『まだ結婚できない男』阿部寛の皮肉が、前作より女性にやさしいわけ

『まだ結婚できない男』阿部寛の皮肉が、前作より女性にやさしいわけ

(画像:『まだ結婚できない男』公式HPより)

 視聴率20%を超えたあの人気ドラマが帰ってくる!――そんな多くの期待を集めて放映開始された『まだ結婚できない男』(フジテレビ系、火曜夜9時〜)。

 空気が読めない独善的な独身貴族の建築家の主人公・桑野を阿部寛(55歳)が引き続き演じ、以前と変わらないキャラクターとコミカルなストーリーは、続編を待ち望んでいたファンたちを大いに喜ばせました。

 ですが、13年前に放送された前作とはどこか異なった印象を受けるのです。

◆桑野の皮肉が「令和」の時代に合わせて変化?

 前作『結婚できない男』はその内容の面白さもさることながら、桑野の女性たちに対する切れ味鋭い皮肉や偏屈な言動の虜になる視聴者が多く、動画配信サイトや再放送の放映でもその都度ファンが増えるほどの大ヒット作になりました。

「若い子はね、素直で可愛くていいんですよ! 人の言うことにいちいちチャチャ入れたりしないしね」

「自分だってもういい年なんだし、断られたってしょうがないでしょう。」

「ヒステリーか…?」

「客も我慢してんだろ。もっと若くてさ、女子大生みたいなのがいいのにさ」

 前作のヒロイン・夏美先生(夏川結衣)やみちる(国仲涼子)などとの丁々発止のやり取りの中で彼女たちに向けられる、桑野の飾りない男の本音に、爽快さを感じる男性が多かったといいます。女性たちから「だから結婚できないんだよ!」と思わずツッコミたくなるような隙があるのも絶妙でした。

 ただ、客観的にみると女性に対して辛辣なセリフばかりです。変人・桑野だから許される部分はありますが、女性蔑視に対して厳しくなった今だったら、物議をかもしたかもしれません。

 なかでも、妻が仕事を続けるか否かで悩むクライアントの夫婦に対し、桑野が放った「ご主人はあなたを必要としているわけだし、あなたに家にいて欲しいんですよ。今の職場でこんなに求めてくれる人がいますか? 必要とされる所にいた方が良いでしょう、居ても居なくても同じような所にいるよりは」

 という13年前のセリフは、今見るとなかなかすごい。多様性を尊重しあうことが重要視されている令和の時代に、このセリフをSNSなどで放ったのならば、不快感を持つ人は多かったでしょう。

 そんなご時世が影響されているのか、桑野の言動がアップデートされているように感じます。

 唯一思い出されるのが、第一回で「仕事が充実していて、気がついたら独身のまま40になっていた」という女性弁護士・吉山まどか(吉田羊)に対し「自分の状況を一般化することで、責任を回避しようとするパターンか」と彼女の目の前で言い放った程度。

 他は、前シリーズのような、独身であることや年齢、物言う女性をわかりやすく揶揄するような発言は見受けられません。

 13年の時が流れ、今はセクハラや女性の年齢・ルッキズム差別が問題になる、コンプライアンス重視の時代になりました。

 そんな現在、過去の桑野の言動は時代錯誤と言われても仕方ありません。一年ほど前『ちょうどいいブスのススメ』というドラマのタイトルが放映前から問題視されたように、少しでもひっかかる言動があれば、ストーリーの流れから切り取られて炎上してしまいます。

「ドラマの中の出来事」、「それが桑野のキャラクターだ」で押し通せる時代ではなくなったのです。

◆時を経て、成長の跡が見える桑野の姿

 53歳になった桑野は相変わらず結婚はできていませんが、ところどころ成長や変化の部分が今作に見受けられます。

 まずは、仕事帰りによるコンビニで買う牛乳が、健康を気にしてなのか豆乳になっていること。そして、自宅でクラシック音楽をかけながら、指揮のまねごとをする際、指揮棒を持つようになったこと、建築家としての地位もテレビ出演や講演を要請されるまでになったということ、などです。

 また、前作では他人を突き放してばかりだった桑野が、出会い系サイトに登録したり、まどかの弁護士事務所や有希江(稲森いずみ)のカフェに足しげく通うなど、どこか人とのつながりを求めているような気さえします。

 13年たち、時代も変わりましたが、桑野も年を取りました。夏美先生との別れを経て、成長し、彼なりの社会性を身につけたのであってもおかしくありません。 

 しかし物語はまだ序盤。成長した新しい桑野の姿を引き続き見ることができるのか、それともやっぱり相変わらずの皮肉屋で前作のような切れ味鋭い言動がでてくるのか、これからも「まだ結婚できない男」が楽しみです。

<文/小政りょう>

【小政りょう】

映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

関連記事(外部サイト)