「猥談バー」に集う男性はみんな爽やか。猥談は癒しかもしれない|辛酸なめ子

「猥談バー」に集う男性はみんな爽やか。猥談は癒しかもしれない|辛酸なめ子

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【いまどきの男を知る会 ファイルNo.14 猥談バーの男性客】

 先日、都心のカフェで、隣の席の会社帰りの若い男子たちから聞こえてきた会話。

「最近楽しかったことは?」

「セックスで2回イッたこと」

「30分ずっとギンギンでギネス認定員がいたら載ったと思うよ」

 チラっと見たら、草食っぽいメガネ男子でしたが……。無邪気な猥談に老婆心が和みます。

 カフェで、街角で、見た目が草食系な男子がエロトークをしているシーンに時々遭遇します。時代が変わっても、猥談の魅力は普遍的なのかもしれません……。

◆猥談を楽しく話せる「猥談バー」に行ってみた

 そんな猥談のポテンシャルに目を付けた、やり手の男子が佐伯ポインティさんです。「エロデューサー」を名乗り、クラウドファンディングを利用して資金を調達。25歳の若さで猥談を楽しく話せる会員制バー「猥談バー」をオープンしました。たちまち毎晩客が絶えない人気店になったそのバーを訪れてみました。※猥談バーは会員制のため、場所は会員以外の人には非公開となっています。

 椅子と壁が赤くムーディで、適度に視床下部を刺激する店内。初対面の佐伯ポインティさんは、知性と無邪気さが入り交じったおしゃれ男子。猥談バーを主催しているのに、ギラギラしたものは感じられません。毎晩の猥談で、色欲を発散しているのでしょうか。

「猥談の機会はそれまではそんなになかったです。飲み会の2時間の中で15分、サビ部分みたいな感じでした。わざわざエロい話しようって集まらないじゃないですか。猥談バーならサビ部分だけを自然な流れで楽しめるんです」

 と、ポインティさん談。飲み会でどうでもいい雑談をするくらいなら、猥談に特化したいという合理的なプラン。ネットで必要な情報を取捨選択できる情強世代ならではの発想かもしれません。

◆「“おもしろくないめ”のエロの人は入れたくない」

「以前は、月一で10ヶ月くらいやってて、この場所を借りて2ヶ月目。クラスに一人はいるエロい人がエロい人を呼んでくれるんです。『友達連れてきました〜』というのが、徐々に増えていく感じ。だから、本当に猥談好きな人しか来ません」

 イベント形式でやっていた時は、混雑にまぎれてお金を払わずに帰ってしまう人が続出。

「1日100人超えた時はめっちゃ大変で、フェスの伝票書いてるみたいな感じでした。食い逃げがあったからプラマイゼロだったんです。ちゃんとやんないとなって思ってリアルの店舗を借りて会員制にしました。セクハラする人や迷惑かける人とか入れたくないので。おもしろくないめのエロの人は入れたくない」

 セクハラや、ボディタッチ、性癖の否定、連絡先を聞くなど他のお客さんを不快にする行為があったら、どんどん出禁にするそうです。実は空気が澄んでいるかもしれない猥談バー。また、想定していたのと違ったのは、孤独を埋めるために来るお客さんが結構いたという点。

「僕は居場所作りたいわけじゃないんで。おもしろい話で退屈を解消したいんです。僕自身、別に孤独じゃないんで。でも退屈なんですよ。エンタメが好きなんです。猥談ならどんな人でもおもしろいですから」

◆猥談に興奮するとおもしろさを妨げる

 最近聞いた中で印象的な猥談を伺ってみました。

「新しい東横線のボックス席で正常位したって言う27.8歳の女の子の話です。性の部分は意外とロジカルで、その子は初体験が中学生の時、校庭でみんな部活している中、制服で抱き合って対面座位したそうで、常に人に見られるのがいいらしいんです。

その時は誰にも対面座位してると気付かれなかったらしいですが。バレるかどうかの視線が欲しい。だからエレベーターとか電車とかめっちゃ範囲広いんです」

 想像するとかなりエロいですが、ポインティさんは冷静です。

「猥談を聞いても僕は興奮しません。どっちかっていうとウケるって感じ。楽しいものとかエンタメの中にエロがあるって感じなんで。興奮するのは自分に置き換えてるか、相手に矢印が向いてるか。それが聞き手の質を下げるというか、おもしろさを妨げるなって思います」

 猥談に感情移入せず適度に距離感を保つ……理性的でレベルの高い行為です。主催者がそういう立ち位置だからこそ、女性客も安心して猥談を話せるのでしょう。その日、一見まじめそうなメガネ女子が笑顔を浮かべて、男子が半勃ちでどうこうと語る猥談に聞き入っていました。

◆スクワットに催眠術…バラエティに富んだ猥談

 その夜、繰り広げられていた猥談に耳を傾けると……。

「小向美奈子似の人が、『私のスクワットに付き合ってもらおうか』って言ってきて、聞き返したら同じこと言ってきたんです。ゴムつけて乗っかられて、すげースクワットしてるって……。スクワットで果ててました。要は騎乗位。僕は動いてない。でっかい胸を俺が抱えてるって体勢」と、淡々と体験談を報告する20代男子。西川口での話だそうです。

「体幹がしっかりしてるね」と絶妙な返しをする女性店員。

 後から入ってきたスマートなメガネ男子は、性的な催眠術をかけるテクニックがあるそうです。

「大学の時に趣味で催眠術をやっていて、彼女に感度アップの催眠をかけたら、手をつないだだけでイクようになったんです。毎日かけてたら境目がなくなってガバガバ状態に。ディズニーランドで普通にデートしていたら反応おかしくなってきて、たまにピクンッてなって。絶叫マシンでひとりだけ声が違う。

催眠のエロメニューって、いろいろあるんです。バイブが入ってる気がするエアバイブとか。快感3倍っていったら3倍になる。歯止めが利かなくなるので、今の彼女にはまだかけてません」

 スマートメガネ男子にエロ催眠術に目覚めたきっかけを聞くと、「思い返すと、小5の時に体育館で寝泊まりする合宿があって、隣に好きな子が寝てたんです。その子の寝顔がめっちゃかわいいと思ったのがきっかけかも」とのこと。

 猥談を語ると、自分のことが見えてくる、そんな効果もありそうです。だんだん猥談バーが癒しの空間に思えてきました。

 不肖私も、最近友人に聞いた猥談(シャンバラの住人とSEXしたらすごい気持ち良くて、しかも身ごもったら子どもが頭頂部から生まれて宇宙に飛んで行ったというサイキックの女性の話)を猥談バーで話させていただきました。皆、性欲なしで楽しんで聞いてくださって、「愉快ですね」「夢がありますね」とナイスなリアクションをいただき、充実感に浸りました。

 ポジティブな性エネルギーが循環している空間で猥談を語り合う心地良さは、性行為に勝るのかもしれません。

<文&イラスト/辛酸なめ子>

【辛酸なめ子】

東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著者は『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)など多数。

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