星野源が明かした“裏側”にゾクゾク。人気番組で自分の悩みを抑えて相手に寄り添い、なぜ6曲もエンディングを作ったのか
2023年09月09日 08時45分女子SPA!

星野源が明かした“裏側”にゾクゾク。人気番組で自分の悩みを抑えて相手に寄り添い、なぜ6曲もエンディングを作ったのかの画像
佐久間宣行が企画演出・プロデュースを手がけた、星野源とオードリー若林正恭のトーク番組、Netflix『LIGHTHOUSE』を、単純にトーク番組と思って見始めたら、星野源が心理カウンセラーのようだった。
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LIGHTHOUSEとは星野と若林のユニット名である。佐久間Pが「悩める人々の明かりを照らす灯台でありながら、自分たちの足元は暗そう」という意味を込めてつけたそうだ。
“LIGHTHOUSE”としての星野と若林は、2022年10月から23年5月までの半年強、全6回にわたって、1カ月に1回、“悩み”をテーマに語り合った。
出だしはざっくばらんに話し始め、その流れで、メイン企画である「1行日記」のコーナーに入る。現在の悩みや、日常の出来事を短く記したものをもとにトークを展開、そのほか、若者が語る悩みを、番組スタッフが撮った動画を見て、他者の悩みにも思いを致す。とりわけ「1行日記」が、鋭く時代を照射し、世間の欺瞞(ぎまん)への解像度高く、共感を呼ぶ。
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全6回は、それぞれ「暗黒時代」「東京~光と闇~」「Christmasプレゼント」「サプライズライブ」「ドライブと決意」「LIGHTHOUSE」というタイトルがつき、ブレイク前のふたりに縁の深い阿佐ヶ谷、セレブ感満載の港区のホテル、昭和の一軒家、ライブハウス、海に向かう車のなか、三浦海岸……と回ごとに場所を移動し、感情や関係性が刻々と変化していくようなロードムービーのようであり、ドキュメンタリーのようでもある。
各回の締めに流れるのは、星野が作詞、作曲したその回のトークに合ったエンディング・テーマ。なんて贅沢な企画であろうか。
星野と若林という、トークのうまさに定評のある人気者がトークするというお手軽な企画ではなく、ありきたりな番組とは違うことをやろうという気概。そこが、星野、若林、佐久間がクリエーターとして信頼できるところだろう。
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それにしても、メインテーマ曲「Mad Hope」も星野作であるにもかかわらず、さらに毎回、エンディング・テーマを作るとは、いくら天才でも大変だろうし、クリエイターの矜持だとしでも、サービスのしすぎではないか? と思ったのだが、毎回曲をつくる理由を、星野が明かした。
9月2日(金)、X(旧Twitter)のスペース&インスタライブで配信された『星野源 オールナイトLIGHTHOUSE』のなかで星野は、『LIGHTHOUSE』は悩みを解決する番組ではないと語った。
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最初に番組の企画を聞いたとき、「悩みをただ話して、それについて深めたり、ただ語り合ったり、自分はこう思うみたいな。それってこう解決したらいいんじゃないですかということを追求するよりかは、その状態をただ提示し合う」、そういう番組だと解釈して、だったら、最後にオリジナルの歌を作ることで、トークバラエティやドキュメンタリーではない、解決しないものが何かひとつの“作品”になると思ったと。
悩みはすっきり解決しない番組ながら、その番組の趣旨と、歌というものの意味を、星野源がこれ以上ないほど端的に言語化した『星野源 オールナイトLIGHTHOUSE』は、アルバムに封入されたアーティスト本人によるライナーノートを読むような信頼性があった。
さらに星野は番組の裏側を明かす。
#3で、若林のいまの状態を聞いていた星野が「飽きちゃったんじゃないか」と推察したところ、若林に刺さって、以降、飽きちゃったときどうしたらいいかという流れになっていく。
#1、#2ではお互いが聞き手になり語り手になり、うまくバランスをとりながらスイッチしていくなかで、各々の闇深さをちょいちょい出していたが、#3になると、星野がカウンセラーのようになって、若林の話を、うんうんと聞ききながら、こうしたら?ではなく、若林自身がどうすべきか考えるようにただただ寄り添う。それはまるで灯台のようである。
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『LIGHTHOUSE』がその明かりを若林が頼りにして歩き出すみたいなストーリー仕立てに見えた。星野はその流れを、#3で、佐久間Pが番組の方向性を、若林の悩みにフォーカスしたと感じたと分析する。そして、自分の悩みは抑えたと。
この話を聞いたとき、正直、『LIGHTHOUSE』そのものよりも、こっちのほうがスリリングでドラマのようで筆者はゾクゾクした。
『星野源 オールナイトLIGHTHOUSE』に寄せられた、星野さんの悩みは解決したのか?という質問に、自分の悩みは一個も解決していないと答える星野。ほんとは解決しない番組ではなく、解決しなかった番組ってことなのではないか。
