一世帯で年6万円の食べ物を捨てている…コンビニや外食のロス処分にも税金1兆円が

一世帯で年6万円の食べ物を捨てている…コンビニや外食のロス処分にも税金1兆円が

食品リサイクル工場に運ばれてきた、恵方巻きの残がい(2019年2月、井出留美さん撮影)

 5月17日、セブン-イレブン・ジャパンとローソンが、消費期限が近い弁当やおにぎりなどを買った顧客に対し、5%のポイント還元をすると発表しました。この程度で効果があるのかは別として、「食品ロス」がいま社会問題になっていることは間違いありません。

 また、5月24日には、食品ロス削減法が参院で可決され成立しました。

 コンビニで店員さんが廃棄食品をカゴに投げ入れる姿を見て、「もったいないなぁ」とは思う…けれど、どこか他人事だったりもしますよね。

 ところが、食品ロスで私たちが直接、お金を失っているとしたら? 『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』の著者で、食品ロス問題に長年取り組んでいる井出留美さんに取材しました。

◆1世帯で年6万円の食品を捨てている

――食品ロスというのは、本当は食べることができたのに捨てられてしまうことですよね。実際、どれくらいが捨てられているんですか?

井出留美さん(以下、井出):日本の食品ロスは年間643万トン。飲食店やスーパーなど事業者から出るのが352万トンで、291万トンは家庭から出ています(※環境省、平成28年度推計値)。

 京都大学の先生の試算で、1世帯4人として廃棄している食品の額は年間6万円。さらに、その処分費用として5000円がかかると言われています。また、私も各省庁から出されている統計データから計算してみたのですが、1人あたり6万円という数字になりました。1万円札を捨てる人って、そうはいませんよね。でも、食べ物に形を変えて捨ててしまっているのです。

――年間6万円を捨てている、というのは衝撃です。

◆食べ残し、売れ残りのゴミ処分代に税金1兆円

井出:それだけではないんです。捨てた食品の処分に、私たちの税金が膨大に使われているんです。

 通常、事業者から出るゴミは「産業廃棄物」で、処分費用は事業者自身が負担します。食品メーカーが出すゴミは産廃なのですが、飲食店やパーティ会場の食べ残し、スーパーやコンビニ、百貨店の売れ残りは「事業系一般廃棄物」という区分。これは多くの自治体で家庭ゴミと一緒に焼却処分されていて、その費用は私たちが納めている税金です。

――そうなんですか! 事業者が負担してると思ってました。処分費用はどのくらいの額になるんですか?

井出:市区町村によって違いますが、例えば、東京都世田谷区の場合だと1キロ処分するのに57円。1キロというと、1リットルの牛乳パックくらいですね。

 日本全体では、食品の処分に1兆円近い税金が使われていると試算されます。

 自分の家から6万円を捨てていて、お店のゴミ処分代も税金という形で私たちは負担しているんですよ。

――税金1兆円! それは知りませんでした。

井出:消費者が知らないほうが、企業にとっては都合いいですからね。さらに、コンビニなどは大量廃棄する前提で商品の価格を決めています。私たちが買っている値段には“捨てるための費用”が上乗せされているんです。これはコンビニだけでなく、飲食店やデパ地下のパンやスイーツでも同じです。

◆恵方巻きの売れ残りは285万本!?

――じゃあ、節分の後に大量に捨てられる恵方巻きも……。

井出:恵方巻きは普段の太巻きに比べて割高ですよね。そして、売れ残れば売れ残るほど、税金が使われているわけです。

 今年2月3日、私と学生さんたちで百貨店・スーパー・コンビニ計35店で、閉店直前に恵方巻がいくつ売れ残っているか数えたんです。すると店頭にあるだけで合計1584本も残っていた。

 これをざっくり全国の店舗数で計算すると、合計約285万本、約16億円分の恵方巻が売れ残ったことになるんです。

――恵方巻き問題、なんとかならないですか?

