伊藤詩織さん、バッシングの嵐で感じたこと「中傷に法的措置も」

伊藤詩織さん、バッシングの嵐で感じたこと「中傷に法的措置も」

2017年の女子SPA!インタビュー時の伊藤詩織さん。撮影/我妻慶一

 ジャーナリスト伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之氏に性的暴行を受けたと訴えた裁判で、東京地方裁判所は、12月18日、山口氏に330万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。

 また、伊藤さんの記者会見での発言などで名誉を毀損されたとして、山口氏が伊藤詩織さんに1億3000万円の損害賠償と謝罪広告を求め反訴していましたが、判決は山口氏の請求を退けました。

 18日の判決後、週刊SPA!編集部も参加した報告集会で、伊藤詩織さんは「この2年間、死ななくてよかった、生きていてよかったと思います」と涙ながらに語りました。

◆誹謗中傷に対して「法的措置をとる」

 また、翌19日、伊藤さんは日本外国特派員協会で記者会見を行い、攻撃・誹謗中傷(セカンドレイプ)に対して「法的措置をとる」ことを明かしました。

 記者から、伊藤さんを思わせる女性の横に「枕営業大失敗!!」の文字が入ったイラストを書いた漫画家・はすみとしこ氏や、「『伊藤詩織』という女の正体」などの記事を複数回掲載した『月刊Hanada』(飛鳥新社)の名前を挙げ、「もし東京高裁で勝訴した場合、そういうセカンドレイプ的な表現をしてきた人たちを訴える可能性はありますでしょうか?」との質問が出たのに対し、次のように答えました。

「どんな結果になろうと、民事でのピリオドが打てましたら、次は(攻撃・誹謗中傷への)法的措置を考えています。というのは、こういう措置を行わなければ、同じことがどんどん続いてしまう。

 一番やはり心苦しいのは、私に対するコメントを見て、他の(性暴力)サバイバーたちも『同じように攻撃されるんじゃないか』と思ってしまうことです。性暴力サバイバーに向かうネガディブな声をウェブに残すこと自体が、いろいろな人たちを沈黙させてしまう理由になるので、法的措置をとりたいと考えています」(伊藤さん、以下同)

◆7月に自殺未遂していたことを明かす

 18日の報告集会で、伊藤詩織さんは、「今までなかなか語られてこなかった性暴力被害者の声たちが聞こえ始め、(以前に)私が観ていた景色と、今見ているこの今日の景色が本当に違うものだな」と話した上で、性暴力被害にあった人々に向けて呼びかけました。

「私ひとりが喜ぶことではなく、同じ経験をした多くのサバイバーの皆さんに、この会場の雰囲気を見ていただきたいんです」

「裁判を起こされていて、本当に孤独を感じている方々がたくさんいると思います。また、そこにたどり着けない、苦しんでいる方もたくさんいると思います。……それは当たり前のことです。誰も弱くないし、誰も強くない。私も、皆さんと同じです」

 また、元気に見えてもトラウマに急に襲われ、今年7月には「自分の命を断とうと思い、自殺未遂をしてしまいました」と告白。

 計画していたことではなく、「ふわっと足元をとられた」感じで自分でも理解できない行動を起こしてしまったそうです。幸い1〜2日の入院ですみ、民事裁判を終えられた、と振り返りました。

◆ネット上での攻撃、リアル社会での励まし

 性暴力被害者に対する攻撃、いわゆるセカンドレイプが、伊藤詩織さんだけでなく他の被害者に対しても多くなされている現状についても言及。

「社会の温度が少しでも高くなれば、発言しやすくなると思いますし、『助けて』って言いやすくなると思うんですね」

 自身がネットでひどく攻撃されて、「体が冷たくなってしまった」かのように悩んだ時期もありましたが、現実の世界での反応は全く違ったといいます。

「道端で会う人、気づいてくださる方、みなさんポジティブなお声がけをしてくださって、誰からもネットで書いてあるようなことを面と向かって言われる機会がなかったんですよ。『ああ、オフラインの世界ってこんなに素敵なんだな』と思いました。(中略)

 もっと『オフライン(ネットではなく実際)で、面と向かっていろんなことを話し合ってみたい、対話をしてみたい』という思いはずっとあります」

 ネット経由で女性から「同じ性として恥ずかしい。このことが本当であったとしても、日本人女性としてこういう話をするべきではない」といった批判が来ることもあり、それに対しては自ら返信していたそう。

「そういう方には、“どういった背景や事情があるんだろう? 何かきっと、傷ついているからなのでは?”と気になって、メールなどで『ぜひ、もう少し、お話を聞かせて頂けませんか?』と連絡をしたんです。けれど、やはり、返事がきた試しがなかったですね。

 今後、もう少しこういった話がオープンにできたらいいな、と私は願っています」

◆「同意のない性交」だけでは罪に問えない法律の限界

 今回の裁判は大きな一歩だとしても、まだまだ性犯罪被害者を取り巻く状況は問題が山積みです。

 まず、警察の対応が被害者のハードルを上げています。事件当初、伊藤さんは警察官から「よくある話だし、事件として捜査するのは難しいですよ」と被害届を出さないよう説得されました。捜査が始まってからも、男性捜査官の前で等身大の人形を使ってマットの上で現場の再現を求められ、何度も「処女ですか」と聞かれるなど、つらかった思いを著書で吐露しています。

 また法律面でも、現在の刑法では、「意に反した性交」だけでは罪に問うことができません。強制性交等罪や強制わいせつ罪などは、“加害者による暴行・脅迫があったか?抵抗が非常に困難な状態であったか?”を立証することが要件とされてしまっています。

 例えば今年3月、名古屋地裁で、実父が中学生の頃から長女に性的虐待を続けてきた事実は認めながらも、なんと無罪判決を言い渡されて、世に大きな疑問の声が高まりました。

 伊藤さんは、2020年に刑法・性犯罪規定の改正内容を見直すか検討されることに触れ、「日本に今、刑法で『不同意性交がレイプだ』という考えがあれば、私の経験したことも、刑事事件で違う結果があったかもしません」と話しています。

 今回の敗訴を受け、山口氏はあくまで「性行為に合意はあった」と主張しています。「一方的な判決」だとして、18日の会見で控訴する意向を示しました。今後が注目されます。

<文/女子SPA!編集部>

【女子SPA!編集部】

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