なんだか、星野の歌ではないが、“ただ光って”る灯台(星野)が切なくなる。どれほど言葉を尽くしても伝えきれない、その孤独を、灯台の霧笛のように歌う星野源と、ブラッドベリの短編小説『霧笛』が重なって、勝手に妄想が膨れ上がるばかり(誰か止めて)。
#5のドライブは、若林が車の運転をして延々自分語りをし、星野は助手席に座って、ますますうんうん聞いている。それもまた、星野のナビで若林が運転するような隠喩的な気がしてくる。
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ただ、若林だって一流のクリエーターである。星野のカウンセラー的なところに依存して自分の悩みをいたずらに開示し、自分だけすっきりしたわけではないだろう。
エンディングを毎回、作る星野に対して、若林も何かしたいと考えて、ラップを作ったりもしている(このラップが秀逸)。星野の発した「飽きた」というワードに魅力を感じて、クリエイターの勘どころで膨らませていったのではないか。
笑福亭鶴瓶の即興番組『スジナシ』のように、共演者がお互いがお互いを感じながら、探り合いながら、予想し得ない、おもしろいところに向かうということを目指した結果が『LIGHTHOUSE』なのかなと。それこそが、深めるっていうことなのかなと思った。
『星野源 オールナイトLIGHTHOUSE』のあと星野は続けて『オードリーのオールナイトニッポン』にも出演した。そこでさらに裏話が。
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佐久間Pはエンディング・テーマを星野に作ってほしいと思いながらも自分からは頼めないと思っていて、そんなとき星野が自ら作りたいと申し出たのだそうだ。佐久間ほどのプロデューサーでも星野に新曲を頼むことには躊躇(ちゅうちょ)がある。
にもかかわらず、春日は、オードリーの東京ドームライブの曲を作ってほしいとわりとカジュアルに頼む。さすがの星野も、雑なオファーはきっぱり断る。
やっぱりなんでもかんでも引き受けるわけではないのだなと思って聞いていると、春日がピアノの弾き語りする曲を作ると条件を出して、結局は引き受けるのだ。星野源、偉人! と思ったら、実は事前に曲を作ることは決まっていて、春日を驚かせる趣向だった。即興と作り込みの絶妙な混ざり。
こんな感じで、毒も笑いも悩みも答えも、すべてがどストレ―トではなく、考え抜かれ作り込まれたものなのだろう。だからこそ、手渡されたら、大事に、あらゆる角度から鑑賞し、深めたい。
<文/木俣冬>
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星野源・若林の「1行日記」が鋭く時代を照射し共感を呼ぶ
LIGHTHOUSEとは星野と若林のユニット名である。佐久間Pが「悩める人々の明かりを照らす灯台でありながら、自分たちの足元は暗そう」という意味を込めてつけたそうだ。
“LIGHTHOUSE”としての星野と若林は、2022年10月から23年5月までの半年強、全6回にわたって、1カ月に1回、“悩み”をテーマに語り合った。
出だしはざっくばらんに話し始め、その流れで、メイン企画である「1行日記」のコーナーに入る。現在の悩みや、日常の出来事を短く記したものをもとにトークを展開、そのほか、若者が語る悩みを、番組スタッフが撮った動画を見て、他者の悩みにも思いを致す。とりわけ「1行日記」が、鋭く時代を照射し、世間の欺瞞(ぎまん)への解像度高く、共感を呼ぶ。
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全6回は、それぞれ「暗黒時代」「東京~光と闇~」「Christmasプレゼント」「サプライズライブ」「ドライブと決意」「LIGHTHOUSE」というタイトルがつき、ブレイク前のふたりに縁の深い阿佐ヶ谷、セレブ感満載の港区のホテル、昭和の一軒家、ライブハウス、海に向かう車のなか、三浦海岸……と回ごとに場所を移動し、感情や関係性が刻々と変化していくようなロードムービーのようであり、ドキュメンタリーのようでもある。
星野源はなぜエンディングテーマを毎回作ったのか
各回の締めに流れるのは、星野が作詞、作曲したその回のトークに合ったエンディング・テーマ。なんて贅沢な企画であろうか。
星野と若林という、トークのうまさに定評のある人気者がトークするというお手軽な企画ではなく、ありきたりな番組とは違うことをやろうという気概。そこが、星野、若林、佐久間がクリエーターとして信頼できるところだろう。
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それにしても、メインテーマ曲「Mad Hope」も星野作であるにもかかわらず、さらに毎回、エンディング・テーマを作るとは、いくら天才でも大変だろうし、クリエイターの矜持だとしでも、サービスのしすぎではないか? と思ったのだが、毎回曲をつくる理由を、星野が明かした。
星野源が端的に言語化。趣旨と、歌というものの意味とは
9月2日(金)、X(旧Twitter)のスペース&インスタライブで配信された『星野源 オールナイトLIGHTHOUSE』のなかで星野は、『LIGHTHOUSE』は悩みを解決する番組ではないと語った。
