生田斗真のドラマ『書けないッ!?』ムチャぶりされる脚本家役がリアルすぎる

生田斗真のドラマ『書けないッ!?』ムチャぶりされる脚本家役がリアルすぎる

(画像:テレビ朝日『書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜』公式HPより)

テレビ朝日系列で放映されている『書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜』(毎週土曜夜11時30分〜)が、ドラマ制作者たちの間で話題です。

 生田斗真さんが演じる主人公・吉丸圭佑は、コンクールで入賞し脚本家になったものの、仕事は年に1本あるかないか……。売れっ子小説家の妻のスネをかじりながら活動していたところに、突然ゴールデンタイムの連続ドラマの脚本執筆という大仕事が舞い込んでくるところからストーリーは始まります。

 北村有起哉さん演じるテキトーなプロデューサーや、岡田将生さん演じるワガママな主演俳優に翻弄(ほんろう)されながら、圭佑はラストまで描ききれるのか? そしてそれを見守る家族とのふれあいが見もののドタバタコメディです。

◆リアルな現場エピソードの数々を見せつける

「書けないッ!?」の脚本を担当するのは、NHK朝の連続テレビ小説『まんぷく』や、木村拓哉主演『HERO』で有名な売れっ子・福田靖さん。福田さんが実際に行う「口述筆記」という執筆の手法(登場人物の台詞や動きを“口頭”で表現し、それをアシスタントなどにタイプしてもらう)もドラマ内に取り込まれています。その手法を使う脚本家は珍しいながらも、何かと地味になりがちな脚本執筆の状況が視聴者にもわかりやすく伝わる効果になっています。

 なかでも見ものなのは、第一線で活躍する福田さんの作品だけに、リアリティ溢れる現場のエピソード。テキトーだけど権限のあるプロデューサーの存在や、内容うんぬんよりスケジュール優先で動くドラマ制作の裏側を、これでもかと脚本家の視点で見せつけています。

 Twitterでは「リアリティあるネタが多すぎて、身につまされる……」「あるある、とうなずくことばかり」と、この作品に対してプロの脚本家のつぶやきも散見された本作。そこでドラマに共感してやまないという、ある脚本家に話を聞いてみました。

◆「全く仕事がない……」売れない脚本家の現状

「一番うなずいたのは、吉瀬美智子さん演じる奥さんが売れっ子の小説家という点ですね。駆け出しの男性脚本家は、奥さんがしっかりとした仕事をもっていて、ヒモ状態の人が多いんですよ」と語るのは、主役の吉丸圭佑と同様に“売れない脚本家”であるAさん。彼は独身ですが、現在派遣社員をしながら年に何回か来る脚本家としてのオファーを細々とこなす兼業脚本家です。

「僕も彼と同様に脚本家としてのキャリアは5年ほどです。とある脚本賞の最終選考に残ったことで声をかけていただきデビューしましたが、その後仕事が続くわけでなく、たまに局や制作会社の方からのお誘いでコンペに挑戦したり、企画書作成の手伝いをさせていただくくらいです。脚本家としては過去、連ドラの中の数話を書かせてもらったり、ネット配信のミニドラマを担当しました。世に出た作品は5本にも満たない程度です」

 Aさんは自虐的に苦笑します。だからこそ、主役の吉丸圭佑に感情移入をしてしまうのだそうです。なかでも「あるある」と頷いたのは1話、当初決まっていた脚本家の入院で圭佑に突然連ドラの仕事が回ってくるも、その内容が全く決まっていないというエピソード。

◆たった数日で脚本を書き上げるのも“あるある”

「3か月後から始まるドラマが全く決まっていないということもよく聞く話ですね。クランクインまでのスケジュールが無くて、たった数日で脚本を流れ作業のように書き上げなくてはならなかったり、内容の良し悪しではなく現場の状況や権限を持った人の一言で直さなければならなかったり……。

 僕の場合はドラマのように主演俳優が口をはさんできたのではなく、原作者からの注文にかなり苦労した経験があります」

 Aさんによると、制作費などの都合で入れることができないとプロデューサーが判断したシーンを決定稿寸前で入れて欲しいと言われ、板挟みで悩んだとか。しかし何とか書き上げ、事なきを得たようです。

 だからこそ、北村有起哉さん演じるプロデューサーの東海林が2話で発した「発注に応えるのがプロの脚本家」というセリフが身に染みたといいます。

◆脚本家が売れるために必要なものとは?

 Aさんはさらに話を続けます。

「主演俳優からの修正を要求するプロデューサーに『考えるのは脚本家であって俳優ではない』と言い放った、新人天才ライターの如月翔(小越勇輝)にも感情移入して心がヒリヒリしてしまいました。如月がカン違いしていたように、僕もデビュー当初はそうでしたから。

 脚本家は作家や表現者として十分尊重してもらえると思いきや、実はそうでもないんです。大御所や別の分野で売れている作家さんなら話は例外かもしれませんが、新人ならなおさらです」

 一般的な仕事と同じで、実績を積み重ねていくほどコツや現場の状況が理解できたり、チームワークが構築されて、自分の書きたいことを表現しつつ、制作側にも歓迎されるホン(脚本)が書けるようになるのだといいます。

 才能のある小説家や漫画家が、プロデビュー1作目で華々しくヒットを飛ばし作家として名を馳せる人がいるのに対し、専業脚本家でそのような人物がいないのは、こういう背景があるからでしょう。

 このドラマについて前のめりに語っていたAさんでしたが、あまりにも現実的すぎるため今後観るのが辛いとのことです。自分にも吉瀬美智子さんのような手に職を持ちながらも自分を支えてくれる女性にが現れてほしいと笑っていたのが印象的でした。Aさんのよき出会いと、今後の活躍を陰ながら祈るばかりです。

<文/小政りょう>

【小政りょう】

映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

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