エルトン・ジョンも認めた33歳の日本人女性アーティスト。アジア人差別、女性差別へのメッセージも
2023年09月20日 08時46分女子SPA!

エルトン・ジョンも認めた33歳の日本人女性アーティスト。アジア人差別、女性差別へのメッセージもの画像
今、世界の音楽シーンを賑わせ、席巻しようとしているアーティストがいる。リナ・サワヤマである。
なんと言ってもパワフルでエッジーなサウンド。そして社会的なメッセージ性。2023年1月に東京で開催された初の日本単独公演は圧巻だった。9月22日(金)からは映画初出演作『ジョン・ウィック コンセクエンス』が全国で公開される。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、ユニークな経歴を持ち、差別や偏見と戦うリナ・サワヤマを紹介する。
宇多田ヒカルがノンバイナリーだと公表したのは、2021年6月26日、Instagramライブでのことだった。ノンバイナリーとは、男性か女性か、どちらでもない性自認(表現)の人々のこと。そのためにノンバイナリーの人は「彼」、「彼女」という性差区分を使わない。
その代わり使われるのが、They、Them。つまり「彼ら」だ。ということで宇多田のことを指して「彼女」と呼ぶことは正しくない。
宇多田は、日本人の著名人として初めてノンバイナリーであることをカミングアウトしたアーティストだが、海外では当たり前のようにこの代名詞を使うことを強く呼びかけている。
あるいはパンセクシャルはどうだろう。彼らもまたジェンダーにとらわれない。ノンバイナリーと同義ではないが、日本語に訳すと「全性愛者」となる。
代表的なアーティストとしてはリナ・サワヤマがあげられる。このリナ、日本ではまだ全国区の知名度ではないが、このコラムを機会にぜひその存在を知ってほしいと思う。
まず、彼女の特異な経歴から。リナが生まれたのは新潟県。そう、正真正銘の日本人。4歳のとき、イギリス、ロンドンへ移住する。
大学は名門ケンブリッジ大学。法学部で政治学や社会学、心理学を学ぶ。法科出身ながら、幼少期から大好きだった音楽の世界へ果敢に飛び込み、卒業後に本格的に活動を始めるのだ。
優秀なコンサルタント経験もありながら今やグラミー賞歌手のジョン・レジェンドなど、ユニークな経歴のアーティストは意外にいるものだが、では、リナが表現する音楽世界とは。
経歴だけでなく音楽もユニークなリナの表現性を考えるなら、この一曲が最適だろう。リナが2020年にリリースした「Chosen Family」。「Chosen Family」とは、血縁や人種にとらわれない家族のような共同体を意味する。
LGBTQコミュニティで育まれてきた言葉だ。トラックタイトル自体に直接的な意味を持たせながら、リナの歌声がこれまで居場所がなかった相手を優しく包み込むように囁いてくる。力強く鼓舞してもくれる。人類全体がひとつの母胎の中で揺り動く様には聴こえないだろうか。
全(パン)世界を包み込み、愛の眼差しを向けるリナらしい温かみを感じる。この曲を高く評価したのが、LGBTQカルチャーの生き証人エルトン・ジョンだったことも象徴的で、2021年にエルトンとリナはこの曲を再レコーディングしている。改めてその意味を世界に問うたのだ。
「Chosen Family」でリナが問うメッセージは、あまりにも真摯で力強い。
2020年リリースの「STFU!」のミュージックビデオでは、アジア人への偏見や女性を軽んじる男性をうちのめす。女性をエンパワーするストレートな表現が刺さる。
ぼけぼけなんてしてられない。世界には理不尽な差別や偏見がまだまだたくさんある。それを他人事のように感じ、無関心でいていいはずがない。
目を覚まさなくては。リナの音楽はリスナーを覚醒させる。リナが訴えるメッセージをいかにキャッチし、自分事として捉えられるのか。それはリスナー次第ではあるが、伝えようとしていることは至極真っ当。当たり前のことなのだ。
リナは、アジア人差別をほのめかした元レーベルメイトを名指しで批判することもじさない。そうした勇気ある行動力に触発されるアーティストは多い。
