「アナ雪2」の主題歌が難しい…合唱できたレリゴーとの違い

『アナと雪の女王2』主題歌はプロも恐れをなす難曲 イディナ・メンゼルが限界に挑戦?

記事まとめ

  • 映画『アナと雪の女王2』は、前作を遥かに上回るペースで興行収入が43億円を突破した
  • 松たか子が歌う主題歌の「イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに」はかなりの難曲
  • イディナ・メンゼルも限界に挑戦しているという同曲は歌手の楽曲への理解度が問われる

「アナ雪2」の主題歌が難しい…合唱できたレリゴーとの違い

「アナ雪2」の主題歌が難しい…合唱できたレリゴーとの違い

『アナと雪の女王 2 オリジナル・サウンドトラック』 Universal Music

 11月22日からの公開10日間で興行収入が43億円を突破し、大ヒット中の映画『アナと雪の女王2』。“レリゴー”が社会現象となった前作を遥かに上回るペースなんだそうです。

 そんな今作の主題歌は「イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに」。前作に引き続き、エルサ役の声優を務めた松たか子(42)が歌っているのですが、これがかなりの難曲で驚いてしまいました。

◆レリゴーより、はるかに難しい主題歌

 12月2日に行われた映画の大ヒット記念イベントでは、アナ役の声優を務めた神田沙也加(33)が「大変な曲になっています。イディナ(メンゼル)さんが限界に挑戦しているらしい」と松さんに伝えたエピソードも披露され、プロも恐れをなすほどの構成であることがうかがえます。

 老若男女が大合唱した「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」とは異なり、軽々しく歌わせないといった凄みすら感じさせる「イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに」。その理由をいくつか見ていきましょう。

◆おいそれとは歌えない複雑なリズム

 まず気づくのは、めくるめくリズムです。昨今の日本のヒットチャートではめったにお目にかからない8分の12拍子の中に、細かな休符や、音をつなぎ合わせるタイやスラ―がちりばめられている。さらには、“タタタ”と3つで刻んでいたところから、“タータ、タータ、タータ”(<愛する人たちは ここにいるの 危険をおかすこと 二度としないわ>の部分)のように、アクセントを変える仕掛けも施されています。

 この動きのあるリズムこそ、「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」にはなかったものであり、おいそれとは歌えない敷居の高さを感じさせる構えになっているのでしょう。サビで声を張り上げるところは似ているように聞こえても、そこに至るまでのストレスが段違いなのですね。

 同時に、これをただ事務的にこなすだけでは不十分で、8分の12拍子の中に隠れた3拍子のグルーヴを感じさせなければなりません。一説によると、3拍子というのは馬車を引く馬の蹄鉄のリズムなのだそうで、つまり力強い前進を印象付ける必要があります。

 このように、様々な約束事を守りつつ、3拍子の高揚感を自然に感じさせるのは、至難の業と言えるのではないでしょうか。

◆一瞬のうちに起きる鋭い転調

 次は、一瞬のうちに行われる鋭い転調です。歌いだしからの短調が、楽曲の主題である<未知の旅へ>で長調へと変わるのですが、これがあからさまに違うキーに移行したり、いくつかの和音をやりくりさせたりするのではなく、Eフラットという同じ主調で行われていることも楽曲を引き締めているように感じます。

 これは、かつてのアメリカの大作曲家、コール・ポーター(1891-1964 代表曲に「Night And Day」、「You’re The Top」など)が得意にしていた手法で、「I Love Paris」や「Love For Sale」などの曲で聴くことができます。

「イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに」とコール・ポーターに共通しているのは、いかにもこれから転調しますよといったクドさがない点です。裏を返せば、聴き手に場面が変わるヒントを与えていないとも言える。

 だからこそ、歌手の楽曲への理解度が問われるのですね。なぜなら、短調から長調へと変わる根拠を、詞や歌い方のニュアンスを総動員して示さなければならないからです。だから、ただ<未知の旅へ>の最高音が出るとか、その程度のことでは太刀打ちできないような作りになっている。ここも「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」にはなかった要素でしょう。

 主題歌の社会現象化という想定外の事態で大ヒットした前作から5年。柳の下の2匹目のドジョウを狙いたくなるところ、それを毅然と突っぱねた「イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに」の完成度に、ディズニーのプライドを見た思いです。

<文/音楽批評・石黒隆之>

【石黒隆之】

音楽批評。ipodに入ってる曲は長調ばかりの偏食家

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