井出:難しいですね…。兵庫県のスーパー「ヤマダストアー」のように、大量販売をやめて「前年度実績」の数で販売を始めるなど、対策をとる企業も出てきてはいます。でも、今年1月に農水省が恵方巻きの製造について「ヤマダストアーをモデルケースに」と通知を出したのですが、ほとんどのスーパーやコンビニはどれだけ廃棄になろうと「対前年比増」で大量製造しているんですよね。

――急に人ごとではなくなってきました。

井出:日本で出ている食品ロスの量は年間643万トンと言いましたが、これは、東京都民1300万人が1年間に食べる食品の量にほぼ匹敵します。私たちは結構な金額を無意識に払っているんですよ。

◆「欠品は悪」だという小売業界

――でも、コンビニやスーパー、パン屋さんだって、売り切れる量だけを用意すればいいんじゃないですか? 余ることがわかっているんだから。

井出:そこには構造的な問題がいくつもあって。まず、ひとつには食品業界では欠品をしてはいけない、足りないのは悪、という考え方があるんです。

 欠品になって棚が空いてしまうと、メーカーはお店側から「もう、おたくとは取引しませんよ」と言われてしまう。そうなったら、商売ができなくなりますから、メーカーは商品が足りなくなるより余らせて捨てることを選ばざるを得ないんです。

――メーカーもつらいんですね。

井出:余れば廃棄コストがかかって経営コストが圧迫されるし、欠品を出してしまうとコンビニやスーパーなどに商品を置いてもらえなくなる。メーカーにしてみたら、どちらもつらいんです。商品を作るメーカーよりも、販売をするスーパーやコンビニなど小売側が圧倒的に強い、そういう上下関係が根本にあるんですよね。

――夕方、お店の棚に商品がなくなっても当然だと思うのですが。

井出:あるデパ地下のパン屋さんから、「デパート側から、閉店間際でも全種類のパンを残しておくよう指示があり、廃棄が出て困っている」という相談を受けたことがあります。それだけでなく、「値下げ販売は、百貨店の高級イメージを損なうからダメだ」と。もう、どうにもならないですよね。

 もし、パン屋さんが「売り切れる分だけを作ります」「閉店30分前には安売りします」と言えば、デパートから「別のパン屋を入れるからいいよ」と言われておしまいです。

――どうして、そんなに商品が揃っていることにこだわるんでしょう?

井出:小売サイドに取材をすると「欠品はお客様にご迷惑をおかけするから」といった言い方をしますね。ただ、本音は売り逃したくないから、他のお店にお客さんを取られたくないからではないでしょうか。

◆コンビニは値下げ販売より捨てるほうが「本部がトクする」

――客の側からすると、賞味期限が近いものは値下げして「見切り販売」してくれたほうがありがたいんですが。

井出:値下げをすることを業界用語で「売価変更」――売変(バイヘン)と言いますが、スーパーでは売変して売り切るところは多いですよね。百貨店はお店によって対応はさまざまです。

 コンビニでは見切り販売をしない店が99%。調理パンやお弁当、生のスイーツを値引き販売しているところは1%くらいでしょうか。

――コンビニこそ、見切り販売をすればいいのに、と思います。

井出:コンビニには独自のシステムがあって、見切り販売をするよりも、廃棄をしたほうが本部のマージンが多くなるようにできているんです。

 コンビニ本部が各店に見切り販売を禁じるのは法律違反、という判決が2009年に出ました。で、本部としてはあくまで「禁止はしていない」という姿勢を見せるのですが、実際は、一部の企業で、あの手この手で各店にやらせないようにしている事例があります。

――ひどい話だ。5月17日、セブン-イレブン・ジャパンとローソンが、消費期限が近い食品を買った顧客に、5%のポイント還元すると発表したことで、少しはロスが減るでしょうか?

井出:小さな一歩だとは思います。ただ、わずか5%ですし、ポイントカードを持ってる人しか関係ない。それより見切り販売を推進したほうが効果があるでしょう。もっと根本的には、欠品(棚が空になること)を許容して、作りすぎない・売りすぎない・買いすぎない仕組みにしなければ、食品ロスはいつまで経ってもなくなりません。

― 食べ物を捨てすぎる私たち vol.1 ―

【井出留美さんプロフィール】

博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊、日本ケロッグ等に勤務。3.11食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託された。著書に『賞味期限のウソ』(幻冬舎新書)、Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

<文/鈴木靖子>

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