合コンで職業を言えないデリヘル店長の苦悩。『フルーツ宅配便』の仕事論が深い

合コンで職業を言えないデリヘル店長の苦悩。『フルーツ宅配便』の仕事論が深い

(画像:「フルーツ宅配便」公式Twitterより

 ドラマ『フルーツ宅配便』(テレビ東京系、金曜24時12分〜)が、今夜第11話をむかえます。

 勤めていた会社が倒産し、ひょんなことからデリバリーヘルス「フルーツ宅配便」の雇われ店長として働くことになった主人公、咲田真一(濱田岳)。最初は嫌々働いていた咲田ですが、お店に勤務する女性たちの境遇に触れることで、店長として自分ができることを必死に模索していくのでした。

◆指名客が親友だったという地獄絵図

 デリヘルの雇われ店長として働く咲田は、同級生の小田哲郎(前野朋哉)と本橋えみ(仲里依紗)とは定期的に集まって飲むほどの気心の知れた仲です。しかし咲田もえみも小田にだけは、えみがデリヘルで働いていることを言えないままでいました。

 ところが、偶然にも小田はデリヘルのサイトでえみの写真を見つけてしまいます。小田はこのことを咲田に話し、「えみに真実を聞こう」と誘うのですが咲田は小田の誘いを拒否。えみがデリヘルで働いていることを認めたうえで、さらには自分もデリヘルで雇われ店長をしていることを告げるのでした。

 驚く小田ですが、小田は「ロックだな」と返します。小田にとって、親友の職業によって自分たちの関係性が変わることはないのです。そして、話をしていくうちに小田は咲田が勤めるデリヘルの常連客であり、かつ嬢達からかなり嫌われている有名な「地雷客」であることが発覚します。デリヘルで働いていることがバレる咲田と、地雷客であることがバレる小田。小田は「ド変態」「断ってもめげずに来る」など嬢たちの間で散々な言われようの客だったらしく、この一連のやりとりに笑ってしまいました。

 しかし、このあと小田はとんでもない行動に出ます。なんと小田は客としてホテルにえみを呼び出すのでした。

 デリヘル嬢として、ホテルの扉を開けた瞬間に小田が現れてえみは動揺します。「無理! できない!」と小田を拒むえみでしたが、とうとう観念しカバンからローションなどの商売道具を取り出すと、「シャワー浴びてきて」と小田に告げるのでした。このときの意を決したような、そして諦めきったような悲しいえみの表情になんとも言えない気持ちになりました。

 そんなえみに対し小田は「どんな過去があっても、どんな仕事をしていても友達だ。また前みたいに3人で飲もうぜ」と言い、プレイ分のお金を置いて部屋を出るのでした。

◆デリヘルで働いていることを隠す咲田の胸のうち

 咲田はその後、小田に合コンに連れて行かれます。合コンには小田と咲田のほかに、同級生で医者の井上俊哉(中島歩)も参加していました。女性陣が井上の職業に食いつき、熱心にアピールをするのですが、井上が途上国で医師として働いているということを知るやいなや、「お金にならない」「治安が悪い国で働くと妻は苦労しそう」と井上への興味を一気になくします。

 そして女性陣は咲田に興味を持つのですが、職業を問われた咲田は「人材派遣の会社に勤めている」と嘘をつくのでした。

 後味の悪い合コンの後、咲田と井上と小田は男三人でスナックにむかいます。このスナックは、グァバ(松岡依都美)というフルーツ宅配便に勤務しているデリヘル嬢がママをしているお店で、グァバはシングルマザーとして娘を育てるために、昼はフルーツ宅配便でデリヘル嬢として働き、夜はスナックのママとして働いているのでした。

 グァバの働きっぷりは圧巻で、ママとしてお客を楽しませ、セクハラ客からお店の女の子を守り、さらにはセクハラ客もうまくたしなめます。底抜けに明るく、プロフェッショナルに仕事をこなすグァバの姿を見た咲田と小田、井上は強く心を打たれるのでした。

◆自分の仕事にどこまで自分が納得しているか

「グァバ」というタイトルの今回の話は、グァバという一人のデリヘル嬢を通して、働くことの意味を考えさせられる回でした。

 グァバはシングルマザーとして娘を育てるために、もはや当たり前のこととしてたくましくデリヘルとスナックを掛け持ちして働いており、そこに迷う気持ちはありません。一方で咲田やえみは、デリヘルで働くことを自分自身では納得してはいるものの、他人には自分の職業を言えない状況でいます。

 また、医者という仕事をしている井上ですが、本人は高い志をもって途上国でボランティアに近い仕事をしていても、井上の両親や井上を結婚相手として品定めする女性の前では「お金にならない」「残念」「苦労しそう」という評価をされるのでした。

 もちろん職業に貴賎(きせん)はありません。結局、どんな仕事に従事していても、誰のために働くのか、なんのために働くのかを本人がどこまで納得をして覚悟をしているかで状況は大きく変わってくるということを改めて考えさせられました。

◆合コン女性にとうとうデリヘル勤務を告げる

 咲田は先日の合コンで知り合った女性の一人に誘われ、食事をすることになります。咲田に「今後のキャリア」を前のめりに聞いてくる女性に対して咲田は「僕、デリヘルで働いているんです。デリヘルって知ってますか?」と、とうとう自身の職業を告白します。

 デリヘルの仕事を説明し始める咲田に女性は激怒。無言でその場を立ち去るのでした。「嘘つき!」などの暴言を吐くことなく、蔑(さげす)んだ目で咲田を見る女性がなんともリアルです。

 年収や肩書き、今後のキャリアを問い詰めてくる女性にデリヘルの説明を堂々とする咲田。見ていてスッキリするシーンでした。

 この一部始終を咲田が小田に話すと、小田は「せっかくデートできたのにもったいない。なんで嘘をついてうまくやらなかったんだ」と言います。たしかに、こんなあからさまな態度をとる女性に対して、わざわざ素直に身の上話をして不快な思いをする必要もありません。それでも咲田は「デリヘルだって、どこかで誰かを救ってるかもしれない。立派な仕事だから隠すことはやめた」と告げるのでした。

 本人の覚悟もそうですが、その覚悟を受け止める人によっても評価は異なります。「デリヘルで働いている」という事実を告げても「どんな仕事をしていても友達だろ」と理解してくれる人間がまわりにいるだけで、自分の心の持ちようも大きく変わってくるのではないでしょうか。今回は地雷客・小田の底抜けに明るい演技が作品をコミカルに仕上げてくれて、見ていてとても心地よかったです。そして温かい気持ちになりました。

 母親の作った借金を返すためにデリヘル嬢として働くえみですが。勤めているお店がかなり悪どいお店のため、咲田がえみを「フルーツ宅配便」に引き抜こうとするところで話は終わります。次回、えみと咲田の動向に注目が集まります。

<文/瀧戸詠未>

【瀧戸詠未】
ライター/編集者。趣味は食べ歩き・飲み歩き。

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