恋愛に「正直さ」は必要?『ミストレス』みたいに秘密を彼に話した結果は…

恋愛に「正直さ」は必要?『ミストレス』みたいに秘密を彼に話した結果は…

(画像:長谷川京子 Instagramより)

 大政絢と篠田麻里子の衝撃的なシーンも話題のドラマ『ミストレス〜女たちの秘密〜』(NHK、金曜夜10時〜)。男女関係・不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが、人気のドラマを読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)

◆愛する人に「隠しごと」をしてはいけないか?

 ドラマ『ミストレス〜女たちの秘密〜』(NHK)がクライマックスに向かって、ますます暗澹(あんたん)たる展開になっている。秘密を抱える女たちが、徐々に大事な人にその秘密を打ち明けていこうとしているのだ。

 香織(長谷川京子)は亡き不倫相手の息子・貴志(杉野遥亮)を愛したあげく、父親とつきあっていたこともその父親の自殺に加担したことも話してしまう。妊娠した冴子(玄理)は、子の父親が夫ではないことを当の夫に話す。初めて女性に本気で恋をした樹里(大政絢)は、同性と結婚したばかりの相手にもうこのままではいられないことを。

 香織はすべてを打ち明けたとき、貴志に言われる。「あなたは自分が嘘をついていることが苦しくなって話しただけだ」と。

 確かに人は嘘を抱えているのがつらくなると、「正直なほうがいいのだ」と大事な人に打ち明けてしまう。言われた相手の気持ちを考えることはない。なぜなら「正直は正義」だから。

 だが、正直は本当に正義なのだろうか。「墓場まで持っていく」という言葉がある。誰にも言わず、墓場まで持っていったほうがいいこともあるのではないだろうか。大事な人との関係が壊れるくらいなら。

◆過去の関係を打ち明けて…

「大事な人にはすべて知っておいてほしかったけど、言われて対応できないことは言わないほうがいいと今は思っています」

 そう言うのはユウミさん(36歳)。3年前、つきあっていた彼と結婚が決まったものの、結婚式直前になって、彼女は中絶経験があることを彼に話した。

「20代前半、若気の至りだったんですよね。避妊していたはずなのに妊娠してしまった。まだ学生だったし結婚する気もなかったし、中絶するしかなかった。もちろん落ち込みましたよ。だけど友人に経験者もいたし、前を向いて歩くしかないでしょ」

 それなのに結婚すると決まってから、そのことが妙に重くなってきたのだという。友人たちは「話す必要はない」と言ったが、彼女自身は「私のすべてを知ってほしい」という気持ちと、「隠し通すことがつらい」という気持ちで話してしまった。

「彼の形相(ぎょうそう)が変わりました。ものすごくつらそうになって。『どうしてそういうことを、世間話のように話せるの?』と責められて。世間話として話したわけじゃない。私だってつらかったと言ったけど、彼は予想以上にショックを受けたようでした」

 あとから彼の姉夫婦が子どもができないことで苦しんでいると聞いた。だからといって、そのことと自分の過去を結びつけられても困るとユウミさんは感じたという。

「結局、結婚は流れました。彼は『そんな経験をしている女性を嫁にはできない』って。私もショックでした。話さなければ結婚できたのにと思う一方で、嫁にはできないという言い方にもひっかかって、結婚しなくてよかったとも思って……。かなり精神的にやられましたね」

 率直なことがベストではない。彼の知らない過去のひとつやふたつあってもいい。ユウミさんは今はそう思っている。

◆運命の出会いだと思ったのに

 32歳のとき、運命だと思える相手に出会ったのはリサさん(35歳)。美術好きのリサさんがひとりで展覧会に行き、大好きな絵の前で1時間近くぼーっと立っていると、話しかけてきたのがユウタさんだった。3歳年上の彼は美大出身で、高校の美術の教師をしていた。

 そのままカフェで話すこと3時間。カフェを出てから居酒屋に移って3時間。そのまま彼の家に泊まってしまったという。

「美術のこと以外でも話が合って。それ以降、毎週末一緒にいるようになりました。彼の友人にも私の友人にも紹介して、誰もが似合いのカップルだと言ってくれた」

 何でも話せるし、何でも話したいと思ったから、彼の過去の恋愛も聞いた。彼は彼女の過去も聞きたがった。

「あなたは絶対に情熱的な恋をしたことのある人だと思う、と彼に言われて、私、それまで親友1人にしか話したことのなかったことを言ってしまったんです」

 20代半ば、不倫の恋にはまって相手の妻と道ばたで取っ組み合いのケンカをしたこと。家を飛び出してきた彼としばらく自分の部屋で暮らしたこと、そして逆上した彼の妻がリサさんの部屋に突入、彼が刺されてしまったことなどなど。

「結局、ふたりは元の鞘(さや)に収まりました。表沙汰にしたくないということで、金銭のともなわない和解ですんだんですが。確かに情熱的な恋だった。彼には少しマイルドにして話しましたが、それを聞いた彼の顔色はよくなかったですね」

 しまった、話さなければよかったと思ったときは遅かった。彼の想像以上の話だったのだろう、彼は黙って帰ってしまった。

「あの経験があったからこそ、私はその後、なかなか恋ができなかった。ユウタに出会ったのはそんな傷がやっと癒えたところだったんです。でもユウタには通じなかった。怖い女という印象だけが残ってしまったようです」

 相手が受け止められないであろう話はしないほうがいい。いくら知ってほしくてもどう受け止められるかは、話すほうには予測がつかない。それは狡(ずる)さではなく、ひとつの処世術ではないだろうか。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数

関連記事(外部サイト)