“疑似妻子”つきモデルハウスに賛否。企画担当に意図を聞いた

"家族を持たない人に家族と暮らす幸せを感じてもらう"疑似妻子つきモデルハウスに賛否

記事まとめ

  • 注文住宅を手掛ける株式会社リガードが、モデルファミリー付きのモデルハウスを企画
  • 妻役と娘役の俳優が出迎え、モデルハウスで家族団らんの時間を過ごすことができる
  • NHK『クローズアップ現代+』で取り上げられ、ネットでは様々な意見があがった

“疑似妻子”つきモデルハウスに賛否。企画担当に意図を聞いた

“疑似妻子”つきモデルハウスに賛否。企画担当に意図を聞いた

(以下画像:リガード「モデルファミリー付きモデルハウス」プレスリリースより)

 住宅展示場のモデルハウスは、家だけでなく家具や雰囲気、すべてが素敵につくりこまれているもの。家を買う予定がなくても、あの場所に行くだけで「いつかこんな家に住んでみたい!」とテンションがあがりますよね。

 でも、家や家具だけじゃない! さらに夢が持てそうな(?)アイデアモデルハウスが登場し、ネットで話題になっています。それが「モデルファミリー付きモデルハウス」です。

◆モデルファミリー付きモデルハウスとは

 この一風変わったモデルハウスを企画したのは、注文住宅を手がけている株式会社リガード。誰よりも「家族と暮らす幸せ」を追求する建築会社として、“今家族を持たない人に、家族と暮らす幸せを感じてもらう”ためのリアルなバーチャルサービスとしてのモデルファミリー付きモデルハウスを開発したのだそう。

 今回の企画では、モデルハウスで「活発で明るい妻役」「パパのことが大好きな7歳の娘役」の二人の俳優と一緒に参加者が理想の家庭を演じるというもの。そのため、参加がイメージしやすいのは独身男性になります。多数の応募があったようで、なんと最初に設定していた締め切り日よりも前に募集終了したほど。イベント自体は「家族の日」にあたる11月17日に実施されました。

 公式サイトで公開されていたストーリーによると、まず玄関を開けておうちに入るところからスタート。妻と娘が笑顔でお出迎えしてくれます。次に憧れのアイランドキッチンで一緒に料理を作って、家族団らん食事タイム。そのあとは、夫婦の時間なのでしょうか。妻と二人で昼から乾杯なんて演出も。お酒も用意されているようです。その後、子どもと一緒に工作……という時間が過ごせるのだそうです。

 まさに“絵に描いたような”家族。11月8日にはNHKの『クローズアップ現代+』に取り上げられたこともあり、ネットでは様々な声があがりました。

◆ネットで集まる好意的な声と奇妙がる声

 Twitterを見てみると、「斬新」「ここでコントをしてみたい」といった肯定的な受け取りをする声がある反面、「気持ち悪い」「負の感情が湧き出る」「ディストピア」といった否定的なものも。

 興味がある人の中には「定期的に通えたら」「イメクラみたい」といった、ほかの遊び場の“別バージョン”と捉えている人もいました。住宅会社のモデルハウスという前提が抜けているようですね……。

 今回は特に、家族設定にひっかかりを覚えた人が多かったようで「おままごとか」「世にも奇妙な物語に出てきそう」といったものや「理想的な家族ってなんだ?」という声も上がっていました。今回の報道を見て「自分を見つめなおす機会」なんて意見まで。

 多様性が謳われる中、モデルファミリーの姿に様々な思いを抱いた人が多かったようです。

◆反響を受けて企画側は?担当者に直撃してみた

 ネットでの反響を受けて、企業側はどのように考えているのでしょうか。そこで今回、リガードの高谷一起さんにイベントの反響などについてお話を聞きました。

「ブレスト段階では100〜200くらいのシチュエーション候補が出ました。今回イベントのなかでは『パパ、おかえり!』と娘役が駆け寄ってくる設定になったのですが、『普通はパパが帰ってきても気づかないよね』『駆け寄ってこないよね』という声もあったんですよ」(高谷さん、以下同)

 中には一緒にカレーを作る……なんて案もあったそうですが、最終的に自然にモデルハウス内を誘導体験できる内容に削られていったとのこと。でも、どんなシチュエーションにせよ、一般人が参加する即興劇として成立するか不安ではなかったのでしょうか!?

