春ドラマ名作ベスト3。2位『わた定』を超えたのは?

春ドラマ名作ベスト3。2位『わた定』を超えたのは?

(画像:『わたし、定時で帰ります。』TBS公式サイトより)

 2019年4月クールのドラマがすべて最終回を迎えました。

 そこで、今クールも僭越ながら、わたくしドラマウォッチャーの中村裕一がベスト3を選ばせていただきました。みなさんの評価はいかがでしょうか?

◆第3位『集団左遷!!』福山雅治「頑張る」男で新境地

 まず第3位は福山雅治主演『集団左遷!!』(TBS系)。

 主人公はノルマを達成しなければ廃店&リストラという大逆風のなか、部下たちと必死になって頑張る三友銀行蒲田支店の支店長・片岡洋(福山雅治)。蒲田支店は健闘むなしく廃店となってしまいますが、その後は舞台を本部に移し、片岡が会社にはびこる不正と隠蔽を暴こうと上層部に立ち向かいます。

 特筆すべきは、福山雅治がこれまでのスマートなイメージをかなぐり捨て、泥臭く必死に「頑張る」男を懸命に演じたところ。その姿は「顔芸」とまで呼ばれましたが、きっとファンならずとも彼の俳優としての新しい一面に魅力を感じたことでしょう。

 そして、香川照之演じる副支店長・真山をはじめとする仲間たちとの絆も印象的でした。最終回、最大の敵であり「頑張る」ことをあれだけ否定していた横山副頭取(三上博史)が失脚し、去り際、片岡たちに向かって「ではみなさん……頑張って下さい!!」と叫ぶシーンは鳥肌ものでした。

「下克上」と銘打(めいう)った本作のストーリーは、あくまでも理想論なのかもしれません。しかし、次の世代のために「今」を変えようとする気持ちと行動を形にするためには、目指すべき「理想」が必要なのではないでしょうか。

◆第2位『わたし、定時で帰ります。』働くことの意味を問いかける

 2位は吉高由里子主演『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)。

 過去の苦く辛い経験から、どんなに忙しくても定時で帰ることを肝に命じているWEB制作会社のディレクター・東山結衣(吉高由里子)。

 婚約を破棄した元恋人・種田晃太郎(向井理)と、ライバル会社で働く現在の婚約者・諏訪巧(中丸雄一)の間で揺れながらも、すぐに辞めたがる新入社員・来栖(泉澤祐希)や部下のことをまるで道具のように扱う上司・福永(ユースケ・サンタマリア)らとの衝突や対立を乗り越えて彼女が前に進んでいく姿が描かれていきました。

 ある意味で「理想」とも言える『集団左遷!!』とは対照的に、徹底的に会社そして仕事の「現実」を描いたと言える本作。自分の心身を削ってまで働くことの意味、そのことによって得られるものの価値について鋭く問いかけてくるドラマだったと思います。

 中でも、福永役のユースケ・サンタマリアの演技は絶品でした。最終回、プロジェクトから外され、歩道橋の上で激昂するシーンは思わず息を呑むほどの迫力。去年4月クールの『あなたには帰る家がある』に続いて彼の演技にうならされました。

 余談ですが、第7話でドラマ好きな上海飯店の店主・王丹(江口のりこ)がスマホの画面を見ながらつぶやいた「もう、遅いねや」は、往年の名作『男女7人秋物語』(1987年)で今井良介(明石家さんま)が神崎桃子(大竹しのぶ)に言った名ゼリフ。ドラマファンを喜ばせる小ネタも良かったです。

◆第1位『腐女子、うっかりゲイに告る。』まっすぐな「青さ」を伝えてくれた

 そして1位に選ばせてもらったのは、『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK総合)です。

 ゲイであることを知らなかったクラスメイト・安藤純(金子大地)に告白してしまったBL(ボーイズラブ)好きの腐女子・三浦紗枝(藤野涼子)の揺れる心情と、そこから始まった二人のかけがえのない日々が綴られたこの作品。

 どのメディアでも絶賛されていますが、やはり第7話の終業式のシーンはこのドラマのクライマックスと言えるでしょう。

 ゲイであることが周りに知られ、校舎から飛び降りてしまった純。怪我をおしてなんとか式には出たものの、依然として冷たい周囲の目線……と、そのとき、紗枝が突然マイクを奪い、壇上から「私はBLが大好きです!」とカミングアウトするのです。

 自分と向き合った彼女の勇気ある告白を守るべく、紗枝を止めようとする教師に飛びかかる高岡亮平(小越勇輝)ら同級生たち。そして最後に壇上に上がり紗枝にキスをする純。現実的にはあり得ないことだと思いながらも、堂々と自分の気持ちを叫ぶ彼らの姿には胸を締めつけられました。

 私たち人間は本来たくさんの矛盾を抱えている、わかりにくい、いや、永遠にわかることなどできない存在です。だからこそ常にその「わかりにくさ」と向き合い、立ち止まり、悩み、考えながら生きていかなければいけません。そうすることでほんの少しだけ、その先に「希望」というものが見えてくるのではないでしょうか。

「世の中、理想やキレイごとだけでは回らない」。よく言われる言葉ですが、果たしてそれは本当でしょうか? 私たちは大人になるにつれ、その言葉をまるで呪いのように唱え、いつの間にかすべてを自分に都合よく「わかりやすい」ものにしてしまっていないでしょうか? 

 たった100年も生きられない人生で、私たちが忘れてはいけない、良い意味でのまっすぐな「青さ」を伝えてくれるドラマでした。純と紗枝だけでなく、登場人物すべての未来を応援せずにはいられません。最終回、自己紹介のシーンで純の「僕は……」というセリフで終わったラストがとても素敵でした。

 今クールは『集団左遷!!』『わたし、定時で帰ります。』と、くしくも会社を舞台にした「働き方」を考えさせられるドラマ、そして『腐女子〜』のように「生き方」を問いかけるドラマに見ごたえがありました。7月からスタートするドラマも楽しみにしています!

<文/中村裕一>

【中村裕一】

Twitter⇒@Yuichitter

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