ドラマ『黄昏流星群』に見る男の弱さ。夫が左遷された時、妻はどう反応すべき?

ドラマ『黄昏流星群』に見る男の弱さ。夫が左遷された時、妻はどう反応すべき?

フジテレビ木曜劇場『黄昏流星群〜人生折り返し、恋をした〜』※FOD公式サイトよりhttp://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4f78/



<亀山早苗の不倫時評――ドラマ『黄昏流星群』の巻>

 人生の折り返し地点で、“運命の人”に出会ってしまった――佐々木蔵之介、中山美穂、黒木瞳の豪華キャストで話題のドラマ『黄昏流星群』(たそがれりゅうせいぐん、フジテレビ、木曜夜10時〜)が始まりました。

 背負うものがある“黄昏世代”の恋愛を描いた本作を、男女関係・不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)

◆出世頭の銀行員に、とつぜん降りかかった災難

 主人公の瀧沢 完治(佐々木蔵之介)は勤続28年の銀行員で、妻・真璃子(中山美穂)と娘との3人暮らし。近いうち幹部になると自他ともに認めているエリート行員である。ところが自分を買ってくれていた常務がパワハラで失脚。他の役員から出向を打診される。山が好きだった彼は、休暇をとって翌日からひとりでスイスへ。家族には出張と偽っていた。

 スイスで出会うのが目黒 栞(黒木瞳)だ。互いに名前も知らないままに惹かれ合う。ホテルが同じだったことから一緒に夕食をとるが、家族にも言えなかった「左遷されました」という言葉を、彼女にはさらりと言えてしまう自分に驚く。その後、部屋で飲み直そうと誘い、キスをしてしまうが……。

 ドラマ第1話から、どこかいびつな夫婦関係が描かれている。娘は父が部下からネクタイをもらったことを知り、「コレは女の人が選んだんだよね」と不穏な発言をする。その言葉に反応する真璃子だが、夫を問いつめたりはしない。そんな母親に「おかあさんは、どうしておとうさんに遠慮ばかりしてるの? それって自分がラクだからよね」と言い放つ。

 波風立てたくない。プライドを傷つけられたくない。夫はそれがゆえに妻に出向を告げられず、妻はそれがゆえに夫の心に一歩踏み込めない。「ラクをしたい」は若い娘がもつ男女関係への正義感なのかもしれない。

◆大事なことほど、妻には言えない?

 かつて、リストラされた夫とその妻たちの話を聞いたことがある。ドラマの出向よりさらに深刻な事態だ。多くの夫たちは、妻に「リストラされた」と言えずにいた。中には、次の給料日まで言えず、毎日、妻の作ってくれたお弁当をもって図書館やら公園やらで時間をつぶしている男性もいた。

「妻に心配かけたくない」

 その言葉の裏にあるのは、自分の弱みを見せたくないということでもある。夫というものは、無意識のうちに「妻より上であること」を望み、そう思うことで安心しているような気がする。妻もまた、男はそういうプライドの上に男であり続けようとしているのを知っているから、夫の様子がおかしいと思っても踏み込んで聞こうとしないのだろう。

 リストラは、それまでの夫婦関係を見きわめる“試験”のような出来事である。夫が会社で不要だと言われたことを、妻がどう受け止めるか。

 ドラマの完治も出向を告げられたとき、「なぜだ、なぜだ」と机を叩く。リストラも同じだ。「なぜ、オレなんだ」と全員が思う。そして会社のためにがんばってきた年月を思い、自分が否定されたと絶望に陥るのだ。

 ある男性は、リストラを告げられたとき、すぐに会社から妻に電話をして正直に話した。妻は「なぜ、あなたが?」と言った。その思いが自分と同じだったため、夫は自身の尊厳を失わずにすんだそうだ。

 別の男性は、なかなか妻に言えなかったが、あるとき思い切って話した。すると妻は冷ややかな目で夫を見ながら、「私と子どもたちの生活はどうなるの?」と言ったそうだ。それを聞いて、夫は離婚を決意したという。

◆会社から突き放された時、自分を丸々否定されたように感じる

 リストラや出向というのは、男にとって自分を否定されたことにつながる。会社人間としては否定されたのかもしれないが、社会人として、ひとりの人間として否定されたわけではないはずだ。だがある意味で会社に依存してきた彼らは、自己否定と敗者の惨めさを味わわざるを得ない。そうやって生きてきてしまったのだ。すぐに価値観は変えられない。「終わりの始まり」を彼らがきちんと意識したとき、夫婦関係も生まれ変わる可能性はある。

 ドラマを観て、「そうやって落ち込んだとき、どうして男は不倫に逃げるのか」と思う女性も少なくないだろう。自己評価が下がったとき、男の心を癒やしてくれるのは生活をともにしていない、利害関係のない女性の笑顔なのかもしれない。それがいいとか悪いとかいうつもりはない。初めて人生を否定されたときに、空っぽの心に入り込んでくるのは人間が根源的にもっている「他者に受け入れてもらいたい欲求」、つまり恋なのではないだろうか。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数

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