助けて!子どもに風邪薬を飲ませるのが怖い【シングルマザー、家を買う/65章】

助けて!子どもに風邪薬を飲ませるのが怖い【シングルマザー、家を買う/65章】

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<シングルマザー、家を買う/65章>

 バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。

◆娘は薬を飲むのが極度に苦手

 我が家の子供たちは、あまり風邪をひかない。健康第一なので良いことなのだが、その分、いざひいたときのパニックたるや、大変なものだ。

 先日、それまで普通に元気に遊んでいた娘が、「ママ、熱い」と言い出したので顔を見ると、少しむくんでいる。熱を測ってみると、なんと38℃を超えているじゃないか。しかしその日は土曜日。しかも19時。もう緊急外来しかない。

 すぐに市がやっている健康センターに行き、お薬を出してもらった。

 しかし、ここからが問題。娘は薬を飲むのが極度に苦手なのだ。

 粉薬を大人のようにそのまま口に入れて水を飲ませようとするとブフォッと噴き出し、居間がキレイに粉まみれになる。それではと、粉薬を水に溶かして飲ませるも、完全に拒否反応で食べたものまで戻してしまう。

 本当に風邪をほとんどひかないため、風邪薬は年に一度飲むか飲まないかという状態だったからこそ、粉薬に慣れることなく10年が過ぎてしまったのだ。しかし、10歳になったいま、ついに錠剤というニューアイテムが手渡された。これはいいぞ。これなら簡単に飲めるぞ!

◆直径5ミリの錠剤におののく

 しかし母の思惑に反し、娘はこの錠剤革命を目の前にして、一気に顔をひきつらせた。とっても小さな錠剤を見つめ、「これを……そのまま飲むの?」と青白い顔で聞いてきたのだ。

 大人の私にしたら粉薬の何十倍も楽に飲むことができるが、10歳の娘にとっては初体験。たしかに個体をそのまま飲み込むのはハードルが高い。しかしここでわたしが弱気になったらダメだ! 私は気合いを充分に入れ、「大丈夫、水と一緒に飲めば簡単だから!」と叫ぶと、純粋な娘はその言葉を信じ、錠剤を口に入れ水を飲みこんだ。

 しかし、錠剤は喉を通らなかったらしく、水だけが飲みこまれる。何度も何度も挑戦するうちに、錠剤が解けはじめ、口には苦みだけが広がるらしい。さらに、何杯も飲み続ける水のせいでお腹はタプタプだ……。

 そして次の瞬間、口に水を含むなりマーライオンのように吐き出しはじめた。娘は堪忍袋の緒が切れたのか、ドラマのようにコップをドンっとシンクにたたきつけ、「ママ! もうお薬なんて飲まない!」と叫んだのだ。普段はつぶらな瞳の娘だが、瞳孔が開きかけている。これは大ごとだ……。なぜこんな直径5mmくらいの薬のために瞳孔を開かなくちゃならんのか……。てか38℃あるのに元気だな……。

「もういいよ、飲まなくていいよ」という言葉がのどまで出かかったが、これはあかん、これはちゃんとのりこえなくちゃあかん! と気を強く持ち、「薬飲めば治るから! 頑張って! どうにかがんばって!」と大声で叫び返した。

◆「ママなんて大嫌い!」

 もう私と娘の間に風邪を治すという目的は関係なくなっている。とりあえずこの薬を体内に入れなくてはならない。すると娘はありったけの声で「ママ! もうママなんて大嫌い! 薬苦い!」と叫んだのだ。

 こんな小さな薬のせいで娘に嫌われはじめている。まぶたの裏で走馬燈のように流れていく普段の娘の可愛らしい笑顔……。普段はママ大好きって言ってくれるのに……。大嫌い……大嫌い……。

……嫌われてもかまわねぇ。ママにはあんたらを食べさすために仕事があるんじゃ! そのためにあんたには学校に行ってもらわなあかんのや! 早く飲んで早く治してくれ!

 この時点ですでに溶けて極小になっている薬だが、存在感はすごいらしい。

 その後、結局飲み込むという課題は乗り越えられず、錠剤が全て口の中で解けるかたちで、この日の薬との戦いは幕を閉じた。すでに私と娘の体力と精神力は底をついている。私の方が風邪をひきそうだ。

 なんで薬を飲ますのがこんなに大変なんだ……。

◆最後の砦、服薬ゼリー

 翌日。薬が効いたのか、熱が下がり、本人も元気な様子。安心したが、とりあえず処方された薬はまた飲まなくてはならない。

 そこで私はあのCMを思い出した。「お・く・す・り飲めたね♪」

 あれだ、あれだ! 急いで薬局に向かい、服薬ゼリー「おくすり飲めたね」を購入し、娘に向かって「これがあれば大丈夫!」と自信満々に見せると、娘も目をキラキラさせて、「これで辛くないのね!」とワクワクした表情になった。

 もう風邪なんて治っているように感じるが、今後のため、とりあえず試してみよう。少量のゼリーに小粒の錠剤をいれ、口に含むとつるんと喉を通る仕組みらしい。

 娘はゼリーに包まれた錠剤をおそるおそる口にいれると、ごくりと飲む動作をした。やったか、ついにお薬問題を解決することができたか!?

 娘はその後も何度もごくりと飲む動作を続けている。

「ん? どうした?」

 すると娘はゼリーの中からキレイに錠剤だけを取り出し、「のめないぃぃぃ〜!」と泣きはじめたのだ。

 恐るべし、錠剤! おくすり、飲めないじゃん!

 それから、ゼリーでお腹がいっぱいになるくらい何度も挑戦するも、不発。むしろ、よくキレイにゼリーだけ食べれるなと思うほどだ。

 娘はもう限界に達している。そして、私に向かってこう言った。

「もう風邪治らなくていい!」

 だよね……。お薬を飲むことがこんなに辛いなら、風邪でいたほうが楽だよね……。娘はその日、薬を飲まずに寝ていただけで夜には全快し、月曜日には元気に学校に向かったのだった……。

 娘はその後、「おくすり飲めたね」だけでなく、同型のウィダーインゼリーにさえも拒否反応を示すようになったことをここに記しておく。

 ねぇ、みなさん、どうやって飲ましているの……。そして、お願いだからお医者様……小学生がつるんと飲めるお薬の開発、お願いします……!

<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>

【吉田可奈 プロフィール】

80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky)

ママ。80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。娘(8歳)。しっかり者でおませな小学3年生。イケメンの判断が非常に厳しい。息子(5歳)。天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをものともせず保育園では人気者【ワタナベチヒロ プロフィール】

漫画家、イラストレーター。お金にまつわる役立つ知識をオールマンガで1冊にまとめた著書『お金に泣かされないための100の法則』(ファイナンシャルプランナー山口京子先生が監修)が主婦と生活社より発売中。

※このエッセイは月ごとに配信予定です。

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