その教育、本当に子どものため?虐待死の理由、2位は“しつけ”

その教育、本当に子どものため?虐待死の理由、2位は“しつけ”

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 コーチが選手にビンタをする、学校で先生が生徒を殴るーー。こういったニュースが流れるたび、批判の声と同時に、「昔は殴るなんて普通だった。今は体罰にうるさすぎる」といった一部の声があがります。でも本当でしょうか?

 実は今でも教育現場で横行している、“指導”の名を借りた暴力・虐待について、臨床心理士でIFF CIAP相談室セラピストの木附千晶さんが、社会・心理学視点から分析します(以下、木附さんの寄稿)。

◆目に見えない暴力も、子どもに深い傷を負わせる

 前回の記事では、柔道部員らに体罰を繰り返し不登校に追い込んだ兵庫県神戸市の中学校教師(37歳)が、「けがをさせない程度なら体罰が容認されると思っていた」と神戸市教育委員会に説明したという記事(『東京新聞』、2018年9月13日)を紹介しました。

 さらに記事を読んで驚いたのは、この教師が、教えたことを覚えていなかった生徒にメモを取るよう指示した際、「僕は記憶が弱い可能性があります」などと書かせたり、生徒の保護者には「障害があるかもしれないので病院で診てもらった方がいい」と電話したりしていたという点です。

 殴ったり、蹴ったりという、目に見える、分かりやすいものだけが暴力ではありません。ときに精神的な傷のほうが、将来にわたって取り返しのつかないほどの深傷を負わせることもあります。

 ところがこの教師には、「自分の言動が生徒を傷つけているかもしれない」という迷いはまったく感じられません。それどころか、「自分は正しいことをしている」と思い込んでいた節があります。

◆子どもの人格を踏みにじる、悪質な“指導”や“しつけ”

 最近、相談や取材を通して、前回紹介した教師の例のように、善意の仮面をかぶった“指導”や“しつけ”のエピソードを耳にすることが増えたような気がしています。たとえば次のようなものです。

「自ら周囲に声をかけることが苦手な子どもが『積極的になれるように』と、周りの子どもたちに対して『その子に声をかけないように』と言った」

「クラス全員が正解するまで、休み時間返上で勉強をさせ続けた」

「動きが遅い子が、みんなと同じように動けるよう、ストップウォッチでタイムを計って行動させた」

「忘れ物をするたびに、他の子たちとは離れた“ぼっち席”に移動させた」

 こうした不適切な“指導”が子どもを追い詰め、死へと追いやることもあり、教育現場では「指導死」という言葉が定着しつつあります(『東京新聞』2017年1月20日)。

 それにもかかわらず、子どもの人格や自尊心を踏みにじる行為を教育だと勘違いする教育関係者はけっして少なくないように感じます。

◆教育現場だけではない。家庭での不適切な養育とは

 それは親も同じです。今年3月、東京都目黒区で5歳の女児が「言うことを聞かないので水のシャワーをかけてから殴った」(父親・33歳)ことにより死亡した虐待事件は、記憶に新しいのではないでしょうか。

 逮捕後、父親は「これまでもしつけでたたいたことはある」と供述し、報道によると、女児は自ら目覚まし時計をセットして毎朝午前4時ごろに起床。室内灯もなく、薄暗い部屋でひとり、父親に命じられて平仮名を練習をしていたそうです。

 事件後に見つかった女児のノートには「きょうよりもっともっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるしてください」などと書かれていました。この報道に衝撃を覚えた方も多いことでしょう。

◆子どもの虐待死、理由の2位は「しつけのつもり」

 ところが一方で、子育て中の親の約7割は体罰の経験があり、おとなの6割が「しつけ」のためとして子どもへの体罰を容認するというセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンによる調査結果もあります(『朝日新聞』2018年2月16日)。

 また、厚生労働省によると、04年1月〜16年3月に虐待死した計653人の子どものうち、81人(12%)の主な虐待理由は「しつけのつもり」で、理由が明らかなケースの中では2番目に多かったといいます。3歳以上に限れば09年4月以降、「しつけ」で27人(28%)が死亡していて、最も多いというのです(『朝日新聞』2018年6月27日)。

 親の期待を押しつけて何かを教え込もうとしたり、親の理不尽な行為を「しつけ」と正当化する「教育虐待」は、早期教育や受験競争が過熱する昨今、どこの家庭でも起こり得ることです。

 たとえ子どもの将来を思い、励ますつもりであったとしても、他の子と比べたり、過度に高い要求を突きつけて、結果として子どもに「自分はダメな子だ」とか、「期待に添えなければ自分には価値がない」と思わせることは、子どもの成長・発達に明らかな害をもたらします。

 子どもはおとなの所有物ではありません。おとなの思い通りにいじくり回し、力づくでおとなにとって都合のいい人間へと育てあげようとすることは、紛れもない不適切な養育であり、体罰なのです。

<文/木附千晶>

【木附千晶プロフィール】

臨床心理士。IFF CIAP相談室セラピスト。子どもと家族をめぐる問題を中心に社会・心理学視点から臨床・執筆活動を行う。子どもの権利のための国際NGO DCI(Defence for Children International)日本で運営委員、子どもの権利オンブズマン委員および『子どもの権利モニター』編集長を務める。

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