有馬記念当日、馬券を買いに向かった父親が救急車で運ばれて…

有馬記念当日、馬券を買いに向かった父親が救急車で運ばれて…

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 12月23日には1年を締めくくる競馬のG1レース『有馬記念』開催日。

 ふだん、競馬に興味のない人たちも名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか?

◆父親の救急搬送の連絡で危険な状態だとカン違い

「私が有馬記念と聞いて、真っ先に思い出すのは父のこと。今から数年前の有馬記念当日、朝から大掃除をしていたら電話が鳴り、画面を見たら父からでした。しかし、電話をかけてきたのは、父ではありませんでした」

 そう話すのは、戸山美雪さん(仮名・28歳/広告代理店)。ちなみに電話の相手は救急隊員だったそうで、これから父親を救急車で搬送すること、搬送先の病院が決まったら改めて連絡する旨を告げられると、すぐに電話は切れてしまったそうです。

「駅に向かう途中、階段から転げ落ちたらしいのですが、救急車や緊急搬送というワードに加え、『ちょっと出血が多い』と言われたことでパニックになってしまい、父親が出血多量で危険な状況にあると激しく誤解してしまったんです」

 数分後、搬送先の病院が決まったと再度連絡があり、そのときに「意識はある」と聞いたそうですが、なぜかこれを“意識はあるけど、予断を許さない状況”だと勝手に解釈してしまいます。

 美雪さんはあわててタクシーに飛び乗って病院に向かいますが、車内では遠方に嫁いだ姉に「お父さんが……」と泣きながら電話。美雪さんのカン違いと説明不足によりお姉さんは、父親が危篤だと思い込んでしまいます。

◆父親から「馬券を買ってきて」とまさかの使い走り

「姉が来てくれることになり、少しホッとしました。けど、ウチは母親を早くに亡くし、自分がなんとかしなきゃとの思いもあって、父がヤバいと本気で思っていた私は、病院に着くまでの間スマホで葬儀の手配や死亡届などの手続きについて調べていました」

 しかし、これらはすべて美雪さんの早とちり。父親は右上腕を骨折、出血は転んだ拍子に腕を切ったことによるもの。手術で折れた骨をボルトでつなげるため、しばらく入院が必要とのことでしたが意識もハッキリしており、会話もまったく問題なかったとか。

「骨が折れているので痛そうにしていましたが、命に別状なかったのでここでも号泣してしまいました(苦笑)。

 そのまま入院することになったので着替えや身の回りの物を実家に取りに行かなきゃいけなかったんですけど、父が『それは後回しでいいから馬券を買ってきてくれ。頼む、今日は有馬記念なんだ』って言われたんです。こんな状況で正直ありえないと思ったけど、一応ケガ人だから言うことを聞いて病院からその足で場外馬券場に向かったんです」

◆苦労して馬券を買って戻ったら父親は…

 父親から買う馬券は指示されていましたが、美雪さんは競馬未経験。購入用のマークシートの記入方法も分からず、馬券を買うのも一苦労だったといいます。

「病院に戻ると、父親は自分の病室のあるフロアの休憩スペースでほかの患者さんたちとテレビの競馬中継を見ていました。

 手術は数日先の予定だったので、折れた部分は応急処置で固定しているだけでしたが、つい数時間前に救急車で運び込まれた人間とは思えないほど元気そうでした」

◆のんきに競馬中継を見ている父親を見ていたら怒りが……

 しかも、わざわざ娘に馬券を買いに行かせながら結果はハズレ。テレビの前で悔しそうにしている父親の姿を見て、無性に腹が立ってきたとか。

「カン違いとはいえ、こっちは数時間前には父の死も覚悟していたんです。あのときは『私の涙を返せ!』って思いましたね」

 ちなみにこのとき美雪さんの姉が病院に到着。ほかの患者さんと競馬談義で盛り上がる父親を見て、「お父さん、全然元気じゃない! 危篤ってウソだったの?」とキレ気味に言われます。

「いろいろなことがありすぎて、姉に命の別条がなかったと報告するのをすっかり忘れていたんです。これは私が悪いんですけど、このときはなぜか父に『お父さんが馬券買ってこいって言うから連絡するのを忘れちゃったじゃない!』と八つ当たり。久々の親子3人の再会で口論してしまい、看護師さんに注意されてしまいました(苦笑)」

 これで馬券がもし当たっていれば、もうけを山分けで結果オーライだったのかもしれませんが、現実はそう甘くなかったようです。

―年末年始のトンデモエピソードvol.1―

<文/トシタカマサ イラスト/ただりえこ>

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