「富士の樹海に捨てる」と言われたサビ猫・海虎が、幸せな老猫になるまで

「富士の樹海に捨てる」と言われたサビ猫・海虎が、幸せな老猫になるまで

春凪勇魚さん宅の、海虎(かいと)ちゃん

【○○さん家の猫がかわいすぎる Vol.27】

 超がつくほどの甘えん坊で、帰宅したら必ず鳴き、お腹を見せて“お帰りアピール”をしてくれる海虎(かいと)ちゃんは、春凪勇魚さん(@WhaleS_cbr250)の優しさによって命を救われた保護猫。

 その命は一歩間違えば、富士の樹海で絶えていました。

◆「樹海に捨てる」と言われた子猫を引き取って

 海虎ちゃんとの出会いは、突然でした。ある日、留学中のお姉さんから「猫を飼わない?」とメールが。聞けば、親友の甥が小学校の帰りに捨てられていた子猫を保護。しかし、家では飼うことは難しく、「飼える人がいないなら、富士の樹海に捨てる」と親に言われてしまい、猫好きの姉に相談がきたのでした。

 当時、春凪さんは老フェレットと暮らしていたため、ネットなどで猫との相性を検索。子猫のうちなら仲良くなれるかもしれないと思い、前向きに子猫の迎え入れを検討していきました。

「基本的にフェレットは外出時には安全第一でケージ飼育だったので、万が一のこともないだろうと思いました」

 それに、なによりも春凪さんの胸に刺さったのは、「樹海に捨てる」という残酷な言葉。

「子どもだって、助けようとした猫を捨てると言われたら悲しい。こんな小さな子が1匹で生きていけるわけがないので、未来がなくなってしまう選択だなと。簡単に捨てると言う選択肢が思い浮かぶことが悲しかったです」

 検討した結果、春凪さんは子猫の迎え入れを決意。こうしてやってきたのが、目が開いたばかりの海虎ちゃんでした。

◆いつか来る「その時」はそばで命を看取りたい

 実は春凪さん、もともと実家で親子猫を飼っていたことがあったため、猫と暮らすことに対して、不安はありませんでした。

「家では出産に立ち合ったり、学生時代に目も開いていない子猫を保護して世話をしたりしたこともありました」

 そんな春凪さんの愛情を受け、海虎ちゃんはすくすくと成長。個性も徐々に表れてきました。

「ふわふわな猫じゃらしが大好きで、遊んでほしい時には鳴きながら咥えて持ってきて、それを投げると、また持ってくる。犬なのかなと思います」

◆海虎ちゃんの愛くるしい仕草の数々

 また、トイレをしたらすぐ「片付けて」と鳴いたり、こたつに入ると上手に布団を手で巻き込み、自分の寝床を作ったりするというユニークな一面も見せてくれました。

「ウェットフードを食べるのが苦手で、具材のあるスープも具は残します。猫缶も汁だけ舐めて、カサカサになるまで放置です」

 マイペースに歳を重ね、海虎ちゃんは今年14歳に。老猫といわれる年齢になりましたが、甘えたい時やお腹が空いた時には昔と変わらず春凪さんの耳たぶを舐めます。

「この行動は、私にしかしません。すごく愛おしい」

◆年老いていく姿に、飼い主が思うこと

 ただ、だんだん老いていく愛猫の姿を見て、頭に「別れの時」が浮かぶこともあります。

「実家で暮らしていた子は離れている間に旅立ちましたし、海虎と共に飼っていたうぅは12歳の時に癌で亡くなりました」

 うぅちゃんは、春凪さんが仕事中に亡くなったため、最期の瞬間を看取ったのは海虎ちゃんでした。

「そんなこんなで、実は最期の瞬間を看取ったことがないので、少し不安はあります。うぅが亡くなった時には海虎がいたから立ち直れた部分もありましたし……。海虎は今、糖尿病の治療をしていますが、どうか他の病気にかかることなく、いつまでも元気でいて欲しい。少しでも長生きしてほしいです」

 できることなら今度こそ、そばにいて最期を看取りたい――。個性的でかわいいサビ柄を愛でながら春凪さんはそう思い、限られた時間を大切に過ごしています。

◆猫が本当に幸せになれる「保護」とは?

 海虎ちゃんを迎えたことで春凪さんは、猫を保護することの意味を深く考えるようにもなりました。

 実は海虎ちゃんは家族以外には人見知りで、他猫のこともあまり好きではありません。先住猫のうぅちゃんとは幸いにもすぐに打ち解けてくれたものの、一度、子猫を保護した時には鳴きすぎて声がかすれてしまうほど。餌も水も摂らず隠れながら唸っていたため、お迎えを断念したことがありました。

「我が家で飼おうと思って保護したけれど、完全に拒否。先住猫を優先すべきだと思ったので、子猫は幸せにしてくれる里親さんに託しました」

 この一件以来、春凪さんは“猫が本当に幸せになれる保護”をしようと考えるように。

「保護したら、暖かい寝床はあるし毎日ご飯に困ることもないけれど、もし親兄弟がいる場合は急に引き離すのはどうなのかなとも思ったりします。ヒトのエゴとか、何が正解か、とかを考えるようにもなりました」

 もちろん、命の危険があるのならば保護したいし、猫は産まれるところが選べないからこそ、縁があった子は最期を迎えるまで、のんびり健康に過ごしてほしい。だからこそ、手を出す時は自分自身で最後まで幸せに出来る・責任を取れるか考えなければならない。そんな春凪さんの言葉は、猫という動物をどう見守っていけばいいのか考えるきっかけになります。

 保護猫文化が根付き始めた今こそ、私たちはひとつの命と、もっと真摯に向き合う必要があります。看取る責任をしっかりと全うすること。それは私たち飼い主にしかできない、一番の猫孝行です。

<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>

【古川諭香】

愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291

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