朝ドラ『なつぞら』の草刈正雄が“おんじ”と大人気、刺さるセリフを連発

朝ドラ『なつぞら』の草刈正雄が“おんじ”と大人気、刺さるセリフを連発

(画像:『なつぞら』公式サイトより)

 大きな期待を背負って4月1日にスタートしたNHK連続テレビ小説『なつぞら』。朝ドラ100作目であり、広瀬すずが主演することなども含めて、前作『まんぷく』を飛び越えて発表されていたほどの異例の力の入れようです。

◆イケメンだらけの『なつぞら』だけど…草刈正雄が圧勝?

 歴代朝ドラヒロインが多数登場することは、「ヒロイン祭り」とネット上で言われています。さらに、注目されていたのは、岡田将生、吉沢亮、山田裕貴、清原翔、犬飼貴丈、戸次重幸、さらに育ての父親役の藤木直人にいたるまで、「イケメンだらけ」ということ。

 しかし、第一週目はまだほとんどが登場していないとはいえ、すでに「イケメン枠は、草刈正雄だけで十分! 正雄、優勝!」と思った視聴者も結構いたのではないでしょうか。
 整った顔で優しく小綺麗なイケメン藤木パパも良いですが、草刈正雄(66)のバタくささ+渋甘具合は、最高です。

 東京大空襲で母を亡くし、父は戦死して、兄妹と残されたヒロイン・なつ(粟野咲莉)は、父の戦友・剛男(藤木直人)に連れられて柴田家にやってきます。
 草刈正雄は、剛男の義父で酪農家の泰樹を演じていますが、ヒゲヅラとボロボロの衣服に帽子姿は、西洋の児童文学的ルックス。北海道の景色も、厳しくもあたたかい役柄も『赤毛のアン』のマシューとマリラを思わせます。と思ったら、ネット上では『アルプスの少女ハイジ』の「おんじ」と呼ばれていました。

◆「それでこそ赤の他人じゃ!」など名言を連発

 このおんじのかっこよさは、最初から、なつを子どもではなく「一人前の人間」として扱っていることです。

 第一話ではなつをひきとるという剛男に「可哀相だからって、犬猫みたいに拾ってくる奴があるか」と言い、厳しい印象を与えていました。また、働かせてくれと自ら言いだしたなつに対し、「えらい! いいんでないかい、ここで働いてもらうべ」と言い、さらにこう言い放ちます。
「ええ覚悟じゃ。それでこそ赤の他人じゃ!」

「それでこそ」と「赤の他人」という言葉がつなげて使われるのを初めて聞きました。ちょっと驚き、噴き出しそうにもなりましたが、実はこれ、とっても良い言葉です。

 なつはまだ子どもですから、他人の施しを受けて生きていくことが重荷になるトシではないかもしれません。でも、ただ感謝して生きていくことで、申し訳なさや後ろめたさを感じる可能性は大きく、徐々に大人の顔色をうかがうようになったり、媚びるようになったり、卑屈になったりする可能性もあります。

◆ひとがなんとかしてくれると思うな

 そして、その思いが4日放送分で、一緒にアイスクリームを食べるときに、はっきりと語られることになります。

「それは、お前が絞った牛乳から生まれたものだ。よく味わえ。ちゃんと働けば、必ずいつか報われる日がくる。報われなければ、働き方が悪いか、働かせる者が悪いんだ。とっとと逃げ出しゃいいんだ。だが、一番悪いのは、ひとがなんとかしてくれると思って生きることじゃ。ひとはひとを当てにする者を助けたりはせん。逆に、自分の力を信じて働いていれば、きっと誰かが助けてくれるものだ」

 このセリフが刺さった「働く人たち」は実は少なくないはず。経済が頭打ちで停滞している今の世の中では、真面目に働いていても「報われない」「搾取されている」と感じる人は、どの業種にも多いことでしょう。「そうだ、働かせる者が悪いんだ」と、つい思ってしまいそうです。

◆ちゃんと働いて、誇りを持って生きること

 それはさておき。おんじは、さらにこんな言葉で労(ねぎら)います。
「お前はこの数日、ほんとによく働いた。そのアイスクリームは、お前の力で得たものだ。お前なら大丈夫だ。だからもう、無理に笑うことはない。謝ることもない。お前は堂々とここで生きろ。良いな」

 おんじが伝えたかったのは、甘えたり、媚びたり、怯えたり、他人の顔色をうかがったりすることなく、「誇りを持って生きること」でした。そして、誇りを持つために誰でもできることは「ちゃんと働くこと」なのです。

 ちなみに、これは『ちりとてちん』の若狭塗箸職人である喜代美のおじいちゃん(米倉斉加年)のセリフを思い出させるものでもありました。

「人間も箸と同じや。磨いて出てくるのは、この塗り重ねたものだけや。一生懸命生きてさえおったら、悩んだことも、落ち込んだことも、綺麗な模様になって出てくる。お前のなりたいものになれる」
「おかしな人間が一生懸命生きてる姿は、ほんまにおもろい。落語と同じや」
「お前はこれからぎょうさん笑え。1回きりの人生や。ぎょうさん笑うたほうがええ。愉快なときは笑たらええ」

 朝ドラでは、『ちゅらさん』のおばあを頂点として、『ごちそうさん』『半分、青い。』など、死後にナレーションをするパターンも含めて、おばあさんが活躍する物語が多いもの。
 おばあさんに比べると、少々影が薄くなりがちですが、本作での「おじいちゃん」の存在はとにかく激アツ。この傾向は、今後の朝ドラの一つのトレンドになるかもしれません。

<文/田幸和歌子>

【田幸和歌子】
ライター。特にドラマに詳しく、著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』など

関連記事(外部サイト)