例えばリナのルーツであるアジア圏はどうだろう。日本では新鋭ながらYamato Watanabeが、「NEZO」や「F.D.O.」などのリリース曲で社会への問題提起に取り組み、サウンド面、精神面の両面でリナの影響下にあることが明らかだ。
韓国でも、LE SSERAFIMやTWICEなど、K-POPグループのパワフルなコンセプトに類似性が認められる。
リナの活動拠点イギリスでもデュア・リパのようなスターが肩を並べながら、リナサワヤマ・フォロワーアーティストたちが世界規模で多発的にメッセージを発信しているのだ。リナを中心にこういう輪が広がれば、世界はもうすこしいい方向へ変わると筆者は思うのだが。
さて、そんなリナがより強烈に日本に紹介される絶好の機会がきた。
2023年9月に公開されるキアヌ・リーブス主演の人気シリーズ第4弾『ジョン・ウィック コンセクエンス』だ。本作でリナは映画初出演にしてハリウッド映画デビュー、そしてエンディングテーマ「Eye For An Eye」を提供している。
『アラビアのロレンス』(1962年)へのオマージュ場面から始まる本作は、キアヌが馬で砂漠を駆け、冒頭からアクロバティックな展開。「主席連合」なる闇の組織を敵に回してしまったジョン・ウィックは苦戦を強いられることになる。
前半の主要舞台となるのが日本。ジョンはインターコンチネンタルホテル大阪の支配人シマヅ・コウジ(真田広之)にかくまわれる。シマヅの娘アキラを演じるのがリナだ。
ホテル全館で繰り広げられる銃撃戦でリナは戦闘スーツに弓矢を持って戦う。まるで武侠映画のヒロインのように猛々しい。
正真正銘の香港映画アクションスター、ドニー・イェン扮する盲目の刺客がきれきれのアクションを披露しながらもリナの存在感を引き立てる。
ドニー、真田に次いでアジア圏のアクションスターにリナが名乗りをあげたのである。これによってリナ自身が名実ともにエンパワーすることになるのだ。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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なんと言ってもパワフルでエッジーなサウンド。そして社会的なメッセージ性。2023年1月に東京で開催された初の日本単独公演は圧巻だった。9月22日(金)からは映画初出演作『ジョン・ウィック コンセクエンス』が全国で公開される。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、ユニークな経歴を持ち、差別や偏見と戦うリナ・サワヤマを紹介する。
性差にとらわれないアーティスト
宇多田ヒカルがノンバイナリーだと公表したのは、2021年6月26日、Instagramライブでのことだった。ノンバイナリーとは、男性か女性か、どちらでもない性自認(表現)の人々のこと。そのためにノンバイナリーの人は「彼」、「彼女」という性差区分を使わない。
その代わり使われるのが、They、Them。つまり「彼ら」だ。ということで宇多田のことを指して「彼女」と呼ぶことは正しくない。
宇多田は、日本人の著名人として初めてノンバイナリーであることをカミングアウトしたアーティストだが、海外では当たり前のようにこの代名詞を使うことを強く呼びかけている。
あるいはパンセクシャルはどうだろう。彼らもまたジェンダーにとらわれない。ノンバイナリーと同義ではないが、日本語に訳すと「全性愛者」となる。
代表的なアーティストとしてはリナ・サワヤマがあげられる。このリナ、日本ではまだ全国区の知名度ではないが、このコラムを機会にぜひその存在を知ってほしいと思う。
リナ・サワヤマのユニークな経歴
まず、彼女の特異な経歴から。リナが生まれたのは新潟県。そう、正真正銘の日本人。4歳のとき、イギリス、ロンドンへ移住する。
大学は名門ケンブリッジ大学。法学部で政治学や社会学、心理学を学ぶ。法科出身ながら、幼少期から大好きだった音楽の世界へ果敢に飛び込み、卒業後に本格的に活動を始めるのだ。
優秀なコンサルタント経験もありながら今やグラミー賞歌手のジョン・レジェンドなど、ユニークな経歴のアーティストは意外にいるものだが、では、リナが表現する音楽世界とは。
