衝撃!2億円のポケモンカードが発売、店長は「とうとう来たかと震えた」

衝撃!2億円のポケモンカードが発売、店長は「とうとう来たかと震えた」

正面からの写真

2023年1月下旬。秋葉原にあるポケモンカードゲーム専門店「晴れる屋2」が2億円のポケモンカードを発売して話題となりました。

 ポケモンカードの人気を耳にすることはあるものの「カードに2億円!!??」という驚きは隠せず、「カードに!?」「なぜ!?」「2億円払う人がいるの!?」と謎がとまりません。

 そこで今回、「晴れる屋2」の店長・渡辺翔さんに取材。2億円という価格がついたポケモンカードや、価格の高騰が続くポケモンカード市場についてお話を聞いてみました。

◆世界に39枚しかない超レアなポケモンカード

――2億円という価格がついたポケモンカードは、どのようなカードなのでしょうか?

渡辺翔さん(以下、渡辺)「今回高額がついたのは、ポケモンカードの『ポケモンイラストレーター』という種類のカードです。このカードは世界に39枚しかない中の1枚で、ポケカ※コレクターの中でもトップクラスに有名なカードです」

※ポケカ:ポケモンカードの略

――世界に39枚しかないんですか!?

渡辺「はい。『ポケモンイラストレーター』は、1997年から1998年に『月刊コロコロコミック』誌上にて開催された、イラストコンテストの最優秀賞・優秀賞受賞者にのみ配布されたカードです。ポケカで高額になるものは、コンテストや大会で優勝した人に配られたものなど、一般に出回っていないカードなんです」

――限られた人のみ持っているカードだったんですね。

渡辺「このカードにはピカチュウが描かれているのですが、ピカチュウのデザインを考案したイラストレーター、にしだあつこさんが描いたピカチュウということもあり、カードそのものの価値も高くレアな存在になっています」

◆カードは保存状態も大事、最高額は7億円

――レアということで、2億円という価格になったのでしょうか?

渡辺「ポケカはカードの保存状態によっても価格が大きく変動します。当然きれいに保存されたカードのほうがボロボロのカードよりも価格が高くなります。とはいえ保存状態のきれいさは個人の主観なので、アメリカに本社がある『PSA』という第三者の鑑定会社に送って評価をしてもらうんです。PSAは10段階で評価をしてくれるのですが、今回の『ポケモンイラストレータ』は10点満点中8.5という高評価がついたことも、2億円という価格につながっています」

――そのような鑑定会社があることを初めて知りました。

渡辺「ちなみにアメリカのローガン・ポールさんという方は、ピカチュウの『ポケモンイラストレーター』を約7億円で購入して、最も高価なポケモンカードとしてギネス世界記録にのっています。カードはPSA鑑定で最高グレードの10と評価されています」

――7億円!!?? すごい世界ですね。

渡辺「ローガン・ポールさんの7億円も今回の2億円も、実際に取引される価格だからこそ、この金額がついています。カードの価値はカード単品としての価値というより、『このカードがとても貴重で、高値で取引されるということを世界中の人が知っている』というところにあります。そういう意味では宝石やブランド品と似ているのかもしれません」

――たしかに、宝石やブランド品に例えるとわかりやすいですね。

渡辺「ブランド品の服も『ただの布じゃん?』というわけではなくて、そこに価値があると多くの人が認めて尊敬しているからこその金額ですよね。そのブランドの価値を知っている人が世界中にいて、貨幣に変換できることが大事なんです」

◆カードが持ち込まれた時は震えた

――『ポケモンイラストレーター』が、晴れる屋2さんにもちこまれたときはどんな気持ちでしたか?

渡辺「とうとうきたかと震えました。有名な絵画がうちの美術館にきたぞ!というのと同じですね。以前HIKAKINさんが、弊社で5,000万円の『かいりきリザードン』を購入してくださったのですが、その価格をうわまるカードが来たので驚きました。同時に弊社を信用してくださらないと、このような貴重なカードを売りにはきてくださらないので、ポケカ専門店として純粋にうれしかったです」

◆店長もカードの保管場所は知らない

――カードを持つ手が震えそうです…。防犯対策はどうされているのでしょうか。

渡辺「弊社でこのカードを取り扱うことになったと発表するまで、社内でもかんこう令がしかれました。社員の誰かがこのカードをもったまま、高飛びする可能性も否定できないからです。店頭にはもちろん置いておらず、別の場所に保管してありますが、私もどこに保管してあるかは知りません」

――高飛び!

