仲野太賀、憧れの俳優と共演「最大の目標のひとつでした」

仲野太賀、憧れの俳優と共演「最大の目標のひとつでした」

仲野太賀さん

『今日から俺は!!』『この恋あたためますか』、主演映画『生きちゃった』『泣く子はいねぇが』を始め、特にここ数年の快進撃には目を見張るものがある俳優・仲野太賀さん。今月28歳を迎え、大人としての空気をまといながら、ますます勢いを増しています。そんな仲野さんが、「俳優として最大の目標のひとつだった」と語る役所広司さんとの共演を果たした映画『すばらしき世界』が公開中です。

 人生のほとんどを刑務所で過ごしてきた元殺人犯の男・三上(役所)の出所後の日々を見つめた本作で、テレビマンとして近づく青年・津乃田を演じた仲野さん。三上と津乃田の関係性、役所さんとご一緒した感想や、コメディから骨太な作品まで、出演作が実にバラエティに富む仲野さんに、作品選びのポイントも聞きました。

◆役所広司との共演から感じたこと

――津乃田は主人公の三上を見つめていく重要キャラクターでしたが、原案である佐木隆三さんの小説『身分帳』では、津乃田に相当する役柄は途中でいなくなります。

仲野太賀さん(以下、仲野)「そうなんです。西川美和監督もエッセイで書かれていますが、津乃田は、佐木さんを投影した人物です。そして(その原案を現代に置き換えて、脚本・映画化した)西川監督の視点を持つ人物でもあります。『身分帳』では途中でいなくなってしまいますが、その眼差しは物語を通じて、ずっと続いているんです。三上を描くうえでとても重要なポジションで、三上という存在を浮き彫りにする橋渡し的な存在だと思いました」

――役所広司さんとの共演はいかがでしたか?

仲野「役所さんとご一緒できるということは、俳優として最大の目標のひとつでしたし、いつか必ず辿り着きたかった場所でした。役所さんが三上を演じることによって、人間がいかに複雑で多面的で重層的であるかを教えてもらった気がします。人間の奥行みたいなものを役所さんは体現されている。きっと三上に限らず、役所さんはそうやって人間を演じているんだな、人間をそうして捉えているんだなと感じました」

◆誰だって過ちを犯す可能性はある

――津乃田と三上、ふたりのお風呂場でのシーンが特に素晴らしかったです。

仲野「ありがとうございます。取材者と対象者であるという距離感から、関係が深くなるにつれて友人のようになったり、時には突き放してみたり、三上がいろんな面を持っているからこそ、津乃田はそれに振り回されながらも、寄り添っていく。津乃田は途中からカメラを持つことを止めます。人として向き合うことの証明、覚悟を決めたのだと思います。お風呂場は人と人が慈しみ合うとか、優しさを持ち寄るといったシーンにしたかった。関係性でいえば、父と子のように映ればと思いました」

――三上のような犯罪者でなくとも、現代社会に生きづらさを感じている人は数多くいると思います。何か思うところはありますか?

仲野「一度レールを外れてしまった人への社会の不寛容さというのは、僕も感じます。誰しも過ちを犯す可能性はあるし、その危険性を孕んでいる。でも今は、外れてしまった人を徹底的につぶしていくような社会ですよね。それって緩やかに自分たちの首を絞めているのと同じじゃないかなと。

 誰かの人生をつぶすような力があるのだとしたら、更生させる力だってあっていいはずなのに、もはや息苦しさが普遍になってしまっている。まっとうな人ほど、そうした閉塞感を覚えるのじゃないでしょうか。だからこそ、『すばらしき世界』というタイトルをつけるこの映画には意義があると思うし、これは、ラストに立ち尽くした人たちの話なんじゃないかと思います」

◆「自分史ノート」があるなら、きっと仕事のことばかり

――ところで仲野さんに「身分帳」のような「自分史ノート」があるとしたら、どんなことが一番書かれていると思いますか?

仲野「仕事のことばかりでしょうね。13歳くらいから仕事をしてきて、思春期もずっと仕事でしたし、片時も頭から離れたことがありません。仕事関連が多いでしょうね」

――その仕事関連というのは、たとえばすごく感動した出来事とか、反省点とか、どんな内容が多いと思います?

仲野「プライベートでも、仕事でご一緒した人とお酒を飲むことが多いんです。だから、そうした人たちと、こういう話をしたな、ああいう話をしたなという内容が多いんじゃないかな」

◆作品を選ぶ際に大切にしていること

――その際の、失敗談的なエピソードはありますか?

仲野「先輩方と複数人で飲みに行ったお会計のとき、すごくよくしてくれている、とある先輩から、もっと上の、僕より10個くらい年上の先輩に膝カックンというか、『軽く蹴っちゃえよ』みたいに言われたんです。僕も酔っぱらっていたので、『大丈夫、大丈夫』と言われて、蹴るというか、本当に軽くチョンっとやったら、めちゃめちゃ怒られまして(苦笑)。1次会で帰されました。まあ、当たり前なんですけど。蹴って良いはずがなかった(苦笑)。ちゃんとそのあと謝って、許してもらいましたけどね(笑)」

――許してもらえてよかったです(笑)。仲野さんの出演作は本当にバラエティに富んでいますが、作品は何か意識して選んでいるのでしょうか?

仲野「自分が誰と仕事をしたいか、何をやりたいか。企画だったり人だったり、何か惹かれるものがあるかどうかです。タイミングや巡り合わせによって、その判断が変わることももちろんありますが、それはそれでいいのだろうと思います。ただ、自分が選んだとちゃんと言える、責任を取れる作品を選んでいます」

(C) 佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

<文・写真/望月ふみ>

【望月ふみ】

70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi

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