この夏、大人こそ見るべき教科書ドラマが爆誕してた件!恋愛迷子にグサグサ刺さる正論に耳が痛い……

この夏、大人こそ見るべき教科書ドラマが爆誕してた件!恋愛迷子にグサグサ刺さる正論に耳が痛い……

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正論は痛い。正しければ正しいほど、心臓の中心を遠慮なくブチ刺しにくる。日テレ系列の水10ドラマ『こっち向いてよ向井くん』でも、主にアラサー男女に狙いを定めた正論(名言?)がたっぷり。

とくに、主人公・向井くん(赤楚衛二)とたまたま知り合うバリキャリ女性・坂井戸洸稀(波瑠)が繰り出す言葉の切れ味は、効果バツグンだ。いくつかを抜粋して紹介したい。

みんな欲しいものはちゃんと、欲しいって願ってると思う



『こっち向いてよ向井くん』は、10年前に彼女と別れてから恋愛経験ゼロのアラサー・向井悟が主人公。1話の時点で、義理の弟・武田元気(岡山天音)が経営するカレー店で出会う女性・洸稀からのド正論攻撃を食らっている。男性視点と女性視点で、こうも現実の捉え方が違うのか……と勉強になるドラマだ。

向井くんの会社に入ってきた派遣社員・中谷真由(田辺桃子)。彼女と良い感じに距離を縮めている……と思っていた向井くんだが、それがすべて勘違いだったことが判明。元気のカレー店「パイレオ」で洸稀に相談する流れになるのだが、この一連のシーンがなんとも爽快で痛快なのである。

「向井くんってさ、あんまり相手の気持ち考えてないんじゃない?」から始まり、「彼女が何を求めてるのか、ちゃんと彼女の立場で考えた? イメージとか、一般論で決めてない? そもそも自分がどうしたいか、ちゃんと考えてないんじゃない? 本当に付き合いたかったの? その子のこと好きだった?」と怒涛の連続パンチ。向井くんはもはや息絶え絶え。

そして「みんな欲しいものはちゃんと、欲しいって願ってると思う」でフィニッシュを決める洸稀。

みんなが恋愛してるからなんとなく相手が欲しい、ドキドキしたい、このままずっと一人は寂しい……そんな漠然とした欲望を言い当てられたようで、向井くんとともにいたたまれなくなった視聴者も多いのでは。

あのね、女の子なんて人格は、ないの





向井くんが10年前に元カノに振られたのは、相手から「守るって、何から?」と訊かれ、上手く答えられなかったからだった(少なくとも向井くんは長らくそう信じ込んでいた)。大好きな恋人をずっと守ってあげたい……。そう考えるのは“男として”当然だ。そんな価値観で生きてきた向井くんにとって、「守ってあげたい」は最大の愛情表現であり、心から相手を思いやっている証でもあった。

まだ若く、経済力も十分じゃない自分が「守る」だなんておこがましい。向井くんはそんな反省をしていたけれど、アラサーになって知り合った洸稀に「私だったら、守るなんて言われたら、見下されてるな~って思っちゃいます」と言われ、仰天してしまう。

それって、女の子ならみんなそう思うのか? 向井くんが率直に尋ねると、洸稀はこう返す。「あのね、女の子なんて人格は、ないの。人それぞれ、相手に合わせて考えて」。

女だからこう、男だからこう、子どもだからこう、妻だから、夫だから……。人は、自分を“大きな主語”に括られると、とたんに抵抗したくなる生き物だ。それなのに、自分が相手をわかりやすい箱に区分けすることには、なんの疑問ももたない。

女の子なんて人格も、男の子なんて人格も、ない。一般論や世間のものさしに頼らず、自分と相手、それぞれを個の存在として認め、心を想像すること。恋愛というより、人間関係の基礎に立ち返らせてくれる名言だ。



自分とは違う価値観を悪だと決めつけることこそ、不毛だよ



バツイチで再婚する気はゼロの同僚・環田和哉(市原隼人)と関係を持っている洸稀。本人いわく、結婚するつもりはないし、ましてや付き合っているわけでもない。まさに、恋愛の“美味しいとこ取り”をしている状態だ。

4話では、そんな洸稀と向井くんが、ランチをしながら洸稀の恋愛事情に触れるシーンがある。向井くんとしては、、洸稀と環田のような“名前のない関係性”は、納得できない。「どこにも着地しない恋愛をする男は不誠実」と、めずらしく物申す(※この時点では、洸稀の相手が環田であることは、向井くんは知らない)。

そんな物申しモードの向井くんに、洸稀はいつものように淡々と返すのだ。「自分とは違う価値観を悪だと決めつけることこそ、不毛だよ」と。その通りである。恋愛事情に限らず、人には人の価値観がある。それはすなわち、生まれ育った家庭や教育など、さまざまなものに裏打ちされた哲学に似ている。

自分とは違う価値観は、悪ではない。そしてそれを、無理やり善だと受け入れる必要もない。違いはただ、違いとしてそこに置いておくだけでいい。わざわざ対立を生もうとすること自体が「不毛だ」と、シンプルで的確な言葉で示してくれる洸稀は、どこまでも清々しい。

名言が炸裂した夏ドラマ『向井くん』



そんな名言が炸裂した『こっち向いてよ向井くん』もいよいよ今夜最終回。

最後の最後まで、どんな名言が炸裂するのか。注目だ。

<文/北村有>

【北村有】
葬儀業界を経て2018年からフリーランス。映画やドラマなどエンタメジャンルを中心に、コラムや取材記事を執筆。菅田将暉が好き。

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