こじらせイケメンの妙な自意識「いま洗脳に興味があります」|辛酸なめ子

こじらせイケメンの妙な自意識「いま洗脳に興味があります」|辛酸なめ子

こじらせイケメンの妙な自意識「いま洗脳に興味があります」|辛酸なめ子の画像

【いまどきの男を知る会 ファイルNo.28 こじらせイケメン】

 イケメンはリア充でモテモテで人生を謳歌している……そんな画一的なイメージを抱きがちですが、実際はイケメンであることを生かしきれず、悶々としている人は少なくないようです。

 スピリチュアル系の出版社、ヒカルランドに勤める20代の若手社員、須崎竜太氏は一見さわやかな癒し系のイケメンながら、周りの友人から話を聞くとただの好青年ではないようです。

 歩いていたら突然地面にスライディングして大地にうつぶせになる癖があるとか(これが本当の地面師でしょうか)、会話の中で5回くらい「俺は顔がいいから」というワードが出てくるとか、エピソードに事欠きません。

 ぜひ取材したいと申し込んだところ、本人から「『こじらせイケメン』というジャンルで取材していただくのはいかがでしょうか?」というありがたい提案をいただき、その方向で話を伺いました。

◆人間関係もこじらせてた

 職場から近い飯田橋のカフェにて、須崎氏のこれまでの半生について話を聞かせていただきました。

「中学生の時、かっこいい先輩を研究して、こういう感じでやればモテるんじゃないかって真似したらめちゃくちゃモテました。しゃべらないようにしてボロが出ないようにしたんです。しゃべると何言ってるかわかんないし、偉そうだし上から目線だと言われる。会社でもよく態度が偉そうだって注意されます」

 ちょうど話を聞いたときは、会社でモメていたようでした。人間関係もこじらせると大変です。

◆バラ色の中学時代から一変、暗黒の高校時代

「とにかく中学時代は告白されまくってバラ色でした。ずっとサッカーをやっててそれなりに強いクラブチームに入っていたというのもあるかもしれません。そのあと音楽好きになって関心がサッカーから音楽に移りました。狭山ヶ丘高校ではうるさくしゃべりすぎたせいか全然モテなかった。他にかっこいい王子様キャラみたいな同級生がいっぱいいたんです。

 僕はそんな中、なんで顔面偏差値47くらいの同級生女子に上から目線で批評されないとならないのか……と傷付いて、思春期のプライドがえぐられました」

 埼玉出身の須崎氏は女子の顔面偏差値を埼玉県内の高校名に例えていましたが、差し障りがありそうなので校名は伏せさせていただきます。悶々としていた高校生活を打破するきっかけとなったのは、語学への興味でした。その高校は修学旅行がなんとロンドンとパリ……英会話の勉強をして臨んだら現地の女子と会話が弾んだ成功体験がきっかけで、英語の勉強に没頭。欧米人女子にモテだしてまたもやバラ色の人生が戻ってきたそうです。

◆人の視線が怖くなり対人恐怖症気味に

 調子が戻ってきた須崎氏は、外国人の女性を街でナンパするようになりますが、その時、日本人の視線がチクチク刺さってくるように感じ、居心地が悪くなることも。それからだんだん視線恐怖みたいな症状が出てきてしまったとか。

「浪人して入った大学の外国語学部では、すでに結構喋れるようになっていたのでだんだん大学がつまらなくなってしまい、どんどん引きこもりの方に……。対人恐怖症っぽくなってしまいました。一回そういうサイクルに入ると卑屈になっていって女の子とも話せなくなって、ただ本を読む生活でした」

◆芸能人より自分のほうがかっこいいのに

 ふとしたきっかけで内向的になる→何かハマる対象を見つけて復活し、スキルを身に着ける、という人生の波があるようです。今は陰謀論に興味を抱いているそうで、そのことがブレイクスルーのきっかけになりそうです。

「陰謀論では広告代理店の洗脳戦略に興味ありますね。以前働いていた編プロでは、チケット情報誌を作ってたんですが、LDH系の若手にインタビューに行くと、正直俺の方がかっこいいなって思ってて。そのグループは平均して顔面偏差値57くらいでしょうか。埼玉県の高校に例えるとK南高校とかT西高校レベル。

 それでもスターになれるのは何でだろうって考えたら、広告出稿料による差が決定的なのかなっていう結論に至りました。広告にお金を出せばいくらでもかっこいいってことになっちゃう。取材しても、自分の美意識を歪めないとならないのが辛かったですね」

 顔以外に歌や踊りの才能とか運とかいろいろあるような気もしますが……世を憂い、こじらせたくなる気持ちもわかります。

◆おばちゃんに絡まれやすい

 その編プロで働いていたときは、年上の女性の対応に苦労することもあったとか。

「イケメンだと、なんだかんだおばちゃんに可愛がってもらえるのはすごい得してると思いますね。ただ、可愛がられたくないおばちゃんに可愛がられたりも。一緒に取材したおばちゃんが帰りの電車で手を繋いできたり、電車が揺れるのに便乗し抱きついてきたりして困りました。でも、彼女は『若い子紹介してあげる』って言ってきたり、私はその気はないよアピールもしてきたんです」

 それは、ちょっと生活に張り合いが欲しかっただけだと思います。セクハラまでになると問題ですが、イケメンに生まれた人の使命として、年上女性には寛大に接していただけると……。

◆最近の女性事情はというと

 最近の須崎さんは、夜遊びに励んでいたら、もやもやしていた気持ちが吹っ切れたそうで、先日も37歳バツイチのイスラエル人女性と深い関係に至ったとのこと。またバラ色の人生が戻ってきつつあるようです。

「英語で話しかけたら盛り上がって、3回目に遭遇したとき、向こうの家にお邪魔しました。その時の話題は、敗戦国における男性性の不可能性みたいな……。それなりに経験つんでらっしゃる方でしたね」

 須崎さんは暇さえあれば難解な本ばかり読んでいて、自然と偉そうな態度になっていたところ、神楽坂の飲み屋で知り合った紳士に「君はもう本を読むのやめた方がいいよ。色恋に生きた方がいい」とアドバイスされ、「今はいろんなん人と出会ってみようと前向きになってます」と、新たな目標ができたそうです。とりあえず良かったです。

◆精霊たちも応援してくれている

「熊野古道に行ったら精霊たちにも応援してもらいました。とにかく精霊がすごかったですね」

 スピリチュアル系出版社で働いていることもあり、感度が高いようです。

「熊野古道の精霊は、日本書紀的なイメージですね。音で言うと、木魚よりも前の雅楽でもなくて、まだ日本になる前のなんか……あれですね。仏教以前、もはや神道以前のスピリチュアルな雰囲気が多分にありました」

 こじらせの気配を感じさせるコメントありがとうございます。こじらせの分だけ成長し、内面もイケメンになっていっている須崎さん。ただ人生を謳歌しているリア充イケメンよりも魅力的かもしれません。

<文/辛酸なめ子>

【辛酸なめ子】

東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著者は『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)など多数。

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