ブサイクでどんくさい野良猫「ぽー」と出会った【やさしいねこ】

ブサイクでどんくさい野良猫「ぽー」と出会った【やさしいねこ】

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 ある日公園に現れた、ブサイクな1匹の猫。

「ぽー」と名づけられたその猫は、他の猫がご飯を食べ終わるのを陰でじっと待っている、遠慮がちな猫でした。

 彼の体はいつも汚れ、傷ついていました。実は、ぽーは”町内最弱”で、まわりの猫たちからいじめられ続けていたのです。

 そんな、ぽーのお話を、戦場カメラマンの太田康介さんが写真と文章で綴ります(『やさしいねこ』として10月18日刊行予定)。

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【やさしいねこ Vol.1】

◆入れ、入るんだ、ぽー!!

 ある日、うちの近所の公園でブサイクな白い猫を見かけた。しっぽの柄が特徴的な猫で、しっぽの「ぽー」と名づけた。

⇒【写真】はコチラ https://joshi-spa.jp/?attachment_id=762899

 突然だが私は、初めての「TNR」活動として、彼に狙いを定めていた。その活動は、飼い主のいない猫の殺処分や苦情、事故死などを減らすためにも必要な措置なのだ。これから捕まえて去勢手術をさせてもらうが、許しておくれ。

※【TNRとは】「Trap Neuter Return」の略で、飼い主のいない猫を保護し、去勢手術を受けさせた後に元の場所に戻すこと。繁殖を防止して無用に命を奪われる猫を減らすための措置で、「地域猫」として一代限りの命を見守っていく。去勢手術を受けた猫は、その目印として耳先にV字のカットを入れられる。

 賢い私は、いきなり手を出して野良猫を捕まえるなんてことはしない。あいつを捕まえるのには……これだ。捕獲器1号(キャリーケース)。

 入り口までカリカリでおびき寄せて、さらにごちそうを中にセットする。カリカリ ですらあいつにはありがたいご飯なのに、マグロなんぞ入っていた日にゃもう卒倒するほど嬉しいに違いない。

 ひょっとすると「お願いですからボクを捕まえてください」と懇願されるかもしれない。サービスで自分から扉を閉めてくれる可能性すらある。いくらなんでもそれはないか……まあとにかく入ったら扉をバタンである。完璧! フフフ……。

 落ちているカリカリを美味しそうに食べているのを見ていたら、ぽーと友達になれそうな気がしてきた。ひょっとして手からご飯も食べてくれるんじゃないか? 手にカリカリを乗せて出してみた。

バシッ!

 血がでた。強烈な猫パンチでした。ツメぐらい切っといてほしい……。

 結局私は叩かれ損だったが、状況は良いほうに向かっていた。ある日ぽーは、ゆっくりとキャリーケースのほうに誘導され、とうとう中に入った……。

……あかんやん。

 ケースが小さくて体が全部入らない。「ポリポリ」「クチャクチャ」と音が聞こえる。

 ああっ、中のおいしいご飯食べてる。食べてほしいけど全部食べないで……食べるなら全部入ってからにして……ああ〜食べてしまった……。

 結局、ただのご飯タイムになっただけだった。ぽーの腹は膨れた。

 良かった良かった……。

 じゃなくて! 何とか捕まえて去勢しないと!

 ご飯のお礼にぽーが自分で扉を閉めてくれることは絶対にないことはもうわかっている。そこで、捕獲器2号「はいるくん」の登場だ。

 猫が中に入ると、バネが作動して扉が閉まるようになっている。暴れて怪我をしないよう、針金やカットした鉄板のバリなどをヤスリで削っている。さらに、尻尾が挟まることを想定して厚紙でカバーした。

 準備は整った。あとは「はいるくん」をセットするだけだが、どこに置くかが問題だ。これを持って近所をウロウロするのは、かなり怪しい人間丸出しになってしまう。できれば家の裏など目の届くところがいいのだが……。

◆野生の勘 vs 私の知力

 そんなある日、日曜日にカミさんと公園の前を通りかかっていたら……。子供たちが遊んでいる片隅に、ぽーがぼーっと座っていた。

いたいたいたー!!

 ここしばらく、姿を見せなかったぽーが現れた。このチャンスを逃してなるものか!

 慌てて約100m離れた家に帰り、「はいるくん」を準備して車に積みこんだ。もうすでに10分が経過している。ひょっとしたらもう立ち去っているかもしれない。

 ぽー、いてくれよ〜!!

⇒【写真】はコチラ https://joshi-spa.jp/?attachment_id=762926

……まだいた。

 ぽー、お前いい奴だなあ……。

 よっしゃ、ほーれこの中においしいごはんがはいっているんだぞー。カリカリを道路に置いて誘導していく。前回は失敗したが、彼にとってはおいしいご飯を食べた良い思い出しかないはずだ。

 だが、野良を甘くみてはいけない。

 いくら前回おいしいご飯をあげた印象の良い私でも、野性のアンテナなどが働いて危険を察知するかもしれない。ここはひとつ慎重に。そう、慎重にやらね……。

⇒【写真】はコチラ https://joshi-spa.jp/?attachment_id=762927

あ、入った。

 えええーっ!? なんていい子なの、ぽー。

「バタン!」と扉が閉まると、安心してご飯を食べていたぽーも、さすがにびっくりしたようだ。

⇒【写真】はコチラ https://joshi-spa.jp/?attachment_id=762929

 ごめんよう、騙してごめんよう……。

―やさしいねこ Vol.1ー

<文・写真/太田康介>

【太田康介】ボスニア・ヘルツェゴビナやアフガニスタン、カンボジア、北朝鮮などを撮る戦場カメラマンとして活躍。東日本大震災後は、原発周辺に取り残された家畜やペットの写真を撮るとともに、飼い主のいない猫のTNR(地域猫化)と給餌活動を続けている。ブサイクで遠慮がちな野良猫「ぽー」の心温まる物語『やさしいねこ』を10月18日に上梓の予定。ブログ「うちのとらまる」http://uchino-toramaru.blog.jp/

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