“王子キャラ”が次々と逮捕。高見沢、及川光博も「疲れた」って【辛酸なめ子】

“王子キャラ”が次々と逮捕。高見沢、及川光博も「疲れた」って【辛酸なめ子】

王子疲れの王子たち



【いまどきの男を知る会 ファイルNo.4 王子系男子】

 このところ王子キャラが世間を騒がせているようです。

◆マダム疲れ?青少年や子どもに走る王子たち

 まず、今年6月に発生したのが「栃木のプリンス」の事件。ホテルニュー塩原専属歌手の宇都ノ宮晃が、16歳の少女にみだらな行為をした疑いで逮捕されました。温泉宿のマダムキラーと呼ばれ、大人気だった栃木のプリンス。知人にもハマっている人がいましたが、「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)で紹介されたり、知る人ぞ知る存在だったようです。

 白い羽をまとった衣装で歌っている画像を見たら、やつれ気味ですが目鼻立ちは整っていて、王子と呼ばれるのも納得です。しかし彼は「仕事のストレスを解消したくて」少女へのわいせつ行為に及びました。

 ステージはノーギャラでおひねりだけが収入、4畳半の楽屋で寝泊まり、バイキングの残り物を食べて、さらにそば屋でバイトをしていたという、王子と真逆の環境で生きていたようです。貧しくても心は王子……。しかし生活苦と、王子を演じ続ける疲労、マダムばかりに追いかけられるストレスで、欲求不満がたまっていったのかもしれません。

 同じようなケースが、イケメンヴォーカルグループ「LE VELVETS」でバリトンだった黒川拓哉が女子中学生を買春した件。芸大出身の気品あるたたずまいの王子様的な男性です。

 安倍昭恵さんも応援していたそうで、年上の女性に根強い人気がありました。昨年、成城マダムが開いたパーティにもこのグループは呼ばれたそうで、「おばさんたちに追いかけられて癒しを求めたくなったんじゃない」と、知人のマダム談。反動で10代とかかなり若い方に行くのが問題を起こした王子キャラに共通する特徴のようです。マダムに吸い取られた生体エネルギーを若い女子で取り戻そうとしたのかもしれません。

 そしてさらにダークサイドな王子が出現。“社交界のプリンス”と名乗る熊谷裕樹が児童ポルノ法違反で逮捕されたのです。「王侯貴族文化の研究や伝統継承し、世の中に再発信する」と公式サイトには書かれていましたが、とくに貴族の血は引いておらず、ヤフオクでそれらしい勲章を買っていたとか。言ったもの勝ち王子です。

「新世界秩序構築」などとも書かれていて、単に陰謀論好きなのかもしれません。プロデュースしていた少年アイドルグループのPVもピラミッドに目のシンボルとか出まくっていました。彼らに身の回りの世話をさせて「王子様」と呼ばせていたそうです。王子感を保つため、若いエネルギーを少年たちから吸収していたのでしょうか。

 かつては“タイの王子”とも詐称したり、誰でも入れるワインイベントで撮ったモルドバ共和国元農業食品産業大臣との写真を、モルドバ共和国元大統領とのツーショットだと偽ったり、王子のフリを続け、ネタを仕込むのも大変そうです。

◆王子の職業病「王子疲れ」

「王子疲れ」というのは、王子キャラを演じている人皆に起こりうる症状です。

 もう40年以上も王子キャラでいる高見沢俊彦氏が、今年の6月にバラエティー番組で「王子キャラをやめたいときもある」「本当にしんどいから」と、王子疲れを告白して話題になりました。埼玉県蕨(わらび)出身の高沢氏を昔、南浦和の駅で見かけたことがありますが、庶民の中、異物的な王子オーラで目立っていました。「蕨の王子」とか呼び名の範囲を狭めてみたら、少しは辛さが軽減されるかもしれません……。

 及川光博氏も4月のテレビ番組で、王子キャラを20年続けたけれど疲れてやめた、と告白。王子たち、次々と脱落し、おじさまに転向しています。

 王子疲れには様々な要因が考えられます。まず、マダムたちに精気を吸い取られる、という件。以前王子キャラの知人のイベントに行ったら、黄色いTシャツの下、黒いブラを透けさせたおばさまが「◯◯ちゃんがんばって〜」とギラついた目で声をかけていました。客層がみんなこういう感じだったら、かなり消耗しそうです。

 一般の庶民なのに、王子の品格に合わせて折り目正しい言動を常に心がけないとならないというのも疲れます。王子として体面を保ち続けるのは、現職の王子にもなかなかできることではありません。イギリスのヘンリー王子も、ダイアナ元妃が亡くなってから感情を抑え続けて爆発寸前になり、カウンセリングのお世話になったことを最近告白しています。イギリス王子としては感情を表に出せず、辛さや暴力衝動を抱えて生きていたそうです。

◆王子キャラは期間限定なら幸せになれる?

 王子キャラは期間限定だったら、疲れもなく、気軽においしいところを享受できます。例えば江ノ島の「海の王子」のように……。やはり小室圭さんは、ブランディング力や戦略に長けていると改めて実感しました。王子というワードの持つポジティブなパワーで本物のお姫様を引き寄せることができました。

 しかしやつれた王子疲れ男子にも萌えを感じます。ピチピチの王子にはない哀愁が漂っています。こうして王子キャラは骨と皮になるまで吸い取られ尽くすのでしょうか……。

<TEXT/辛酸なめ子>

【辛酸なめ子 プロフィール】

東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著者は『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)など多数。

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