「お前は楽でいいな」とか見下してくる夫とどう付き合う?/ジェーン・スー×中野信子

「お前は楽でいいな」とか見下してくる夫とどう付き合う?/ジェーン・スー×中野信子

「お前は楽でいいな」とか見下してくる夫とどう付き合う?/ジェーン・スー×中野信子の画像

 対談本『女に生まれてモヤってる!』(小学館)を上梓したコラムニストのジェーン・スーさんと脳科学者の中野信子さん。

「女らしさ」に絡め取られ、自分らしくいられないなら撤収してよし! と、背中を押してもらった第1回。第3回は、前回に続いて人生相談。20代〜40代の女性と結婚にまつわるよくある「モヤり」から脱出する術をおふたりからアドバイスいただきました!

◆夫から“下”に見られている妻の相談

Case2

<夫からなんとなく“下”に見られ、プチモラハラな態度を取られ続けています。でも、経済的なことなど考えると別れる決心がつかず、がまんしているのですが…>

中野:これ、難しいね。「私さえ我慢すれば」「我慢できない私は失格」みたいに思い込んでしまいがちですし。モラハラしてくる人を変えるのは難しく、そういう人は選ばないという選択がいちばんなんですが……まずは、暴力をふるうかどうか。暴力があったら、それは別れる理由にしていいと思うんです。

スー:最低ラインとして、暴力に出たらアウト、と。

中野:メンタル面でバカにしてくる相手への対処法も、ないわけではないんです。それは、相手にうしろめたさを感じさせるというやり方。「そういうあなたってどうなの?」「痛々しいですよ」と自覚させる。第三者がいたほうがよくて、たとえば、公の場で周囲から「えっ!」って顔をされるというのも大きい。

スー:「そういうことをする人って、恥ずかしいからやめたほうがいいよ」って自覚させるのは効きますね。

◆モラハラするのは、正当な評価を受けていない不満の裏返し

中野:以前付き合っていた条件だけ言えば申し分なかった元彼もわりとモラハラ的な人でしたが、「この人、ヤバくない?」と踏ん切りがついたのが、彼の後輩と一緒に食事をしたときなんです。会話やふるまいで、後輩からバカにされているのがわかってしまった。

スー:それ、きついね。

中野:空いばり的な人なんだってわかって。それで気持ちが冷めていったのもありましたね。

スー:自分に見せている顔と世間に見せている顔が違う人っているからね。

中野:それを本人に自覚させたら、モラハラは鎮火していくかもしれない。

スー:中野さんから実践的な話があったので、私からは理想論的な話をすると、「お前はラクでいいよな」みたいな、下に見る言い方をするのって、完全に「自分は評価されていない」というサインの裏返しなんだと思うんですね。

 彼の何が大変なのか、どこをケアすると彼自身が自分の存在価値を認められるのかを探してみる。一回、そこを介してからでもいいかな、って思います。

◆親からの圧力がツライなら、距離をとってもいい

Case3 最後は、25歳・愛知県出身の編集Kの相談。地域柄なのか、親を含め周囲が保守的で結婚圧力がすごい。「結婚こそ女の幸せのすべて」「結婚できない子はかわいそう」と言わんばかり。そういう強烈な価値観を取りのぞくのが大変。

スー:結婚の圧力が親からならば、一度親との距離を取るのもアリかと。親を大事にすることと、親の価値観から自分を切り離すのって、難しいけど同時にできることでもあるので。

 親が50〜60代のときは、ゆるーくつきあっていく。70代を超すと精神的にも肉体的にも親は弱くなってくるので、そのときに大事にできればいいのではないでしょうか。価値観なんて全然、合わなくても大丈夫。私も親を大事に思ってるけど、価値観が完全に一致しているとは言い難い。

中野:地方だとね、村社会の価値観にどうしても合わせざるを得ないという事情はあるのかもしれない。帰省するたびに、近所の人や親戚に「○○ちゃん、結婚はしたの〜?」「いい人はいるの〜?」って聞かれたり。

スー:どんな場合でも、頓珍漢な質問には、向こうが望んでいる受け答えで受け流すのが楽だよね。「なかなかいい人がいなくてー」とか。そこで、「女の幸せは結婚じゃなくて!」って言ってもしょうがない。

中野:嫌味をいえる感じなら、「みなさんのような失敗をしないように、慎重に選んでいるんです」とにっこり笑って言ったりね(笑)。でも、そもそも、結婚してもいいし、しなくてもいいし。結婚して離婚してもいい。離婚できるのも幸せ。どれも間違いじゃないよ。

スー:自分のしたいようにできるといいよね。

中野:「圧力がすごい」「保守的だ」って言いながら、来年、幸せいっぱいの結婚をしてるかもしれないし(笑)。

◆親から植え付けられた価値観のアップデートが必要

スー:25歳ぐらいまでの若い子たちって、私たちと違う、新しい考え方ができると思うんです。いちばんヤバいのが我々の世代でしょう。親世代の価値観で育てられてるからね。親がいなくなっても、植え付けられた価値観だけは残っていきがち。どんどんアップデートしていかないと、自分だけ時代から取り残されることになる。

中野:旧時代の亡霊のようにね。背景は長いのでここでは端折りますが、今の30代、40代は時代的に恵まれず、呪われているといってもいい。この本はその呪いを解きたいよね、という宣言の書であったりもします。

スー:同時に、20代にも読んでもらいたいですね。私たち自身、もっと早くに学んでいたら!という思いはあるから。ただ、「こうしろ」っていうのは、この本には一切書いてないんです。不親切かもしれないけれど、自分で考えること以外に、自分を救う方法はないので。

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 自分で考えるって大変!と思うかもしれません。自分を出すことに不慣れな人もいるでしょう。間違えてしまうかもしれないし、失敗したらどうしようと不安にもなる。でも、本書でおふたりはこうも言っています。

「自分の欲望をなめるな」「決断って『慣れ』」(ジェーン・スー)

「間違った選択をしたら、その都度、リカバーしていけばいい。これから必要なのは選んじゃった答えを正解にする力」(中野信子)

 こうしたおふたりの言葉の聞くと、なんだか、ワクワクしてきませんか?

【ジェーン・スー】

1973年、東京生まれ。作詞家・コラムニスト・ラジオパーソナリティ(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』など)。著書に第31回講談社エッセイ賞を受賞の『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎文庫)や、『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ文庫)、『私がオバさんになったよ』(幻冬舎)など多数。

【中野信子】

1975年、東京生まれ。脳科学者・医学博士・認知科学者。東京大学工学部を卒業後、東京大学大学院医学系博士課程を修了。2008年からフランス国立研究所に博士研究員として2年間勤務した後、帰国。現在は、東日本国際大学教授。著書に『脳内麻薬』(幻冬舎新書)『サイコパス』(文春新書)、『キレる!』(小学館新書)など。また、テレビコメンテーターとしても活躍中。

<文/鈴木靖子、写真/渡辺秀之>

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