渡辺「お札の場合ですと、シリアルナンバーがついているので盗んでもあしがつきます。ポケカも商品としてのシリアルナンバーはついていますが、1枚1枚のカードを識別するためのシリアルナンバーはついていません。PSA鑑定したものはケースにシリアルナンバーが入れられますが、ケースから出してしまえばカードを特定することができなくなるんです」

――実際にポケカを狙った空き巣が、昨年相次ぎましたね。

渡辺「はい。うちでも被害を防ぐため数十万以上の高額なカードは店頭に置かないようにしています。お客様が購入するときのみ、別の保管場所から持ってきています。お店を壊して入ってくる事件もあったので、現物を置かないことで万が一襲撃されても盗まれないようにしています」

◆ポケモンカードはほぼ紙幣と同じ

――空き巣以外にも転売など、ポケモンをめぐる困った動きはありますか?

渡辺「ポケカに関しては、一言で転売というのが難しいです。というのものいろんな目的でポケカを購入している人が世界中にいるからです。資産の一つとして購入される方もいますし、コレクションついでに投資するという方もいます」

――たしかにここまで高額だと、資産ですよね。

渡辺「お気に入りのキャラクターを全種類集めたいから買う人もいらっしゃいますし、今買わないと今後価格が高くなるから買うという人もいます。ほぼ紙幣と同じですよね。困るのは『コンビニに売っているポケカでも、今買えば儲かる』と間違った噂が一人歩きしてしまい、コンビニなどで大量に買い占められ、本当に欲しい人が買えない状況になることです。さらにはそれを高額で売るというのは困ったことだと思います」

――晴れる屋2では、買い占めに対して対策をされていますか?

渡辺「一人○個までと、購入制限を作っています。何回もレジに並んで購入する方にはこちらからお声がけしています」

◆高いカードを集めなくても充分楽しめる

――ポケカがここまで盛り上がっているとは知りませんでした。

渡辺「カードの値段が取り上げられることが多いですが、ポケモンカードゲームは27年間続いている、とても素晴らしいカードゲームです。このゲームの楽しさは改めてお伝えしたいです。家族や友達と自分の好きなポケモンで戦えますし、カードゲームでアニメの世界を体現することもできます。世代・性別関係なくみんなで楽しめるのも、ポケモンカードゲームの魅力です」

――とはいえ高額なカードを見ていると、お金がかかりそうと思ってしまいます。

渡辺「ポケモンカードゲームそのものは5,000円から8,000円くらいかければ、遊ぶのに必要なカードが揃います。誤解されている方もいらっしゃるかもしれませんが、高いカードを集めないと勝てないわけではありません。そして、高いカードが強いわけでもありません。500円など、少しずつお金を出して手持ちのカードを強くしつつ、勝つための戦略を身につけていくんです」

◆今年は日本で世界大会も開催

――少しずつカードを揃えて強くしていくのも楽しそうですね。

渡辺「ポケモンカードゲームには世界大会もあります。今年は日本で世界大会が開催されるので、ポケモンカードゲームそのものも楽しんでもらえたらなと思います!」

 2億円のカードと聞いて驚きましたが、渡辺さんによれば晴れる屋2にはこの『ポケモンイラストレーター』に関する問い合わせが既にきているとのことです。

一方で、ゲームを楽しんでこそのポケモンカードゲームです。日本で開催される世界大会をきっかけに、カードゲームを楽しんでみるものいいかもしれません。

【晴れる屋2】

国内最大級のポケモンカードゲーム専門店。YouTube:ハレツーチャンネル/Twitter:@hareruya2pokeca

<取材・文/瀧戸詠未>

【瀧戸詠未】

大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。Twitter:@YlujuzJvzsLUwkB

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