飼い猫をさらって虐待死させた男、有罪でも実刑なし判決。十数匹殺したと供述しているのに…

飼い猫をさらって虐待死させた男、有罪でも実刑なし判決。十数匹殺したと供述しているのに…

写真はイメージです(以下同じ)

 今回は2019年9月17日に富山地方裁判所で下された、動物虐待事件の判決を踏まえ、どうすれば動物の命を守っていけるのかを考えてみました。

 虐待事件が起きたのは、今年の5月19日。無職の新村健治被告(52)は他人の飼い猫を連れ去り、虐待し死なせたとして、器物損壊と動物愛護法違反の罪に問われました。17日の判決公判では、富山地裁高岡支部(梅沢利昭裁判官)は、懲役8ヶ月、執行猶予4年を言い渡します。

 公判中、「十数匹の猫を殺した」とも供述している新村被告。今回の事件では、近所の男性が飼っていた雄の猫1匹を持ち去った後、金属製の捕獲機に入れたまま5月23日まで食事を与えずに衰弱させ、最終的にはプラスチック製の棒で腹部を何度も突き、死亡させました。愛情を注いできた飼い猫を無残に殺された飼い主さんの心境を想像すると、同じ愛猫家としてやるせない思いでいっぱいです。

 動物を身勝手な理由でいたぶったり死に至らしめたりする虐待事件は、最近でこそ、メディアで大々的に取り上げられるようになってきました。

 こんなふうに動物虐待事件が報道されやすくなったのは、数十年前にインターネット上で起きた「こげんたちゃん事件(福岡猫虐待事件)」がきっかけであったように筆者には思えます。当時、中学生だった筆者はこの事件の残酷さを知り、子どもながらに動物の命の報われなさに心が痛くなりました。その頃に比べると、近年は動物愛護意識が高まり、動物虐待に厳しい目が向けられるようにはなってきています。

◆「動物は、飼い主にとってまぎれもなく家族の一員」

 動物愛護法上でも、動物は「命あるもの」と明記されているため、単なる「モノ」とは区別されているといえるでしょう。身勝手に殺傷すれば刑事責任を問われ、場合によっては民法でも慰謝料などの請求も認められています。しかし、世の中には動物を「命あるもの」ではなく「モノ」として扱い私欲を満たしている人がまだまだいるように思います。動物の命が軽視される原因は法律ではなく、人々の意識にあるのではないでしょうか。

 今回の裁判では、世間の動物愛護意識の高まりを考慮し、懲役6ヶ月の求刑に対して懲役8ヶ月・保護観察付き執行猶予4年という判決が下されました。執行猶予付きの判決であり、たった8ヶ月で命を奪った罪が償えてしまうのは個人的にはとても軽いように感じられましたが、求刑よりも重い判決が下されたのは動物虐待事件の裁判としては珍しいことであったのも事実です。

 法廷で裁判官は「法律上、動物は人として扱われないが、飼い主にとってはまぎれもなく家族の一員。責任の重さを忘れないようにしてください」と被告にさとしました。被害者となった飼い主さんや猫の気持ちを考慮したこの言葉は、胸に響くものがあります。

◆野良猫は被害にあっても軽視されやすい

 しかし、もし今回、虐待されたのが飼い猫ではなく野良猫であっても同じような判決は下されたかはわかりません。飼い猫は法律上、飼い主の所有物であるため、勝手に捕獲や殺処分・遺棄などをした場合は飼い主さんが訴えれば「窃盗罪」や「器物破損罪」「財産の侵害」にあたり、刑罰が下されやすくなります。対して、所有者のいない動物は、被害にあっても命が軽視されやすくなります。

 今年の6月には改正動物愛護法が成立し、愛護動物(※)をみだりに殺傷した場合の刑罰が、「2年以下の懲役、又は200万円以下の罰金」から「5年以下の懲役、又は500万円以下の罰金」に引き上げられました(公布から3年以内に施行)。動物を取り巻く環境は徐々に変わりつつあります。それでもまだ十分であるとは言えません。法はもちろん、人の意識も変わらないと動物の命は守っていけないでしょう。

 猫でいえば、完全室内飼いをして愛猫の身を守ったり、TNR活動(野良猫に不妊手術をした上で元の場所に戻し、一世一代の命として地域で見守る)を行ったりして猫とうまく付き合う方法を探っていくことはもちろん大切ですが、猫を苦手に思っている人ともよい距離感を保っていくことはそれ以上に大切だと言えます。

◆「動物が苦手な人」にはどう接していくべきか

 人はそれぞれの価値観を持っており、好みも違うもの。身近にいる「動物が苦手な人」にどう接していくのがベストなのかを考えていくと、結果的に動物が暮らしやすい環境を築いていけるのではないでしょうか。

 猫ならば、特に様々な理由から完全室内飼いができない場合は、トラブルになりやすい糞尿やゴミあさりなどの被害を自分の愛猫がもたらしていないかを気にかけていかねばなりません。猫好きの人にとっては、猫が苦手な人の気持ちは少し受け入れにくいかもしれませんが、人と猫が共生していくにはまず人同士が折り合いをつけ、猫を見守れる環境を築いていく必要があると思います。

 現状日本の動物愛護法には、動物ファーストな考えまでは盛り込まれていません。もどかしさを感じた時は、自分にできる身近な救済法を考えてみる――。それはきっと、虐待という残酷な犯罪を減らすことにも繋がっていくはずです。

※愛護動物…動物愛護法で定める愛護動物とは

1)牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる

2)その他、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

<文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>

【古川諭香】

愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291

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