流行を知るにはアラフォーも「渋谷109」に行くべき!? トミヤマユキコ×MB対談

流行を知るにはアラフォーも「渋谷109」に行くべき!? トミヤマユキコ×MB対談

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「グレーのパーカーの着方がわからない」「冬のタイツは『とりあえず黒』でいいのか?」「3着目のコートの選び方」など、大人の女性なら誰もが抱えるファッションの悩みにとことん真剣に向き合ったエッセイ『40歳までにオシャレになりたい!』の著者・トミヤマユキコさんと、『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論』など、オシャレの悩みを理論的に解説した著作で支持を集めるMBさん。「感覚ではなく、とことん理屈で考え抜いて法則や正解を導き出すことでオシャレを目指す」ことを重視する二人が初対談!

◆「無駄にバッグがデカい女からの卒業」

MB:『40歳までにオシャレになりたい!』を拝読して、一番印象的だったのは「ファッションの本なのに着飾ってない」ということでした。ファッション関係の人がスタイルブックを出すと、やっぱり盛りまくって着飾ってしまうんですよね。ブランディングの一環だからそれは当然なんですけど……。

 最初に明確な疑問を提示して、その疑問について、わからないことを隠さず、ゼロから取り組んで理論を構築して最終的に10にしていく。こういう本って今まで市場には存在しなかったんじゃないかと思います。

トミヤマ:ありがとうございます……プロの方に「今までになかったファッション本」と言っていただけて光栄です。着飾ってないというか、着飾れないんですよ(笑)。ファッション関係の仕事は、アルバイトも含めて何もしたことがないし、もう見栄を張っても仕方ないなと思って。

MB:たとえば「無駄にバッグがデカい女からの卒業」という章なんですけど、生活習慣でオシャレになれない人って確かにいるなって。

トミヤマ:出版関係の仕事をしている女性は、自分も含めてたいがいバッグが無駄にデカくて、いつもガサガサ何かを探しているイメージなんですよね(笑)。デカいバッグを持つと、どうしても「よっこいしょ」となるから、動きもダサくなる。

 でも、ちっちゃいバッグを持つと自然と動きもチマチマしてかわいくなるなあって。バッグを変えることで動きも変わるし、「大して必要ないのに、不安だからといろんなアイテムをバッグにぶち込んでしまう」という生活習慣も見直せるんじゃないかと気づきました。まあ、仕事の都合上どうしても大荷物になってしまう日があるのは仕方ないんですけど。

MB:いまって小さいバッグが流行っていて、巾着みたいなバッグなんかとてもかわいらしいですよね。ただ、ファッション屋にはこういう服に小さいバッグを合わせるとオシャレですよってことまでは提案できても、「荷物を少なくする訓練をしましょう」っていう、生活に基づいた提案からすることはできないなって思いました。

トミヤマ:結局、ファッションって生活の一部じゃないですか。だから、ファッションの悩みって、自分のライフスタイルの悩み、停滞、コンプレックスとも必ず繋がってくるんですよね。私自身、本の執筆を通して、体形や顔立ち、年齢的なことも含めて、さまざまなコンプレックスと向き合い、どうにか落としどころを見つけていったという感じです。

◆トレンドを勉強したいならマルキューを侮るべからず

MB:渋谷「109」で今のトレンドを勉強しようっていう話もすごくおもしろかったですし、的を射ているなと思いました。90年代以降、109が何故売り上げを伸ばしたかというと、海外ブランドのデザインを速攻で真似して安い値段で売り始めたからなんです。

トミヤマ:109に一番勢いがあった時代に10代だったので、いまだにEMODAとかMOUSSYみたいなキレイめのギャルブランドは、トレンドを押さえているし、アラフォーでも着られるデザインで、変な甘さもない。モテ服を着たいわけじゃなくて、シュッとした感じを目指したい自分にとってはすごく参考になるなと思いました。まあ、素材はZARAのほうが高く見えるから、109で勉強した後、実際に買うのはZARAだったりするんですけど(笑)。

MB:「海外ブランドのデザインをパクって安く売る」という手法で、さらにスピード感を上げて、かつ品質のいいものをZARAが出し始めたのが00年代中盤以降。だから、こうした時代の流れを考えても、109で勉強してZARAで買うというのは正しい方法なんですよ。まあ、109の人が聞いたら怒るでしょうけど(笑)。

