1年前に出会った猫がボロボロで現れた…亡くなっても大好きな愛猫・小太郎
2021年02月10日 18時02分 女子SPA!

すっかり甘えん坊な家猫に
【○○さん家の猫がかわいすぎる Vol.41】
「きっと、小太郎は猫という縛りに収まるのではなく、小太郎という存在なのだと思います」
そう語る光るさん(@himomonga)にとって10歳(推定)で亡くなった愛猫の小太郎くんは、何年経っても特別な存在。今でも、共に過ごせた日々に想いを馳せ、愛を噛みしめます。
◆1年前に見かけた猫がボロボロの状態で現れて…
出会いは、2002年春のこと。花を育てていた飼い主さんは野良猫たちが水分補給できるよう、玄関先のバケツに毎日新鮮な水を入れていました。すると、いつしか、大きな茶トラが水を飲みに来るように。
「よくバケツの水をひっくり返していたので、どんくさい子だと思っていました」
しかし、やがて姿を見せなくなり、次に目にしたのは約1年後。
「窓の外から『皮膚病の猫だから触ったらダメだ』と追いやるような声が聞こえてきたので、慌てて外に出てみたら、大怪我をし、皮膚がガサガサになったあの子がいました。目も潰れ、変わり果てた姿で我が家の前に座っていました」
もしかして、我が家を頼りにしてきたのでは……。そう感じ、とりあえず玄関にダンボールを置き、毎日体を拭いたり、柔らかなブラシでブラッシングしたりしていましたが、このままでは病気が完治しないと思い、病院へ。
◆皮膚が治ってきた矢先、エイズと白血病が判明
投薬を開始すると毛ヅヤは日に日によくなり、目も綺麗な状態に。ノミ取り剤の投薬や条虫の駆除も行いました。
「ただ、顎から首にかけての傷が深くて。先生にも傷口が塞がらないかもしれないと言われましたが、ダメもとで傷の周辺の毛を剃ってもらい、湿潤療法をしました」
なんとか治ってほしい……。そんな祈りが通じたのか、その後、傷口は塞がり、被毛も生えてきました。ところが、そんな折、猫エイズと猫白血病であることが判明。
結果が出たとき、動物病院の先生から「大きな病気を持っているこの子を飼う覚悟がありますか?」と聞かれましたが、すでに家族にしようと決めた上での受診だったため、迷いはありませんでした。
「でも、とてもショックで、先生に『あと何年一緒に過ごせますか?』と泣きながら聞きました」
◆日課は玄関での“見送り”
病気もニャン生も背負う覚悟で迎えた、小さな命。小太郎くんは飼い主さんの想いを感じ取っていたのか、最初から全力でおうちに馴染もうと頑張ってくれました。
「実は家族になる前には玄関先で、うちでは飼えない、いや、入れてくれの攻防が1か月ほどあり、私たち家族が折れたんです。外にいるときからかわいい子だったけれど、家猫になってからは顔つきが穏やかになりました」
甘えん坊になった小太郎くんは寝る時に腕枕をしてもらったり、専用の枕を用意してもらい、川の字ならぬ「り」の字で眠ったりしていたそう。
「ひっつき虫で、よく喉を鳴らしながら脇腹をふみふみしてくれた。忘れられない幸せな時間です。絶対に人を噛んだり威嚇したりせず、猫が怖かった私の母と息子を猫好きにしました」
息子さんが学生の頃には朝早くから玄関のプランターの上に座り、登校する子や出勤する人たちを見送るのが小太郎くんの日課に。
「遅刻しそうな子まで見送ると、家の中に入り、ご飯を食べて寝ていました(笑)」
「小太郎、おはよう」とたくさんの人たちから声をかけてもらい、1日が始まる。それは、野良猫として長年生きてきた小太郎くんにとって、この上ない幸せだったのかもしれません。
◆穏やかな日々が「消化器型リンパ腫」で一変
ところが、おうちで暮らし始めて6年が過ぎた頃、突然、血尿が。飲み薬と注射で回復してきた矢先、急にぐったりし、入院することに。翌日に手術をし、消化器型リンパ腫だと診断されました。
術後の経過は順調だったもののその後、再び腫瘍が見つかり、抗がん剤治療を開始。数種類の抗がん剤を試したものの、どれも合わず、6kg近くあった体はみるみるうちに痩せていきました。
「毎日の通院に連れていくことと強制給餌くらいしかしてあげられなくて……。食いしん坊だったので、食べたくないと鳴くのはとても辛かったです」
それでも、トイレはギリギリまで自力で行きたがったため、飼い主さんは介助をしたり、トイレの段差をなくしたりとサポート。やがて、通院時の負担を減らすため、自宅で点滴を行うようにもなりました。
◆ドタバタな日々を通して学んだ「動物の守り方」
命の灯が消えたのは、2018年7月2日。朝に大好きなベランダへ歩いていき、トイレへ行った後、歩けなくなりました。
「その後は寝たまま排泄していましたが、毎回、顔を上げるようにして出たことを告げてくれました。しっぽを動かすこともできなくなったのに、頭を上げてこちらに来ようとするような動作をしていて」
ほんの数分、付き添ってくれていた家族に見ていてもらい、シャワーを浴びていると小太郎くんは2度嘔吐。急いでそばに行き名前を呼んだ瞬間、心臓が止まりました。
「もう一度、名前を呼んだ時には体の力が抜けていました。私は目の前で起きていることが理解できず。家族に小太郎はもう死んだよと言われて、逝ってしまったんだ……と泣きました」
フードアレルギーを持っていたため食事の管理が難しかったことや、歯を9本抜いてからはフードを1粒ずつハサミで半分に切って食べさせたことなど、思い返すと共に過ごした日々はいつもドタバタ。
「年中、病院に走っていました。これから2人でゆっくりとできると思った矢先にリンパ腫となり、壮絶な3か月。一緒に過ごせた時間は短すぎました。でも、小太郎は一生懸命生きていましたし、私を信頼して、いつもそばにいてくれた。あの子は同志です」
◆小太郎くんが見せた、野良猫たちへの思いやり
たくさんの猫を連れてきては自分のねぐらを貸したり、みんなでご飯を食べたりしていたという小太郎くん。飼い主さんはそんなふうに他者を思いやる小太郎くんの優しさに触れ、動物が幸せになるにはまず、人間同士が歩みよることが1番大事なのではないかと気づきました。
「綺麗すぎる理想だと言われてしまうかもしれないけれど、人間が与える以上のものを返してくれる動物と、互いの命を尊重し合いながら共存していきたい」
ある日突然、現れ、心に棲みついた小太郎。その存在は飼い主さんにとって、今でも光です。
<文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291