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最初に番組の企画を聞いたとき、「悩みをただ話して、それについて深めたり、ただ語り合ったり、自分はこう思うみたいな。それってこう解決したらいいんじゃないですかということを追求するよりかは、その状態をただ提示し合う」、そういう番組だと解釈して、だったら、最後にオリジナルの歌を作ることで、トークバラエティやドキュメンタリーではない、解決しないものが何かひとつの“作品”になると思ったと。
悩みはすっきり解決しない番組ながら、その番組の趣旨と、歌というものの意味を、星野源がこれ以上ないほど端的に言語化した『星野源 オールナイトLIGHTHOUSE』は、アルバムに封入されたアーティスト本人によるライナーノートを読むような信頼性があった。
ただただ寄り添う。それはまるで灯台のよう
さらに星野は番組の裏側を明かす。
#3で、若林のいまの状態を聞いていた星野が「飽きちゃったんじゃないか」と推察したところ、若林に刺さって、以降、飽きちゃったときどうしたらいいかという流れになっていく。
#1、#2ではお互いが聞き手になり語り手になり、うまくバランスをとりながらスイッチしていくなかで、各々の闇深さをちょいちょい出していたが、#3になると、星野がカウンセラーのようになって、若林の話を、うんうんと聞ききながら、こうしたら?ではなく、若林自身がどうすべきか考えるようにただただ寄り添う。それはまるで灯台のようである。
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『LIGHTHOUSE』がその明かりを若林が頼りにして歩き出すみたいなストーリー仕立てに見えた。星野はその流れを、#3で、佐久間Pが番組の方向性を、若林の悩みにフォーカスしたと感じたと分析する。そして、自分の悩みは抑えたと。
この話を聞いたとき、正直、『LIGHTHOUSE』そのものよりも、こっちのほうがスリリングでドラマのようで筆者はゾクゾクした。
“ただ光って”る灯台(星野)が切なくなる
『星野源 オールナイトLIGHTHOUSE』に寄せられた、星野さんの悩みは解決したのか?という質問に、自分の悩みは一個も解決していないと答える星野。ほんとは解決しない番組ではなく、解決しなかった番組ってことなのではないか。
なんだか、星野の歌ではないが、“ただ光って”る灯台(星野)が切なくなる。どれほど言葉を尽くしても伝えきれない、その孤独を、灯台の霧笛のように歌う星野源と、ブラッドベリの短編小説『霧笛』が重なって、勝手に妄想が膨れ上がるばかり(誰か止めて)。
お互いを感じながら、予想し得ないおもしろいところに向かった結果…
#5のドライブは、若林が車の運転をして延々自分語りをし、星野は助手席に座って、ますますうんうん聞いている。それもまた、星野のナビで若林が運転するような隠喩的な気がしてくる。
この投稿をInstagramで見る Netflix Japan | ネットフリックス(@netflixjp)がシェアした投稿
ただ、若林だって一流のクリエーターである。星野のカウンセラー的なところに依存して自分の悩みをいたずらに開示し、自分だけすっきりしたわけではないだろう。
エンディングを毎回、作る星野に対して、若林も何かしたいと考えて、ラップを作ったりもしている(このラップが秀逸)。星野の発した「飽きた」というワードに魅力を感じて、クリエイターの勘どころで膨らませていったのではないか。
笑福亭鶴瓶の即興番組『スジナシ』のように、共演者がお互いがお互いを感じながら、探り合いながら、予想し得ない、おもしろいところに向かうということを目指した結果が『LIGHTHOUSE』なのかなと。それこそが、深めるっていうことなのかなと思った。
毒も笑いも悩みも答えも、考え抜かれ作り込まれたもの
『星野源 オールナイトLIGHTHOUSE』のあと星野は続けて『オードリーのオールナイトニッポン』にも出演した。そこでさらに裏話が。
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佐久間Pはエンディング・テーマを星野に作ってほしいと思いながらも自分からは頼めないと思っていて、そんなとき星野が自ら作りたいと申し出たのだそうだ。佐久間ほどのプロデューサーでも星野に新曲を頼むことには躊躇(ちゅうちょ)がある。
にもかかわらず、春日は、オードリーの東京ドームライブの曲を作ってほしいとわりとカジュアルに頼む。さすがの星野も、雑なオファーはきっぱり断る。
やっぱりなんでもかんでも引き受けるわけではないのだなと思って聞いていると、春日がピアノの弾き語りする曲を作ると条件を出して、結局は引き受けるのだ。星野源、偉人! と思ったら、実は事前に曲を作ることは決まっていて、春日を驚かせる趣向だった。即興と作り込みの絶妙な混ざり。
こんな感じで、毒も笑いも悩みも答えも、すべてがどストレ―トではなく、考え抜かれ作り込まれたものなのだろう。だからこそ、手渡されたら、大事に、あらゆる角度から鑑賞し、深めたい。
<文/木俣冬>
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