「性的暴行でも中絶禁止」過激な法律に全米騒然、ハリウッドがボイコットも…

「性的暴行でも中絶禁止」過激な法律に全米騒然、ハリウッドがボイコットも…

(画像:アラバマ州政府公式サイトより)

 5月30日、米ルイジアナ州知事が妊娠6週間目以降の人工中絶を禁止する法案に署名しました。

 今年に入ってからアメリカで同様の法案が通るのはこれで9州目。「ハートビート法」とも呼ばれる例外を認めない法案が全米を巻き込んで物議を醸しています。

◆アラバマ州では性的暴行や近親相姦による妊娠でも中絶禁止!?

「ハートビート=心拍・心音」が意味するとおり、この法案は「胎児の心音が確認できたら人工中絶を禁止する」というもの。しかし、これではほとんどの人が中絶できないと言っているに等しく、行き過ぎた法案だと波紋を呼んでいるのです。

 現在、この過激な法案を通したのは全9州。『NBCニュース』によると、ルイジアナの他、アラバマ、ジョージア、アーカンソー、ミシシッピ、ケンタッキー、オハイオ、ミズーリー、ユタの議会でハートビート法が可決済みだそう。

 特に厳しい規定で、各方面からバッシングされているのがアラバマ州。ルイジアナ州の6週目以降はまだ甘い方で、こちらは妊娠のどの段階でも人工中絶を禁止し、性的暴行や近親相姦による妊娠でも例外と認めないという法案を可決。中絶手術をした医師には、最長で99年の禁固刑を命じる厳しい法案に州知事がサインしました。

 ところが『ブルームバーグ Bloomberg』によると、これには中絶反対グループでさえ難色を示しているよう。あのトランプ大統領さえ自身が妊娠中絶の反対論者であることを明確にした上で、「性的暴行や近親相姦、母体の生命の危険がある場合は例外だ」とツイートしています。

◆米南部映画産業の中心地、ジョージア州をハリウッドがボイコット

 一方、ジョージア州では性的暴行や近親相姦による妊娠の場合は例外とするハートビート法が議会を通過していますが、こちらではハリウッドを中心に反対運動が起こっています(アーカンソー州、ユタ州でも性的暴行や近親相姦による妊娠の場合は例外)。

「南部のジョージア州になんでハリウッドが関係あるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、実はジョージアは近年大ヒットしている映画やテレビドラマの撮影場所として重宝されている南部映画産業の中心地、『CNBC』によると映画関連で年95億ドルもの経済効果を挙げている州なのです。

 最初に「法案が実際に施行されれば、ジョージア州での撮影中止を検討せざるを得ない」と声を挙げたのは新興勢力のネットフリックス(NETFLIX)。その後、ディズニー、アマゾン、AMCなども異議を唱えました。

 ネットフリックスは『ストレンジャー・シングス』『クィア・アイ』シリーズ、ディズニーは『アベンジャーズ/エンドゲーム』『ブラックパンサー』などを同州で撮影していましたし、AMCはこれまでの『ウォーキング・デッド』全9シーズンを撮影。いずれも全世界で大ヒットした作品です。

 また、監督のJ・J・エイブラムス(『スターウォーズ』『スタートレック』シリーズ)、ジョーダン・ピール(『ゲット・アウト』)は、収入をハートビート法に反対する団体に全額寄付することで異議を表明しています。

◆カリフォルニアは州立大学の学生に「中絶ピル」無料提供を可決

 ハートビート法に関する反対デモが各地で起こり、ハリウッドの映画スタジオやセレブたちが反対する声を挙げる中、カリフォルニア州の上院議員議会が州立大学に通う学生に無料でアボーションピル(中絶ピル)を処方するという法案を可決しました。

 米国版『ハフィントンポスト Huffington Post』によると、これは妊娠10週間以内に中絶を希望する生徒がキャンパス内のヘルスセンターを訪ねれば、アボーションピルを無料で処方するというもの。同法が施行されれば、州内にいくつもキャンパスを持つカリフォルニア大学(UC)とカリフォルニア州立大学(CSU)がその対象となります。

 性交渉後、数日の間に服用することで妊娠を回避する薬として知られるアフターピルと違い、アボーションピルは「避妊」ではなく「中絶」が目的。既に妊娠してしまった女性が服用するピルで、性交渉から数十日経った後でも効果があるそう。

 他にもニューヨーク州やロードアイランド州などが、女性の中絶する権利を保護する法案を検討中だとか。

 9州でハートビート法の実施予定はまだ先ですが、アメリカ自由人権協会やプランド・ペアレントウッドなどが抗議活動をしており、今後は連邦最高裁判所が差し止めに動くと見られています。

Sources:「NBC News」「Bloomberg」「CNBC」「Huffington Post」

<文/アメリカ在住・橘エコ>

【橘エコ】

アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。

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