絶叫!紙吹雪!女性たちが熱狂する映画『バーフバリ』をもう観た?

絶叫!紙吹雪!女性たちが熱狂する映画『バーフバリ』をもう観た?

『バーフバリ 王の凱旋 <完全版>』(現在、新宿ピカデリーほか公開中)より(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.



「バーフバリ! ジャイホー!!」

 この言葉を叫ぶと、力と希望が漲(みなぎ)ってくる――。いま、熱狂する女性が続出しているインド映画『バーフバリ』をご存知でしょうか。

◆公開から半年以上たっても人気は衰えず、前代未聞のロングラン

『バーフバリ』とはインドの古代王国マヒシュマティを舞台とし、英雄バーフバリ親子2代の物語を描いた映画。テルグ語・タミル語で撮影され、『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ 王の凱旋』の2部作から構成されます。

 1作目の『伝説誕生』は2015年7月にインドで公開され、インドの歴代興行収入の最高額を記録。日本では2017年4月に公開されました。2017年4月に2作目の『王の凱旋』がインドで公開。追って2017年12月に『王の凱旋』インターナショナル版が日本でも公開、それが好評だったために2018年6月にノーカットの『王の凱旋<完全版>』が公開されました(8月18日現在も、新宿ピカデリーほかで上映中)。

 ただ息が長いだけでなく、月日を追うごとに熱狂的な“マヒシュマティの民”が生まれているのです。

◆『バーフバリ』の最大の魅力は、多彩な登場人物

 この作品はとにかく登場人物が魅力的で、主人公のマヘンドラ・バーフバリ(息子)とアマレンドラ・バーフバリ(父)は無敵です。冷静に見ると「ちょっとそれは無理なのでは?」と思ってしまいそうな現実離れした行動も多々ありますが、それを打ち消すほどの力強い体と心を持つバーフバリ親子。

 特にアマレンドラ・バーフバリは、他者への尊厳・優しさ・愛国心にユーモアまで持ち合わせ、これ以上尊いお方はいないのではないかと思える、我らが王です。敵役のバラーラデーヴァの強さと執念深さも並みではありません。何が彼をそこまで突き動かすのか、考えずにはいられません。

 アマレンドラの妻、王妃デーヴァセーナの高潔な精神は、彼女の美しさをさらに際立たせます。しかも戦闘においても、ものすごく強い。可愛さ爆発のダンスシーンは、『王の凱旋<完全版>』でしかお目にかかれないので要注意です。国母シヴァガミの目力は夢に出てきます。あんなに感情の溢れる目は、そうそうないのではないでしょうか。

 そんな中、『王の凱旋』に出てくるクマラ・ヴァルマのかわいさ・優しさは物語の“癒し”と言ってよいでしょう。伝説級に強い登場人物がひしめく中、クマラは小心者のくせに見栄っぱり。そのクマラがアマレンドラとの出会いによって勇敢になっていき、かつ最後まで変わらず優しくあるのです。

◆日本で人気のクマラ役、スッバラージュさんが来日、民が歓喜

 日本では、このクマラの人気が非常に高いのです。そして今年6月末、ついに民の願いが届いたのか、クマラ役のスッバラージュさんが来日しました。

 スッバラージュさんは舞台挨拶で「3〜4か月前から私のツイッターに日本人のフォロワーが増えだして、不思議に思っていたんです。そうしたところ、監督とプロデューサーから『日本ではクマラがとても人気がある』と聞いて驚きました。今日ここにきてそれがよくわかりました。みなさんに会うために、初めて日本に来ました」と、涙をにじませながら喜びをあらわしていました。

 クマラに負けず劣らず、優しく誠実なスッバラージュさん。チネチッタ川崎での舞台挨拶では客席の隅々まで歩き、全国から駆けつけた民と握手を交わしていました。

 スッバラージュさんと握手を交わしたファンの女性Cさんは「あのクマラが微笑みながら歩いてくる姿が忘れられません。今日からクンタラ王国(クマラやデーヴァセーナの生まれ育った国)の民になります」と感動に手を震わせていました。

◆発声や鳴り物OKの「絶叫上映」「マサラ上映」に中毒者が続出

『バーフバリ』のファンは繰り返し見ている人が多く、その多くは女性。ファンの女性Sさんは合計17回、3日連続で見たこともあるというツワモノで、『バーフバリ』の魅力についてこう語っています。

「こんなにジャンルをフルシカトした映画、人生で初めてでした。意味がわからない。楽しい! 強い! 強烈! 感動、興奮、高揚感、爽快感がエンドレスで続くので、毎回3時間のバーフバリワールドへ旅行に行くといった感覚です。

 上映終了後、観客のほとんどが我慢できない様子で興奮気味に感想を語り合っています。黙って静かに余韻を噛み締めて帰るなんて無理な映画なんです。『絶叫上映』では、5分に1回くらいのペースで見せ場がやってきて、どんどん上がっていくテンションをその場で声に出して、音に乗せて発散できるのが楽しいです!」

 この「絶叫上映」や「マサラ上映」というのも『バーフバリ』の楽しみ方のひとつ。上映中の発声や、タンバリンなど鳴り物の使用が可能で、サイリウムの使用がOKな場合も多々あります。「マサラ上映」はさらに自由度が高く、紙吹雪を撒いたりクラッカーを鳴らしたりしてもOKという映画館も(禁止事項はそれぞれ違うので、各映画館にご確認を)。これを一度経験すると、通常上映でもつい大声で王を称えたくなるなど、中毒症状を起こす人が多いのです。

