今、イラン映画が熱い!映画に見る「イランの意外な事実」4つ

今、イラン映画が熱い!映画に見る「イランの意外な事実」4つ

後頭部のみを隠したヒジャブ。ニットのレースが可愛い/『セールスマン』より



 今、イラン映画が熱いのをご存知でしょうか? 日本人にとってはなじみが薄い国ですよね。そこで今回、話題沸騰中のイラン映画『人生タクシー』と『セールスマン』をより深く理解するために、世界中の女性と日本女性をつなぐ情報サイト「ワシントン・ジャパニーズ・ウィメンズ・ネットワーク(WJWN)」にご自身のテヘラン在住経験を寄稿した、千葉裕子さんにイランの生活について伺いました。

◆物議を醸した、映画『セールスマン』と『人生タクシー』

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 6月10日に公開される『セールスマン』は、アーサー・ミラーの戯曲『セールスマンの死』とサスペンスを絡めながら人間心理を綿密に描いたドラマで、見事、2017年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞。でも、イスラム圏特定7カ国の国民を90日間入国禁止にした米大統領令に抗議して、ファルハディ監督と主演女優のタラネ・アリシュスティはアカデミー賞への参加を辞退しました。

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 そして、ただ今公開中の『人生タクシー』は、2010年よりイランで“20年間の映画監督禁止令”を受けながらも活動しているジャファル・パナヒ監督の作品。本作では、監督自らがタクシーの運転手に扮して、ドキュメンタリー風に撮ったフィクション(ドキュフィクション)の作風が話題になっています。

 両作品ともストーリーがおもしろいのですが、変化する現代のイランが浮き彫りになっている点も興味深いです。いまのイランにおける意外な事実を4つご紹介します。

◆1:多様化するヒジャブ

 映画の中で様々なヒジャブ(髪を隠すスカーフ)がお目見えしますが、イランでは女性のヒジャブ着用が法律で義務化されています。千葉さんによると、イランの首都テヘランで見るヒジャブには大きくわけて4つのタイプがあり、イスラム教に対する信仰心と被り方に密接な関係があるのだとか。

1. 全身を覆うヒジャブ「チャドル」

信心深い人。その他、公務中や仕事中に被っている人も。信仰心がなくとも、家族のプレッシャーで渋々被っている女性もいるといいます。

2. 前髪と首を隠す黒いヒジャブ

政府推奨。小学生から大学生まで、学生はこのタイプを被らないと学校の門をくぐれません。学校用や仕事用としてだけ被る若い女性も。年配の女性はあまり被っていないようです。

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3. 前髪をチラッと見せる派手な色のヒジャブ

テヘランでよく見かけるスタイル。風紀警察に連行されると、親が呼び出され叱責を受けることも。

4. 後頭部のみを派手なスカーフで隠すヒジャブ

テヘランで多く、オシャレな若い女性に多いです。しかし、前大統領時代には、風紀警察に必ず連行されていたのだとか。

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 1から4の数字が大きいほど信仰心が薄い傾向があるそうです。

 実は、2013年からFacebookで「#my stealthy freedom(MSF)」という、イスラム女性によるSNSの社会運動が起こっています。Stealthy freedomは“内緒の自由”という意味。ヒジャブを被らない動画や画像をMSFのプラットフォームに投稿することによって、女性の自由を啓蒙するムーブメントだそう。

 今では、フォロワー数が100万人以上もいるMSFですが、インターネットの規制が厳しい国では拡散しづらい現実があるようです。

◆2:進む女性の社会進出

 映画では教師や人権弁護士などの職業に就いている女性が登場。千葉さんによると、北テヘランでは起業や会社で出世するなど活躍している女性もいますが、地域性や各家庭によって事情が異なるそう。北テヘランでも保守的な家庭の場合、働くことは愚か、外出さえも姑や夫の許可が必要だといいます。

◆3:意外にアメリカ好き!?

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『人生タクシー』ではアメリカ映画のDVDを闇で配達する行商人が出現しましたが、テヘランでは信号付近でアメリカ映画の海賊版を売る人もいるといいます。

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 さらに、北テヘランでハリウッド映画をテーマにしたカフェを見つけた千葉さん(上写真)。ハリウッド俳優のポスターが飾られているだけではなく、イスラム教で食すのが禁じられている豚肉のベーコンを使ったメニューまであったというから驚き!

◆4:先進国に負けずスマホ社会

 両映画にはスマホが出てきますが、千葉さんによると、iPhoneは高所得者が、SamsungやSonyのアンドロイド機種などは労働者階級でも持っており、テヘランでは中高年にもスマホの利用が広がっているのだとか。本物そっくりな偽のアップルストアもあちこちにあるそうです。

 変化を続けるイラン。『人生タクシー』や『セールスマン』から、多種多様なイランの価値観を読み取ってみてくださいね。

<TEXT/此花さくや>

【千葉裕子 プロフィール】

神戸大学教育学部卒、カリフォルニア大学言語学修士課程修了。北京、ジュネーブ、東京、ワシントン生活を経て、テヘラン在住経験を『ワシントン・ジャパニーズ・ウィメンズ・ネットワーク(WJWN)』に寄稿。

【画像提供】

映画『人生タクシー』

(C)2015 Jafar Panahi Productions

映画『セールスマン』

6月、Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー!

(C)MEMENTOFILMS PRODUCTION-ASGHAR FARHADI PRODUCTION-ARTE FRANCE CINEMA 2016

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