ランチ時の女子トークに入れない…発達障害・アスペルガー女性のつらさ

ランチ時の女子トークに入れない…発達障害・アスペルガー女性のつらさ

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「私には友達がいません。今はいらないんです。私はいわゆるガールズトークをしません。できないし、意義を全く見い出せないんです」

 そう切り出したのはアスペルガー症候群の診断を受けたCさん(30代)。

 前回までは「ADHD(注意欠如多動性障害)」について取り上げました。今回は、発達障害の中でも「自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群)」について取り上げます。

◆今は「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれる

「自閉症スペクトラム障害」は、以前は「自閉症」「自閉症障害」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」など、多くの名称が用いられてきました。しかし、現在では、これらを一つの連続体と捉えるようになり、「自閉症スペクトラム障害」という名称が広く用いられています。

 この特性としては

1、コミュニケーションの障害

2、社会的なやりとりの障害

3、こだわり行動

 の3つがあります。中でも、「アスペルガー症候群」は、知的な遅れがなく、対人関係の障害が比較的に軽度な状態を言います。

 また、ADHDと同様に特に女性の場合は特徴が男性ほど目立たない場合が多く、気づかれにくいため、別の診断を受けてしまうことも多いようです。日本自閉症協会「メディア・ガイド」によると、男女比は4:1の割合でみられると発表されています。

「以前、女性のアスペルガー症候群はよく知られていませんでした。診療を続けている中で、自閉症圏の人と共通した要素がある女性が多くいることに気づきました。

 例えば、注意欠陥障害、心身症、うつ病などと診断され、なかなか改善しない場合とか、時には統合失調症と診断されていて、多量の向精神薬が使われていても、アスペルガー症候群であると診断し、減量とカウンセリングで回復に導いたこともありました。

 また、体の不調の訴えで難治性の心身症と言われた女性をアスペルガー症候群と考え、心理療法や薬物療法、漢方薬などを併用して改善させたこともよくあります」(小児神経精神科医の宮尾益知医師)

◆「最近どう?」って…何を聞かれてるの?

 男性と女性の「アスペルガー症候群」の特徴は違うようです。

 男性の場合、3歳頃からアスペルガー症候群の特徴である「こだわりが強く、他の子どもと衝突しがち」という症状がみられます。

 一方、女性は、幼児期には特徴が目立たず、小・中学生くらいから人間関係での悩みが出てきます。友達とおしゃべりをしていて、話についていけないことが多くなってくるのです。「あの子の話、聞いた?」など、具体性がない曖昧な話についていけなくなるというのです。

「いわゆるガールズトーク、具体的に言えば女の子同士で話をする時、話題はグループごとに違いますよね。会話の中に主語とか目的語とか指示語とかが入りません。入っていないので何のことだかわからない。そこが女性のアスペルガー症候群の1番最初に出てくる悩みなのです。

“1日の間で1番辛い時間帯はいつですか?”と質問をしたところ、“お昼ご飯を食べる時なんです”と答えが返ってきました。“どうしてお昼ご飯を食べる時が辛いのか”って聞くと、”最近どう? っていう話がランチのときに出るから”と答えるのです」(宮尾医師)

 Cさんは「最近どう?」と聞かれても、具体的に何を聞かれているか理解できないのです。

 毎日、新聞を読んでその日の話題を探して、その質問に答えることができるように知識を持って職場に行きますが、その日のうちに、様々な事件が起こります。大変なことが起こると、当然、話題は変わります。

 しかし、Cさんはそういった状況に合わせて答えることができず、“変な人”と言われて、排除されてしまうのです。

◆無理に仲間に入ろうとしなくていい

「診断を受けて、自分の特性を理解してからはトラブルが少しずつ減ってきました」と言うCさん。医師やカウンセラーのアドバイスを聞いて、苦手なガールズトークでは無理をしないようにしていると言います。

「カウンセラーさんから“すごく努力しているから、無理にコミュニケーションを取ろうとしなくていいですよ”と言われたのです。臨床心理士から言われると、私は素直なのでそのまま取ってしまう性質があるらしく、専門の方にそう言われるのなら、確かにしんどいし、もういいかなって、少し吹っ切れたところがあります。

 それ以来、カミングアウトもしていないのですが、もう友達はいなくてもいいんだって思っています。そういうところで気を使うのが嫌なんですね」(Cさん)

 Cさんは診断を受けるまで、グループに入ろうと努力していました。しかし、自分の特性を自覚してからは、無理に付き合おうとせず、自分を理解してくれる人との関係を大切にしようと思ったといいます。また、一人になると考えが整理でき、気持ちが落ち着くとも言っています。

◆睡眠障害、うつ、胃腸の不調などが起きることも

 アスペルガー症候群の人は、様々な特性から生活上の困難が生じやすいため、基本的にストレスの多い生活を送りがちです。適切な理解や支援を受けられずいると、ストレスが積み重なっていき、二次的な障害が起こることがあります。

「男女を問わず多いのは、睡眠障害です。もともと時間の感覚を持ちにくい上に、ストレスによる不眠もあり、生活リズムが崩れがちです。他にうつ病や統合失調症、強迫性障害などの病気も男女ともによくみられます。

 また、女性に多い病気として第一に挙げられるのは心身症です。胃腸の不調や貧血、疲労感などにより、何度も内科を受診する人もみられます。他に摂食障害やうつ病、不安障害など心の病気も見られます」(宮尾医師)

 社会性が育ちにくいと言うアスペルガー症候群の特性が、人間関係などの悩みにつながり、各種の心の病気に関わってくる可能性もあるのです。上記のような症状や、体調不良を感じたら、発達障害に理解のある心療内科などで専門医に相談してみることをお勧めします。

⇒【YouTube】はコチラ ロボットを利用した自閉症スペクトラム障害患者へのコミュニケーション改善治療(宮尾益知医師) http://youtu.be/4Z9ZegbrZE8

―知られざる「女性の発達障害」 vol.3―

<TEXT/ジャーナリスト・草薙厚子>

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