トミヤマ:マルキューブランド出身の人がアラフォー向けに出しているブランドも勢いがありますよね。MERCURYDUOを立ち上げた方(渡辺由香氏)が手がけたELENDEEK、わたしも何着か持っていますが、ほどよくモードでアラフォーにも着やすいなって思います。

MB:やっぱり109の衝撃ってでかくて、実はいまでも若いコより30代が着てたりするんですよ。顧客が年を取ってきたし、ブランドとしても技術が蓄積されてきたから品質は良くなっている。

 さらに、トミヤマさんがおっしゃるように、いまイケてるレディースはだいたい“マルキュー上がり”なんです。EMODAのVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)をしていた黒石奈央子さんが立ち上げたAMERIvitage、同じくEMODAのプロデューサーだった松本恵奈さんが立ち上げたCLANE、dazzlinのデザイナーだった荻原桃子さんが立ち上げたUN3D.なんかがそうですね。

トミヤマ:やっぱりマルキューの力は偉大なんですね。ギャルファッションって、モードやコレクションを普段着られるかたちに解釈したスタイルでもあるし、キレイめのギャルブランドは男ウケをさほど意識していないので、「モテたい」ではなく「自分が納得できるオシャレを目指したい」という人にとっては相性がいいんでしょうね。

MB:常に流行の最先端をプライドを持って追いかけてきた力強さを感じますよね。

◆「自分が着たい服」と「他人から褒められる服」の両立

トミヤマ:私はもともと服を着るのは好きで、トンチキ……変わったデザインの服を選ぶのは得意だったんですよ。でも「おもしろい服を着ていれば、『ああ、こういう人なのね』と思われて、ファッション警察から釈放してもらえる」といった逃げが自分のなかにあったんです。

 年を重ねてきて「そろそろトンチキ服のチャンネルだけではダメなんじゃないかな〜」と思っているときに、大学教員として、学生の教育実習先に挨拶に行く機会があって。「教員として挨拶に行くのにトンチキ服しか持ってないのはマズい」となったのが、「シュッとしたコンサバ服も着こなせるようになりたい!」と強く思うようになったきっかけなんです。

MB:結局服って他人がジャッジするものですからね。自分が着たい服を着ることももちろん大事だけど、他人に褒められることで得られる自己肯定感もある。2つを両立できるのが理想ですよね。

トミヤマ:コンサバ服を着こなす訓練をする中で、主観から客観へ、考えの切り替えができるようになった気がします。それがMBさんの『幸服論』のなかでは「他人本位」という言葉で言語化されていて、めちゃくちゃ腑に落ちました。

MB:「好きな服着てればいいじゃん。何が悪いの?」っていうのはもちろんそうなんだけど、言い訳にしてほしくないなって思うんですよね。だって、他人から全然褒められないのもイヤでしょ。どっちもできる大人になれたら最高じゃない?と。

トミヤマ:本当ですね。それに、「他人本位」とか「TPOをわきまえる」って、単に自分を殺すということではないですよね。やり方次第で自分が生かされるファッションにもなりえるし、他人に認められることによる達成感もあるわけですから。 

MB:他人の目線を気にすることで、自分の可能性が広がっていくきっかけにもなる。だから、トミヤマさんが本の最後で言っていた「オシャレには終わりがない。でも、終わりがないことは希望である」っていうのもその通りだよなあって思いました。

トミヤマ:もちろん「オシャレの基本」はあると思うんですけど、トレンドも変わるし、自分の好きなものも年を重ねていけば変わっていきますよね。アラフォーくらいになると、人生はある程度既定路線に入っていくけど、ファッションではまだまだ喜怒哀楽を感じられる。これって、生きていくうえでものすごい希望になるよなあと思ったんです。(後編に続く)

●トミヤマユキコ

ライター、早稲田大学文化構想学部助教。著書に、大のパンケーキ好きが高じて著したガイド本『パンケーキ・ノート』(リトルモア)、『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(左右社、清田隆之と共著)など。いとうせいこうと星野概念の対談本『ラブという薬』(リトルモア)では構成を担当。大学では少女マンガ、サブカルチャーについての講義を担当

●MB

ファッションバイヤー、ブロガー。メンズファッションの底上げを図るべく各メディアで執筆中。“買って着て書いて”一人三役をこなす。主な著書に『最速でおしゃれに見せる方法』、『幸服論』(ともに小社刊)。企画協力したマンガ『服を着るならこんなふうに』(KADOKAWA、漫画・紺野やえ)シリーズはベストセラーに

<取材・文/牧野早菜生 撮影/福本邦洋>

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