肝心の「精子選び」がアバウトすぎる顕微授精。不妊クリニックの裏側とは…

肝心の「精子選び」がアバウトすぎる顕微授精。不妊クリニックの裏側とは…

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 不妊治療を受けるカップルは、日本でも急増しています。お金がかかる、女性の体の負担が大変…ということはよく聞きますが、「生まれてくる子どもの先天異常のリスクが高くなる」という説を聞いたことがあるでしょうか?

「顕微授精に代表される生殖補助医療によって生まれた子は、そうでない子に比べ、自閉症スペクトラム障害であるリスクが2倍」というショッキングな研究結果(2015年、米・コロンビア大学)を取り上げている新書『本当は怖い不妊治療』。

 前回に続いて、著者であるジャーナリストの草薙厚子さんに、不妊治療の知られざるリスクについて伺いました(同書の監修は黒田優佳子医師)。

◆なぜ「顕微授精」で生まれた子どもに異常が表れるリスクが?

――不妊治療の約80%で使われるという「顕微授精」(※)。この方法で、なぜリスクが高まるのでしょうか?

※顕微授精:体外に取り出した卵子に顕微鏡を用いて極細のガラス針で人為的に1匹の精子を穿刺注入し、受精させてから子宮に戻す方法。

草薙:ひとつは、受精作業をする「胚培養士(エンブリオロジスト)」の地位、立場の問題があります。

 みなさんは、医師が受精作業をすると思っているでしょうが、ほとんどのケースでは胚培養士の手によるもので、彼(女)らは医師のような国家資格を持っているわけではありません。胚培養士の多くは農学部出身で、ウシに代表される家畜繁殖の知識・技術を学んできた人たちです(ウシやウマを受精、妊娠させることが専門)。

 講座を受講して民間の資格試験で認定されれば、胚培養士になれるのです。

 たったひとつの精子を選ぶ、卵子に針を刺して精子を注入する顕微授精の実施、受精卵の管理など――“子どもの命のもと”を、この胚培養士に任せっきりというクリニックが多いのです。

 胚培養士は不足していて、現状、不妊治療クリニックでは盛んに募集しているのです。

――じゃあ私でも、講座と資格試験を受ければなれるんでしょうか!?

草薙:受講して学べばなれるかもしれませんね。実際、臨床検査技師が、兼任で胚培養士を担当しているところもあるようです。

◆「たったひとつの精子」の選び方が、いい加減すぎる

草薙:その胚培養士が顕微鏡で精子を見ながら、卵子に注入するひとつの精子を選ぶわけです。

 でも、それが「良い精子」かどうかの見極めは難しい。ただ「動いていれば良い精子」だという指標だけで選んでいるようです。

 胚培養士さんにも取材しました。受精卵の入ったシャーレをパッと見ただけで「これは(細胞分裂の状況が)良くないな」と言いながら捨ててしまうという胚培養士もいらっしゃるようです。もちろん、中には責任感を持っている方もいらっしゃいますが、生命の「誕生の根幹」を扱っているという責任感が何より大事だと思います。

――顕微鏡で「良い精子」を選ぶのは、なぜ難しいんでしょうか?

草薙:ヒトの精子は、「形が正常で元気よく動いているから問題がない」とは限らないのです。その中には、頭部(オタマジャクシの頭の部分)に空胞があったり、DNAに損傷がある精子も混じっているのとのことです。

 今回の本を監修してくださった産婦人科医師の黒田優佳子先生は、臨床精子学の専門家で、顕微授精の現場にとても問題があるとおっしゃっています。不妊クリニックは、「精子を選ぶ」という一番大事なところで、もっと慎重になるべきだ、と。

⇒【写真】はコチラ https://joshi-spa.jp/?attachment_id=724184

――自然な形なら、精子が泳いで競争することで、優れた精子が受精するわけですよね。その精子を人間がいい加減に選んでいたら、生まれた子どもに異常があるリスクが高まるのは当然だという気がします。

草薙:そうなんですよね。だからお医者さんや胚培養士さんも、「運動率と精子数」だけで精子の良し悪しを決めないで、もっと意識を変えるべきではないかと。最近では他のクリニックも不妊治療を行なっているため、じゃあウチもやろうか、という軽い気持ちで始めるところも多いと聞きます。

◆海外では、医師がこっそり自分の精子を使った疑惑も

草薙:また、有名な不妊クリニックは連日混雑しているので、医師が忙しすぎると、取り違えなどのミスも起こっています。新聞でも騒がれて、本にも書いた事故なのですが、2009年に香川県立中央病院で体外受精でできた受精卵を、他人の受精卵と間違えて女性の子宮に入れてしまったのです。ミスの報告を受けた夫婦は、結果として中絶してしまいました。

 この病院には培養士も3人いたのですが、検査技師と兼任だったそうです。

 また、つい先日、オランダの不妊治療クリニックで、体外受精のときに院長がこっそり自分の精子を使っちゃった疑いがある、というニュースがありましたよね(2017年5月13日)。23人の親から集団訴訟を起こされているようです。

 ともかく、自分の卵子や精子を取り出してもらい、医師や培養士の手にゆだねるわけですから、最後はブラックボックスなので、治療を受ける者はただ信用するしかない、という面があるのです。

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 同書には、上に書いた以外にも、さまざまなリスクが指摘されています。

 不妊治療を受けるのが怖くなってしまいますが、「不妊治療のメリットとリスクをきちんと知ったうえで選択してほしい」と草薙さんは言うのです。

【草薙厚子さん】

ジャーナリスト、ノンフィクション作家。元法務省東京少年鑑別所法務教官。著書に『少年A矯正2500日全記録』『子どもが壊れる家』『本当は怖い不妊治療』などがある。

<TEXT/庄司ライカ、女子SPA!編集部>

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