心霊スポットの前で恋バナ?バイト仲間で味わう恐怖体験のはずが…

心霊スポットの前で恋バナ?バイト仲間で味わう恐怖体験のはずが…

心霊スポットの前で恋バナ?バイト仲間で味わう恐怖体験のはずが…の画像

 夏は海やキャンプなど、日常から離れた行動をすることも多い季節ですよね。そんな中で、意外な経験をすることもあるようで…。

「まさかあんな場所で恋の話をするとは思ってもみませんでした」

 そう苦笑しながら語ってくれたのは、牧野一美さん(仮名/39歳)。さかのぼること20年前の夏、当時大学生だった一美さんはレンタルビデオショップのバイト仲間と心霊スポット巡礼ツアーを計画しました。

 ところが、「絶対に出る」と有名なトンネルの前で、なぜか順番に好きな人を告白するハメになったとか。身の毛もよだつ心霊スポットで一体何が起こったのでしょうか?

◆「出る」と噂の心霊スポットでまさかの……

 心霊ツアーに参加したのは、バイト先で仲良くしていた男女6人組。その晩シフトが入っていたメンバーもいたため出発は閉店後の深夜1時過ぎとなり、一美さんたちは2台の車に分かれて出かけることになりました。

「深夜から遊びに行くことはよくありましたが、いつもは近所のカラオケに行く程度。みんなで遠出するのは初めてでしたから、最初からテンションマックスで、とても今から心霊スポットに行く雰囲気ではありませんでした」

 有名な心霊スポットをいくつかめぐり、ツアーの締めくくりとなる“いわくつき”のトンネルへたどり着いたのは、夜明け前の午前3時頃。

「その前に訪れた精神病院や廃校では、男子だけ中に入らせて女子は車の中で待っていたのですが、ここだけは全員で歩こうと誘われていました。

 そのトンネルには『日の出直前に歩いて通ると女性の霊が出る』という噂があり、歩いて通らないと意味がないと言われていたんです」

 怖いもの見たさも手伝って、意を決して車外に出た一美さんたち女性陣。ところが車のドアを閉めた瞬間、一人の男子が叫び声を上げたそう。

「まさか『もう何か出たの!?』と腰を抜かしそうになりました。でも実際には、車内に鍵を残したままドアを施錠するヘマをやらかしてしまったことに気づいた男の子があせっている声だったんです」

 幸い車は2台。もう一人の運転手から「俺が送っていくから合鍵を取りに行こう」と申し出があり、男子2人がその場から一時去ることになったのですが……。

「あの頃はまだスマートフォンのない時代で、今自分たちがどこにいるのか分からず、来た道さえも覚えていない状況。運転をしてくれていた子たちが消えた途端に不安になり、女子たちの間には『彼らが帰ってこなければヤバイくない?』『私たち生きて帰れるの?』という不穏な空気が流れていました」

◆一人残された男子が提案したのは?

 その空気を打ち破ったのが、男子の中で一人残されたバイトリーダーの「恋バナしようぜ!」という心霊スポットに似つかわしくない一言でした。

 一美さんも当初は何を急に言い出すのかとビックリしたそうですが、今思えば、あれはあれでいいアイディアだったと振り返ります。

「普段バイトリーダーはシャイな人だったので、それまで恋の相談なんか一度も受けたことはなかったんですが、あの日は急に当時雇われたばかりの高校生の名前を挙げ、どうアプローチしたらいいのかと女子に相談してきたんです。たぶん、私たちの気を紛らわそうとしてくれたんですよね」

 相談を受けているうちに女子たちの気持ちも熱くなってきたのか、いつの間にか全員で意中の相手を打ち明け合い、恋の相談に没頭するという奇妙な展開になったといいます。

◆心霊スポットのトンネルは怖くもなく、恋も生まれず

 約1時間後、スペアキーを持って戻ってきた2人の男子は、トンネルの前に車座になって熱心に好きな人への思いを語る残されたバイトメンバーの姿に面食らっていたとか。

「私たちが怖がってると思って制限速度ギリギリで飛ばして帰ってきてくれたみたいなんですが、恋バナをしている姿を見て『なんか君たち、楽しそうだね』って(笑)」

 思わぬ恋の告白大会に転じてしまった心霊スポット巡り。霊が出ると言われていた日の出前のタイミングは逃し、朝日は昇り始めていたものの、せっかくだからと6人はトンネルを歩いて往復したそう。

「みんなで手をつないで歩きました。いい思い出ですけど、正直言って怖くもなんともなかったです。明るくなってからの心霊スポットは、なんてことはない普通のトンネルでしたから。

 行く前は恐怖体験を共有すると恋が生まれると言われている“吊り橋効果”なんかも期待したのですが、この展開では起こりようがないなと少しがっかりしました」

 その後、それぞれバイト内で他の子を好きになったり、付き合ったりなんてこともあったといいますが、この時の仲良しグループの中では不思議とそうしたことは一度もなかったそうです。

―シリーズ「夏に起きたトンデモ」エピソード―

<文/橘エコ イラスト/カツオ>

【橘エコ】

アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。

関連記事(外部サイト)