年下のナナコさんは、地方にある彼女の実家へ「落ちのびて」いったが、今はどうしているかわからない。

「夫と親しかった同期によれば、ふたりは別れたようです。夫が東京に戻ってきているという話もありますが、私には連絡がありません」

◆浮気以上に、どうしても許せなかったこと

社会的に夫を抹殺したヒデミさんだが、あのときの自分の迅速な行動を後悔してはいないといった。

「浮気じたいは許せたかもしれないけど、不倫相手のために自分の娘を疎かにしたことが、どうしても許せなかった。連絡さえくれれば対処できたのに……。それさえできないくらい、夫は彼女に入れあげていたということでしょ。抹殺されて当然だと思います」

最後の強烈な一言が印象的だった。そして彼女は、順調に出世の階段を上っている。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio

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