「Chosen Family」の意味
経歴だけでなく音楽もユニークなリナの表現性を考えるなら、この一曲が最適だろう。リナが2020年にリリースした「Chosen Family」。「Chosen Family」とは、血縁や人種にとらわれない家族のような共同体を意味する。
LGBTQコミュニティで育まれてきた言葉だ。トラックタイトル自体に直接的な意味を持たせながら、リナの歌声がこれまで居場所がなかった相手を優しく包み込むように囁いてくる。力強く鼓舞してもくれる。人類全体がひとつの母胎の中で揺り動く様には聴こえないだろうか。
全(パン)世界を包み込み、愛の眼差しを向けるリナらしい温かみを感じる。この曲を高く評価したのが、LGBTQカルチャーの生き証人エルトン・ジョンだったことも象徴的で、2021年にエルトンとリナはこの曲を再レコーディングしている。改めてその意味を世界に問うたのだ。
リナサワヤマ・フォロワーアーティスト
「Chosen Family」でリナが問うメッセージは、あまりにも真摯で力強い。
2020年リリースの「STFU!」のミュージックビデオでは、アジア人への偏見や女性を軽んじる男性をうちのめす。女性をエンパワーするストレートな表現が刺さる。
ぼけぼけなんてしてられない。世界には理不尽な差別や偏見がまだまだたくさんある。それを他人事のように感じ、無関心でいていいはずがない。
目を覚まさなくては。リナの音楽はリスナーを覚醒させる。リナが訴えるメッセージをいかにキャッチし、自分事として捉えられるのか。それはリスナー次第ではあるが、伝えようとしていることは至極真っ当。当たり前のことなのだ。
リナは、アジア人差別をほのめかした元レーベルメイトを名指しで批判することもじさない。そうした勇気ある行動力に触発されるアーティストは多い。
例えばリナのルーツであるアジア圏はどうだろう。日本では新鋭ながらYamato Watanabeが、「NEZO」や「F.D.O.」などのリリース曲で社会への問題提起に取り組み、サウンド面、精神面の両面でリナの影響下にあることが明らかだ。
韓国でも、LE SSERAFIMやTWICEなど、K-POPグループのパワフルなコンセプトに類似性が認められる。
リナの活動拠点イギリスでもデュア・リパのようなスターが肩を並べながら、リナサワヤマ・フォロワーアーティストたちが世界規模で多発的にメッセージを発信しているのだ。リナを中心にこういう輪が広がれば、世界はもうすこしいい方向へ変わると筆者は思うのだが。
アクションスターとしてハリウッド映画デビュー
さて、そんなリナがより強烈に日本に紹介される絶好の機会がきた。
2023年9月に公開されるキアヌ・リーブス主演の人気シリーズ第4弾『ジョン・ウィック コンセクエンス』だ。本作でリナは映画初出演にしてハリウッド映画デビュー、そしてエンディングテーマ「Eye For An Eye」を提供している。
『アラビアのロレンス』(1962年)へのオマージュ場面から始まる本作は、キアヌが馬で砂漠を駆け、冒頭からアクロバティックな展開。「主席連合」なる闇の組織を敵に回してしまったジョン・ウィックは苦戦を強いられることになる。
前半の主要舞台となるのが日本。ジョンはインターコンチネンタルホテル大阪の支配人シマヅ・コウジ(真田広之)にかくまわれる。シマヅの娘アキラを演じるのがリナだ。
ホテル全館で繰り広げられる銃撃戦でリナは戦闘スーツに弓矢を持って戦う。まるで武侠映画のヒロインのように猛々しい。
正真正銘の香港映画アクションスター、ドニー・イェン扮する盲目の刺客がきれきれのアクションを披露しながらもリナの存在感を引き立てる。
ドニー、真田に次いでアジア圏のアクションスターにリナが名乗りをあげたのである。これによってリナ自身が名実ともにエンパワーすることになるのだ。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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