幼稚園でお友達のお尻に石を…「性加害者」になる子どもたち。何が起こっているのか

幼稚園でお友達のお尻に石を…「性加害者」になる子どもたち。何が起こっているのか

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作者のゆっぺさんが、5歳の頃に同級生から受けた性被害の実体験を元に描いた漫画『5歳の私は、クラスの男子から性被害を受けました。~なんで言わないの?~』が書籍化され、1月27日に発売されました。

性暴力、いじめ、伝わらない性教育など、子どもを取り巻く問題に斬り込む漫画を多数収録した本書の書籍化にあたり、女子SPA!では公認心理師・臨床心理士で子どもの性被害の被害者支援をおこなっている鶴田信子さんに取材しました。

「小さな子どもたちの深刻な性被害がたくさん起こっているという現実を、大人の皆さんにも知ってほしい」と鶴田さんは語ります。私たちが知るべき、その実態とは?

◆知らなかったではすまされない、「子ども同士の性被害」の実態

――子ども同士の性被害が起こりうるということを、実はゆっぺさんの漫画で初めて知りました。そんなに起きているものなのでしょうか?

鶴田信子さん(以下、鶴田)「子ども同士の性被害の実態について、データや調査で明らかにされていることは少ないです。でも、被害者支援の現場に寄せられる声としてはとても多いんです。

幼稚園・保育園に通う子どもがレイプ被害を受けることもあります。膣内性交に加え、男女を問わず、肛門性交や口腔性交(こうくうせいこう:口を使って行う性行為)といった被害も存在します。そして小学生以降になると、被害件数はさらに増えます」

――マンガでは、ゆっぺさん自身が被害にあった他、クラスにはお尻に石や粘土を入れられた子もいました。同じ教室にいる同級生同士の被害が多いのでしょうか?

鶴田「加害者はじつに様々です。同級生だけでなく、上級生や近所のお兄ちゃん、お姉ちゃん、それにきょうだいであることも少なくありません。小学生から未就学児に対して行われたケースもあります」

◆子どもを被害者にも加害者にもしないために

――子どもが性加害者になる、という状況が想像できません。一体どうしてそのようなことが起こるのでしょうか?

鶴田「加害者である子どもが、何かしらの性暴力にさらされている可能性はあります。直接的な性被害に加え、親同士の性行為を故意にまたは偶然に見させられる、アダルトコンテンツを目にしてしまう、なども考えられます。子どもを過度な性的刺激にさらすことは子どもへの虐待にもなりえますので、大人は十分に注意する必要があります」

――子どもを“被害者”にも“加害者”にもしないために、家庭ではどのようなことに気をつければよいでしょうか。

鶴田さん「小さな頃から、家庭内で性について話せる土台を作っておくことが大事です。性の話・性教育というとおおげさに感じますが、社会のルールを子どもに教える延長線上に、性教育もあると考えて、『自分の心と体はとても大切なものだよ』とまず話すことからおすすめします」

◆大切な子どもへの性教育、どんな順番で話せばいい?

――子どもに性の話をするのは、なかなかハードルが高いです。

鶴田さん「一度にすべてを教える必要はなく、年齢にあわせて、段階を踏んで話をしていくことが大切です。

未就学児から小学校低学年の子どもには、まずは『プライベートパーツ』の話をしましょう。プライベートパーツは口・胸・性器・おしりを指します。『プライベートパーツは自分の命を守る大切な場所だから、人に見せたり触らせたりしてはいけないよ』と、大切さや扱い方を教えてあげてください。そのうえで、もしも誰かに『悪いタッチ』をされたら大人に言ってほしい、と伝えておくことは、子どもが自分の身を守ることにもつながります」

――小学校中学年になったら、どのようにすればよいでしょうか。

鶴田「女の子に生理がきて妊娠が可能な年齢になる前には、妊娠に関する知識を正しく知っている必要があります。男の子も同様です。妊娠の知識がないと、子ども自身が万一妊娠した時にその事実に気づくことができず、中絶ができない期間になってしまう……という事態も起こりえます。

ただし、中絶や病気などのリスクばかりを強調してしまうと子どもが不安を感じてしまいます。性行為そのものを『悪いこと』だと認識しないように、性行為は本来、生命や愛情を育むとてもすばらしい行為だということも同時に伝えてあげてください」

◆もしも自分の子どもが性被害にあってしまったら

――万一、子どもが性被害にあった場合、親としてどのように対応すればよいでしょうか。

鶴田「被害にあってしまったお子さんへの接し方で大事なのは『探ること』ではなく『受け止めること』です。もしも子どもが少しでも被害について口にしてくれたら、『話してくれてありがとう』と伝えてあげてください。どれほど動揺したとしても『あなたは悪くないよ、悪いのは相手だよ』ということをまずは伝えます。そのうえで子どもが安心して過ごせる環境を作ってあげてください。

性被害は、暴力です。性的な被害があったとわかった時点で園や学校の前に、まずは警察や児童相談所へ相談をしてください。このような機関には、子どもの性的被害を聴取できる専門家がいます。専門家がいつ・どこで・なにをされたのか正しく聞いてくれます。

何があったのかわかることは、その後の子どもをどうケアしていくかを考える手立てになりますし、加害者の保護者となんらかの話し合いをする時にも重要になります」

小さな子どもである被害者が声をあげにくいからこそ、見過ごされがちな子ども同士の性被害の実態。子どもを被害者にも加害者にもしないため、“今できること”を考えてみてはいかがでしょうか。

【鶴田信子】

公認心理師・臨床心理士。スクールカウンセラーやメンタルクリニック、企業、弁護士のメンタルヘルス支援など幅広く臨床に携わってきた一方、犯罪被害者を支援する民間団体で被害者支援、トラウマや死別のケア、PTSDのトラウマ焦点化認知行動療法を専門としている。

<取材・文/楠悠里、女子SPA!編集部 協力/鶴田信子>

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