都会から田舎へ“コロナ移住”を決めた5人家族。家への意識がガラリと変化

都会から田舎へ“コロナ移住”を決めた5人家族。家への意識がガラリと変化

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新型コロナウイルス流行の影響で、“住まい”に対する意識が急速に変わりつつあります。

 大きなきっかけとなったのは、2020年4月に政府が発令した緊急事態宣言を受けてテレワークが急拡大したこと。5月25日に緊急事態宣言が全面的に解除されてからも、首都圏では多くの企業がテレワークを継続しており、「毎日通勤して朝から晩まで職場で働く」という働き方が“当たり前のもの”ではなくなってきました。

 となると、重要になってくるのが住まいのあり方で、首都圏では「通勤ライフに適した家」よりも「在宅ワークに適した家」を求める人が増加。リクルート住まいカンパニーが運営する住宅情報サイト『SUUMO』の発表した「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」によると、じつに4人に1人が「今後も引き続きテレワークを行う場合、いまの家から住み替えを検討したい」と回答しています。(調査対象:関東地方1都7県・長野県在住でテレワークを行う20歳〜64歳の男女1,390人、調査期間:2020年4月17日〜4月20日)

 同じ首都圏内での引っ越しならともかく、地方移住となるとハードルの高さを感じてしまいますが、実際にコロナ禍で生活が変わったことによる移住、いわゆる“コロナ移住”を決めた人は、何を重視してどのように新たな生活拠点を選んだのでしょうか? 体験談を聞いてみました。

◆テレワーク続行を受けて、都内の戸建て購入をキャンセル

 都心にオフィスを構える企業で営業職として働く宮崎亮さん(仮名・38歳)は、妻と長女(5歳)、長男(1歳)とともに都内の賃貸マンションに居住。第三子妊娠が発覚し5人家族になることを機に新居を探し始め、今年3月上旬に近場の戸建てを購入しました。

「都内の戸建てなので広さはいまいちですが、家族分の部屋数をなんとか確保できるのと、通勤や通園に支障が出ず生活圏が変わらないのが最大の決め手でした」

 ところが、その矢先に新型コロナ流行が本格化。4月以降は宮崎さんの会社もテレワークが続き、会社から「今後もテレワーク主体で業務を行っていく」ことが通達されたのです。

「緊急事態宣言解除後も出社するのは週に1〜2回で、それもフルではなくせいぜい3〜4時間ほど。『これって都内で引っ越す意味あるのか?』と考えることが増え、次第に栃木県にある実家へ移住する考えが芽生えてきました」

◆どうせ毎日通勤しないなら、田舎で広い家に住みたい

 宮崎さんのご両親は、7年ほど前に祖父母の介護のため北海道に転居。実家は貸し出すためにリフォームしたまま借り手がつかず、空き家となっていたのです。

「それまで栃木に戻りたいという気持ちはなかったのですが、それは『都内に毎日通勤できない』という物理的問題から、無意識に気持ちに制限をかけていたんですよね。でも、『どうせ毎日通勤しないならタダで広い家に住めるほうがいいじゃないか』と、コロナ禍によってはじめて選択肢として浮かんできたんです。

 栃木は完全アウェイな妻には切り出しにくかったのですが、妻もこの状況下で狭い都内の新居に引っ越すことにモヤモヤしていたようで、すぐ乗り気に。実家や周辺環境を見せに帰ったら、もともと田舎育ちの妻は気に入ってくれて、急遽新居の契約を解除しました。手付金300万円が戻ってこないのは痛かったですが、『今後は家賃ゼロだからローン返済額に置き換えれば2年でペイできる』と気持ちを切り替えました」

◆妻の仕事や、長時間の通勤問題もクリア

 もちろん、「本当に田舎に引っ越して大丈夫?」と心配な点はいくつかあったものの、幸運にもすべてクリアできたとか。

「まずは通勤面。最寄り駅から都心まで1時間半ほどかかりますが、グリーン車を利用すれば仕事や読書の時間に充てられるのでむしろ快適かなと。往復で2000円の乗車代は安くはないですが、週1〜2回なら許容範囲としました。妻のほうは看護師なので、栃木でも勤務先が見つかるはずとのことで問題なし」