「もちろん、ありました。今回はプロの演出家の人にお願いをして、事前のチェックを何度も重ねましたが、やはり当日まで心配で。でも、最終的に大きな問題は起きませんでした」

◆即興劇は意外とスムーズに進行

 想定外のセリフが飛んできて来ても大丈夫だった……?

「はい。妻役にも娘役にも、表のセリフにはない細かい裏設定を設けたことで、想定外の質問が飛んできても反射的にこたえられるようにしていました。でも、メディアさんに来てもらったときに、するどいアドリブを入れてくる人がいて、ちょっとドキッとしましたが(笑)」

 ちなみにそのシーンはテレビでも放映されたそうで、妻役からの「最新、仕事どう?」という問いかけに、本当は「最近、うまくいっていない」「順調だよ」等の受け答えを想定していたところを「仕事辞めてきた」と想定と大きく違う発言をした人がいたとのこと。その方、狙ってやりましたね、絶対。

「一般のお客さんには5名体験いただいたのですが、どの方もとても満足していただけたようです。『楽しかったです』と、とても喜んで帰られました」

 素人が即興劇に参加するなんて難しそうと思っていたのですが、意外とスムーズに、しかも満足度が高く実施できたようです。

 でも、ネットではいろいろな声が上がっていましたよね。それについては「企画として意図したものではなかった」と話します。

◆独身男性向けに集客を狙いたかった訳ではない

「とある媒体に掲載された記事で『独身男性向けに集客を狙う』といった見え方になってしまい、そこからさまざまな意見がでるようになって、弊社からの伝え方を間違ってしまったと気づきました。

 私たちがやりたかったのは独身男性向けの販売ではなく『住宅会社が、住宅ではなく、住宅が生み出す暮らしを販売していくというコンセプトの打ち出し』をしていくことでありました。色々なパターンは考えられましたが、その第一弾のチャレンジとしてのモデルハウス体験会であったのです」

 今、様々な分野で商品を所有するモノ消費から、商品を購入したことで体験を得られるコト消費へと移り変わってきています。今回の企画は、「家」というスペックを並べたモノを売るのではなく、その「家」を購入することで得られるだろう「体験」を感じてもらいたいという意図がありました。

「今回、シナリオの中に中2階で勉強する娘の宿題を手伝いに行くというシーンがあります。これは、ただ『この建物には中2階がある』というスペックの案内ではありません。『中2階があることで、子ども部屋として活用もできるし、キッチンで料理をする妻も子どもと夫の様子が見える』という暮らしを体験してもらいたかったのです」

◆理想の家族像を考え直すきっかけになれたなら

 家のスペック紹介だけでは見えてこない、暮らしを見せたかったという高谷さん。その暮らしのサンプルとした家族像が話題になったことについては、どう考えているのでしょうか?

「当然今回の体験会の設定の家族像が理想と言うつもりはありません。ただ、もしこのような家族像を体験してみたいなという人たちがいたとして、間接的にこれが自分にとっての理想なのか判断する指標になれたのであればそれも一つの価値だと思っています。結果として『こういう家族像は求めていない』となってももちろんOKです。このモデルファミリー付きモデルハウスがきっかけで、個々人の理想の家族像、暮らし像について考え直すきっかけになれたのであれば有り難いと思っています」

 斬新な発想で、いい意味でも悪い意味でもさまざまな反応を呼んだモデルファミリー付きモデルハウス。次はどんな話題の体験企画を実施してくれるのか、密かに期待したいと思います。

<文/ミノシマタカコ>

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