離婚を決めた、夫のひどい一言。目の前で倒れた高齢女性を見たのに

離婚を決めた、夫のひどい一言。目の前で倒れた高齢女性を見たのに

写真はイメージです(以下同)

離婚理由に「価値観の違い」がよく挙げられる。

 価値観など違って当たり前だし、それをすりあわせていくのが結婚生活なのではないかという意見もある。だが、どうしても許せない「価値観の違いがあった」と語る女性もいる。

◆食べ物の好みのズレから始まった

 食べ物の好みが価値観なのかと思われるかもしれないが、「価値観にも絡(から)んできます」と断言するのは、ヨシエさん(36歳)だ。30歳の誕生日3日前に婚姻届を出し、3年後に離婚した。

「30歳までには結婚したいと思って焦っていた私もいけないとは思うんですが……。28歳から29歳にかけてやたらと合コンに出ていました。そのひとつで男友だちから紹介されたのが,のちに結婚したユウキです。2歳年下だったけど押しが強くて、すぐにつきあうことに。

 男友だちからも、『あいつは結婚願望が強いんだ。ヨシエのことがすごく好きみたい。いいやつだよ』と言われたのも後押しになりました」

 つきあってみると、確かに『いいやつ』だった。素直で前向き、人の悪口をなどいっさい言わないところも好感がもてた。映画、遊園地、バッティングセンターなど、いろいろな場所でのデートを経て3ヶ月足らずで双方の両親を呼んで会食、すぐに婚姻届を出した。

「結婚式代わりに友人を呼んでパーティはしましたが、ふたりとも仕事が忙しかったのですぐに日常生活が始まりました。平日はほとんど食卓を囲むこともなかったし、週末は一緒に料理して食べる感じでしたね」

 ただ、生活が続くうち、ヨシエさんは食生活が偏っていることに気づく。彼はほとんど和食を食べないのだ。

◆「野菜なんてなくても生きていけるよ、一生必要ない」

「あるとき、今日は私が料理すると言って焼き魚、味噌汁、煮物など典型的な和食を作ったんです。私はどちらかといえばこういう食事のほうが好きなので。

 そうしたら彼は食卓を見るなり口を尖らせて、『食べられるものがない』って。そこで初めて、彼はラーメン、ハンバーグ、カレーだけで暮らしていける人だと知りました。しかも野菜はじゃがいも以外、ほとんど食べられない。鶏肉もダメ、魚類はエビとカニ以外はほぼ全滅。

 過去を振り返ると、そういえば彼はファミレスでいつもハンバーグ定食、ときどきエビフライみたいなオーダーだったなあと思い出して」

 あげく、野菜なんてなくても生きていけるよ、一生必要ないと言った彼に、ヨシエさんはムッとした。なぜならヨシエさんの実家は野菜を主に作っている農家だから。

「野菜が嫌いなのはしかたがないかもしれないけど、生産者まで必要ないと言われたようでムカッとしたんですよね。うちの親、農家なんだけどと言ったら、『知ってるけどさ』って言うだけ。失言だとわかってない。そこに違和感を覚えました」

 きっかけは単なる食べ物の好みの違いだが、それだけではすまなくなったのだ。

◆他の人に思いが至らない

 それ以来、ヨシエさんはユウキさんの言動がいちいち気になっていく。

「たとえば友人たちと一緒に飲みに行ったときも、彼は弟キャラというかいじられキャラなんですよね。本人もそれが居心地がいいみたいで、その立場にいれば多少のわがままを言っても許されると思っている節がある。だから自分から他人に気を遣ったり思いやったりすることができないんです」

 友人のひとりが病気で入院したことがあった。ひとり暮らしだったため、いち早く駆けつけて鍵をもらい、自宅から着替えをもっていった人、足繁く見舞いに行った人、遠方から出てきた彼の両親の案内を買ってでた人など、みんなが協力したのだが、彼は結局、一度見舞いに行っただけ。友人に親身になる気配が感じられなかったという。

「冷たいわけではないんだけど、濃い情がないというか。私とは人間関係の作り方が違うなと、いろいろな場面で思いました」

 だからといって離婚など視野に入れてはいなかったのだが、ある日、決定的なことがあった。

◆「この人と一生、一緒に歩いてはいけない」

 昨年のコロナ禍での自粛期間。ふたりとも在宅勤務になったので、一緒に散歩に出た。すると目の前で高齢の女性がふらりと倒れたのだ。

「私はあわててかけつけたんですが、彼は立ちすくんでいる。抱き起こして近くのベンチに運ぶと、彼女は『大丈夫です、ありがとう』って。だけど顔が青いし、大丈夫そうには見えない。

 水を持っていなかったから、彼に水を買ってきてと言うと、『大丈夫って言ってるじゃん』と。

 それでも水を買ってこさせて飲ませたんですが、やはりおかしい。結局、救急車を呼びました。

 行きずりではあるけど、そのままにするわけにもいかず、私が救急車に乗って病院まで行き、救急隊が家族に連絡するまで見届けました。あとからご家族から連絡があって、脳卒中だったそうです。幸い、命に別状もなくて後遺症もなさそうだ、と。

 ほっとしましたが、彼は私がひとりで救急車に乗ったことを,『意味ないことするよね』と。確かにそうかもしれないけど、私はこの人と一生、一緒に歩いてはいけないと感じたんです」

◆価値観の違いを感じてからもがんばって疲れ果てた

 他者に対する温度が違う、自分が重要だと思うことが彼にとっては「意味のないこと」ならば、確かに一緒には歩いていけない。

 ただのおせっかいではなく、「命を左右するようなことだから思わず行動した」のだが、そんなヨシエさんの気持ちが彼には理解できないようだった。

「私だって万人に親切なわけではありません。でも身の回りの人たちは大事にしたい。彼はそれを感覚的に理解してくれない。これはもう、価値観が違うとしか思えなかった」

 それでも3年はがんばってみた。だが彼は変わらず、彼女は疲れ果てた。

◆30歳までの結婚に固執したのかよくわからない

 もう少し長くつきあっていたら、彼への違和感から結婚はしなかったかもしれないと彼女は言う。ただ、30歳までに結婚したい思いはそれほど強かったのだ。

「今になると、どうして30歳までにと固執したのかよくわからないんですけどね(笑)。ただ、結婚したかった自分の思いを否定はしたくない。別に結婚に失敗しても人生にたいした影響はありませんから」

 そう、離婚はたいした痛手ではない。彼女は「バツイチになってから気楽になりました」と大きな笑顔を見せた。

―シリーズ「結婚の失敗学〜コミュニケーションの失敗」―

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio

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