◆子どもの教育環境はむしろ「助かった」

「一番心配だったのは子どもの教育環境ですが、「公立の小中学校の水準が比較的高いエリアなので大丈夫だろうという結論になりました。このまま都内に住んでいたら中学受験を考えていたと思うのですが、正直お金も労力も不安だったので、そこから解放されてむしろホッとしている面もあります(笑)」

 長女の転園先も見つかったので、11〜12月ごろの転居を考えているという宮崎さん一家。「もしこの先、通勤頻度が増えることになったら?」という不安はあるものの、いまはのびのびと子育てできるワクワクが勝っているそうです。

◆これから住むなら“住みたい街”より“住民に愛されている街”

 宮崎さんのケースは「実家が空き家」ということでトントン拍子に移住先が決まりましたが、どこにも縁がない場合はきっと悩んでしまうはず。また、住み替えるにしても地方移住より近郊での“転居”が現実的……という人も多いですよね。

 住まいの動向に詳しい『SUUMO』編集長の池本洋一さんに、コロナ移住における移住先、住み替え先の選び方について聞いてみました。

「今年、弊社では初めて『住民に愛されている街』を調査したのですが、JRのターミナル駅が上位を占める『住みたい街ランキング』と打って変わり、私鉄沿線や急行電車の止まらない駅がランクインしてきました。この結果はコロナ移住において要注目で、なぜなら『愛されている街』は“住みやすい”という実感値に基づいて選ばれているから。在宅の時間が増えるということは地元で過ごす時間が増えるわけで、だったらより心地よく暮らせる街を選んだほうがいいですからね」

 なかでもおすすめなのは、7位の『東北沢』のような大型駅の隣駅だとか。

「東北沢はさまざまなお店が揃う下北沢駅の隣駅。こうした駅に住めば、静かなエリアで暮らしつつ、買い物や遊びは隣の賑やかな駅で楽しむ……と、いいとこ取りができます。また、多くの人が降りない駅は飲食店に地元の人しか来ないので、コミュニティに馴染みやすいのもメリット。家賃も割安になり、ファミリータイプなら近隣の大型駅より3〜4万円安く住むことができます」

◆「近郊外」の「人気駅の隣町」を見逃すな

 とはいえ、「都内では金額的に厳しいので、やはりもっと安く広い家に住める地方に行きたい」という人もいるはず。その場合も、おすすめは“人気駅の隣町”だそう。

「たとえば埼玉県の『加茂宮』は、知名度は低いですが人気の大宮駅からモノレールで2駅めで、駅前には大きなショッピングセンターが。ほかにも大きな病院や図書館、公園などさまざまな施設が駅近くに揃っているため、気軽に大宮駅を利用しつつ、最寄り駅でも自己完結できる非常に便利な場所なんです。

 そのほか、都心並みにオシャレで充実した商業施設や文化施設が揃う『立川』は、都市の便利さと自然の豊かさ兼ね備えた郊外最強駅。その隣駅で、立川より安く静かな『高松』もイチオシです。仕事がテレワーク化したとはいえ都内への通勤もたまにあるという場合は、こうした通勤可能な“近郊外”に住み替えるのがベストだと思います」

 コロナ禍においても都心の人気は大きく揺らいでいないものの、「“強みのある郊外”との人気の差が今後はどんどん詰まってくるはず」と池本さん。住みやすく愛着が持てる近郊外、要チェックです。

【池本 洋一(いけもと・よういち)】

株式会社リクルート住まいカンパニーの不動産・住宅情報サイト『SUUMO』編集長。住まいの専門家としてテレビ・新聞・雑誌などのメディア出演、講演、執筆を行う。また、内閣官房、国土交通省、経済産業省等の委員会の専門委員も歴任。

<池本 洋一 取材・文/持丸千乃>

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