『鬼滅の刃』主題歌を歌うLiSA、アニソン苦手な人にも聴かせる歌ぢから

『鬼滅の刃』主題歌を歌うLiSA、アニソン苦手な人にも聴かせる歌ぢから

10/14リリースされたアルバム『LEO-NiNE (初回生産限定盤)』

いま社会現象となっている、アニメ『鬼滅の刃』。10月16日に映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が公開されると、全国のシアターが“ジャック”状態に。横浜の映画館では、1日に33回も上映したそうです。公開わずか3日で342万人を動員する記録的ヒットとなっています。

◆アニメ版、劇場版の主題歌を歌うLiSA

 そして、本編と同じぐらい注目を集めているのが、主題歌「炎」を歌うLiSA(33)です。2010年のメジャーデビュー以来、アニソン界で地位を確立してきた彼女が大ブレイクを果たしたのが、テレビ版のオープニング曲「紅蓮華」でした。この曲で昨年の紅白歌合戦に出場し、知名度も一気にアップ。いまや「紅蓮華」は、カラオケチャートの上位に長くランクインし、定番曲になっています。

 アニソン好きの大人だけでなく、小さな子供たちまでが歌っているというのですから、その浸透ぶりはホンモノ。トヨタのCMにも起用されたことからも、LiSAの歌と曲には、人々の琴線に触れる何かがあるのかもしれません。

 とはいえ、不勉強にして、昨年の紅白まで彼女の存在を知らなかった筆者。改めて調べてみると、興味深いバックグラウンドがわかりました。そもそもは、バンド志向だったそう。中学生時代に、アヴリル・ラヴィーン(36)やLOVE PSYCHEDELICO、EGO-WRAPPIN’などをバンドでカバーしたといい、根っこには女性ロックの影響がうかがえます。カッコいい女性に憧れていたんでしょうね。

(音楽ナタリー 『LiSA「best day, best way」インタビューより)

◆アニソンが苦手な人でも、すんなり聴けるわけ

 だからでしょうか、“アニソン”と聞いて身構えていた筆者でしたが、「紅蓮華」を初めて耳にしたとき、案外すんなり聞けたことに驚きました。表現は難しいのですが、いつもなら声優的なクセの強さに警戒するところ、LiSAのボーカルが、思いのほかニュートラルだったからです。

 たとえば水樹奈々(40)の歌が流れると、その瞬間にジャンルの壁みたいなものが発動するのですね。特有のしゃくりとか、見栄の切り方とか、様式美の世界があって、どこか一見さんお断りのような雰囲気が漂う。もちろん、それ自体が悪いのではなく、ひとつの業態として、クオリティを誇っているのだと思います。

 けれども、LiSAの歌は、筆者のような門外漢でも違和感なく聴き通すことができました。ド派手な衣装やメイクから、バッキバキにキャラ立ちしたボーカルなのかと思いきや、滑舌の良い素直な歌が聞こえてくる。声のアタックは強いのだけど、ナレーションみたいに聞く人の邪魔をせず、ちょうどいい塩梅(あんばい)。

 キンキンしそうな高音も、意外と太い音なので、あまり辛くならない。そんなこんなで、曲もよく感じてきた。ボーカルが悪目立ちするのではなく、音楽の中で節度を保って活きているのですね。見た目やアレンジは挑発的なのに、実はフレンドリーな歌声で、なんか不思議な気分にもなりました。

◆劇場版の「炎」にみる、ちょうどいい距離感

 そして、今回の「炎」は、ガラッと変わってバラード。こちらも、表情は情感たっぷりなのに、歌はそれにつられていない。“世界観”という悪しきワードにとらわれてしまいそうなところを、LiSAの寸止め力によって逃れている。ボーカル、曲、聞き手が、ちょうどいい距離感でつながれるのですね。

 インパクトで言えば「紅蓮華」のほうがあったのかもしれませんが、ボーカリストとしての本質は、「炎」がより伝えているのではないでしょうか。

 かぶいているようでいて、常識的。今後、アニソン以外でも、その魅力を発揮できるのか、楽しみにしたいと思います。

<文/音楽批評・石黒隆之>

【石黒隆之】

音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)

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