『バーフバリ』の絶叫上映やマサラ上映では、登場人物や国を称えるシーンではテルグ語の掛け声も飛び交います。またインド映画特有の歌って踊るシーンでは、一緒に歌を口ずさみ、タンバリンなどを思い思いに鳴らす民が続出! 初参加の民にタンバリンを貸してくれるベテラン民が現れることも。

 また、登場人物やシーンによってテーマカラーが決まっていて、コンサート会場さながらにサイリウムが揺れて幻想的です。戦闘シーンでは、真っ赤に光るサイリウムが兵士の集団のよう。しかし必ずしも声を出したりサイリウムを振ったりする必要もなく、静かにそれらを眺めるという楽しみ方もあるのでご安心を。

 絶叫上映やマサラ上映については、参加型上映を企画運営する任意団体のV8J絶叫上映企画チーム(@V8Japan)がツイッターで情報発信をしているので、気になる方は要チェックです。

◆『バーフバリ』人気はさらに盛り上がり、漫画化・アニメ化も

 勢いのおさまらない『バーフバリ』人気は、漫画化という形にも発展しました。『バーフバリ〜王の凱旋〜』(幻冬舎コミックス)が6月24日に発売されたのです。作者の深谷さんに話を伺いました。

――今回、どのような経緯で深谷さんに作画の依頼がきたのでしょうか。

深谷陽:以前から仕事をしていた、幻冬舎コミックスの編集者からお声かけいただきました。その時、たまたま個展をしていた原宿のカフェに在廊中で、幻冬舎コミックスの編集部から近かったんです。通常だったら後日打ち合わせとなるところを、その場で即詳細を聞けて、「縁があるのかな」なんて話していました。

――登場人物の中で、好きなキャラクターはいますか?

深谷:2人のバーフバリをはじめとして描き甲斐のあるキャラばかりですが、性格や行動を含めて1人選ぶなら、クマラ・ヴァルマです。

――『バーフバリ』の漫画を描いていて、たいへんだったことや楽しかったことを教えてください。

深谷:キャラクターも、ストーリーや場面展開も、描いていて楽しい要素ばかりでした。たいへんだったのは何といっても、制作期間の短さです。絵を描く時間はもちろんですが、コマ割りや構成にも時間があれば、もっとページ数を使えたのでそこが残念です。

 この漫画の発売後、『バーフバリ』の映画監督S.S.ラージャマウリさん(@ssrajamouli)がこうツイートしています。

「バーフバリの漫画という、新しい映画『バーフバリ』の世界の広がりに興奮しています。私たちはずっと日本のファンの愛に圧倒され続けています。日本の『バーフバリ』ファンの方々が、漫画作品も愛してくれることを願っております」(英語原文を訳したもの)

 さらに、7月25日にはアニメDVD『バーフバリ 失われた伝説』が発売されました。9月26日には同アニメDVDの「シーズン2」「シーズン3」も発売予定。11月28日には『伝説誕生』と『王の凱旋』の劇中歌やBGMを収録したサントラCDの発売も予定されています。

◆『バーフバリ』の原点と言われる映画が8月31日に公開

 こうした空前絶後の『バーフバリ』人気を受けて、ラージャマウリさんが監督をつとめ2009年にインドで公開された、『バーフバリ』の原点と言われる『マガディーラ 勇者転生』が、8月31日から日本で上映されることが決定しました。今年4月に来日して日本のファンに感動したラージャマウリ監督が、帰国後再編集した「ディレクターズ・カット国際版」で、すでにSNSでは盛り上がりを見せています。

『バーフバリ』を見てインド旅行を計画したり、インドの神話や言語にも興味を持ったりという人が増えているようです。ファンの一人、Tさんは「『バーフバリ』を見て、インドの女性のように黒髪で前髪が長い髪型や濃い目のメイクに惹かれるようになりました」と語ります。

「アマレンドラの正義や徳から学ぶことが多いです。民を救い、人を疑わず、人の弱さを受け入れて赦す器の大きさと強さを持っています。そして、相手が誰であれ正義のもとにハッキリと『NO』と言える姿勢に感銘を受けました。正義に反する行動に対しては『NO』と言いつつも、その相手に対する憎しみや邪念は持たない姿を見て、私もそのような人間になりたいと思いました」(Tさん)

『バーフバリ』は娯楽の域を超え、文化やものの考え方にまで影響を及ぼしているようです。巷では「『バーフバリ』を観た後は元気がでる、お肌の調子がいい」「『バーフバリ』はビタミン剤みたいなもの。体調が良くなるし、よく眠れる」などと、健康面や精神面でのプラス効果があるという声も。「バーフバリ健康法」という言葉まで生まれています。

 1作目の公開から16か月経過してもなお燃え盛る『バーフバリ』人気。8〜9月もまだまだ、全国各地の映画館で上映される予定です。まだ観ていないという方は、一度だまされたと思って観に行ってみてください。きっと、今までなぜに観にいかなかったのかと思うはずです。そして思う存分、あれもこれも称えてきてください。

「バーフバリ! ジャイホー!!」

<取材・文・撮影/鈴木麦(フリーライター、古代史・老舗企業研究)>

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