話題のうつ病マンガにも…“自称・心理カウンセラー”だらけの危ない現状

話題のうつ病マンガにも…“自称・心理カウンセラー”だらけの危ない現状

EMI「僕が僕であるためのパラダイムシフト」KADOKAWA

うつ病からの回復を描いたWEB漫画『パラダイムシフト』(EMI著)(書籍では『僕が僕であるためのパラダイムシフト』KADOKAWA)が最近SNSで大きな話題となっています。

 うつ病を患った1人の男性の、生きていく中での苦悩や、克服するまでの過程を描いた作品で、「うつ病を論理的に描いていてわかりやすい」「表現が現実的で勉強になった」など反響を呼んでいます。しかし、好評なのと同時に、疑問の声も…。

◆話題の漫画に登場する、高額な心理療法に疑問の声

 漫画の後半、主人公はある心理カウンセラーから心理療法を受け、みるみるうちに、心境や生活が前向きに変化していきます。そこからうつ病が回復に向かっていくのですが、その治療法について懐疑的な声があがっています。

 漫画に登場する心理カウンセラーには実在のモデルがいますが、国家資格は持っていません。「心理カウンセラー」を名乗っているものの、その裏付けとなっているのは、自分が創設した団体です。独自療法であることに対して、読者からは「自称カウンセラーで大丈夫か」「民間療法でうつが治ったと描くのは危険では。本当に信頼性があるの?」といった声も。

 漫画の著者が「回復した」と感じたのは事実でしょうが、他の人がうのみにしていいものか?

 さらに、対面相談の費用が17万5千円と異常に高いことや、独自に作った資格のセミナービジネス(受講料1日10万円前後)をしていることにも、疑問の声があがっています。

 とはいえ、このカウンセラーだけではなく、現在日本では様々な団体や個人が「カウンセラー」を名乗って民間療法を行っています。

◆心理学の資格がやたら多いカオスな状況、どう選ぶ?

 日本の心理学や相談援助に関する資格は、国家資格と民間資格があります。

 民間資格、といっても日本学術会議に属する心理学関連の学会もあれば、日本学術会議から指定を受けていない団体、独自で発行している資格、セミナーや通信教育で資格講座を商品展開しているものなど、千差万別。自分で団体や資格を作って、その団体の代表を名乗って資格ビジネスをしているケースもあり、ありとあらゆる「自称カウンセラー」が跋扈(ばっこ)しているのです。

 前出の漫画のモデルになったカウンセラーも、“心理ソリューション”を自ら創設し、テレビ出演や著書もたくさんあります。

 このようなカオスな状況の中で、どのようにカウンセラーを選べばいいのか素人目からはなかなか区別ができません。そこで、アジア最大規模の依存症施設である榎本クリニックで長年依存症の臨床に携わっている、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳先生に話を聞きました。

「漫画を読んで、患者さんと1回会うだけで後は電話でカウンセリングをするという治療法で…しかも17万5千円という価格設定は何を根拠にしているかわかりませんがあまりにも高額だと思いました(笑)。ですが、基本的にカウンセラーを選ぶのはクライアント(カウンセリングを受ける人)ですから、クライアントの最善の利益になるかどうかは大切な基準なのです。

 例えば、精神科に行って症状が改善しなかった人が、民間の心理療法でよくなるケースもあります。ただ、事前にカウンセラーの略歴を見て、どんな資格を持っているのか調べてから行くほうがハズレは少ないと思います」

◆“信頼性が高い”4つの資格とは?

 いろんな心理療法や、民間の資格などがある中、“信頼性が高い”資格が以下の4つだそうです。

「臨床心理士と、国家資格の公認心理師・精神保健福祉士・社会福祉士。この4つの資格です。

 臨床心理士は、国家資格ではなく『日本臨床心理士資格認定協会』が認定している民間資格なのですが、大学院を出ていないとが得られないので、取得するまでのハードルはすごく高いんです。

 他の3つの国家資格も同様、大学専門コースを履修していないといけないとか、必修科目や専門のカリキュラムを受けてステップアップしていかないと受験できないので、それなりの時間とお金を使わないと受験資格を取得できません。もちろん、授業を教わるのも同等の資格を持った信頼できる講師陣からです。

 また、臨床心理士や国家資格には専属の学会や団体があって、厳格な倫理綱領が定められているのも、信頼できますね」

 臨床心理士になるには、大学の4年間+大学院で最低2年間専門課程を履修、臨床の訓練などを受け、修士論文を書き、臨床心理学などの学位(修士号)を受けて初めて「受験資格」が得られるそう。しかも合格率は60%程度…と気が遠くなるような道のりです。3日程度で取得できる民間協会の資格とは比べ物になりません…。

 また、公認心理師は2017年に施行された日本で初めての心理職の国家資格。まだ歴史は浅いですが、これまで国家資格がなかったことで、様々な民間資格が乱立してしまった背景もあり…ようやく国家資格化されたことで、安心して心の問題を専門家任せられるようになりました。

◆悪徳商法にハマってしまうことも

 しかし、カウンセラーは医師や看護師と違って「業務独占」の資格ではなく「名称独占」の資格で、極論をいうと誰でも名乗ることができます。医師や看護師、弁護士などの場合、無資格で業務を行うと処罰されますが、カウンセラーは誰が行っても違法ではありません(公認心理師でない人が公認心理師と名乗るのは違法)。

「精神疾患の方が、悪徳商法にハマっていくというパターンも現場では時々見受けられます。

 なにかにすがりたいときに出てくる選択肢が、宗教だったり占い師だったり、カウンセリングだったり精神医療だったり…。そんな中で運が悪い人は、あくどい心理療法ビジネスにハマってしまう人もいます。

 やっぱり、カウンセラーがどんな資格を持っているのか確認することは大事だと思います」

◆精神科、心療内科に行くハードルが下がるといい

 コロナ禍で気持ちが沈んでしまう人も多い今、斉藤先生はもっと気軽にカウンセリングに行ってみてはと語ります。

「生きづらさを抱えながら生きてるは世の中に人いっぱいいます。そこでアルコールや薬物、ギャンブルに耽溺してに早い段階で人生が破綻する人もいる。特にコロナ禍では、外出自粛の影響から人と人とのつながりが希薄になり依存症問題にも拍車がかかりやすい条件がそろっています。

 もっと精神科、心療内科のハードルが下がればいいなって思います。カウンセリングって海外だともっと気軽に行けるところなので。国民一人につきかかりつけのカウンセラーが一人いてもいいと思います。

 話を聞いてもらうだけでも全然違います、医療保険適用じゃないところだと相談料が6000円〜1万円くらいかかりますけど、気分転換にマッサージに行くのと同様、信頼できるカウンセラーに、自分の話を聞いてもらえる場所があるといいと思います」

<文/満知缶子>

【満知缶子】

ミーハーなライター。主に芸能ネタ、ときどき恋愛エピソードも。

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