別れた男女がまた恋に落ちることはあるのか。恋愛映画の巨匠に聞く

別れた男女がまた恋に落ちることはあるのか。恋愛映画の巨匠に聞く

『男と女 人生最良の日々』より(以下同)

 フランスの名匠クロード・ルルーシュが1966年に制作した恋愛映画の傑作、「ダバダバダ……」の旋律で知られる『男と女』は公開当時、繊細に描かれた男女の機敏、斬新な演出、美しい音楽がセンセーショナルを巻き起こし、1966年の第19回カンヌ映画祭で最高賞のパルムドール、1967年アカデミー賞外国語映画賞とオリジナル脚本賞を受賞するという快挙を成し遂げた。主演のアヌーク・エーメはアカデミー賞主演女優賞を逃したものの、1967年ゴールデン・グローブ賞では映画部門主演女優賞(ドラマ)を見事獲得。

 あれから50年以上のときを経て、主演のアヌーク・エーメとジャン=ルイ・トランティニャンを再び主役に迎えた『男と女 人生最良の日々』が1月31日に公開される。なぜ、別れた男と女は凝りもせず再び恋に落ちるのだろうか。永遠の愛なんてあるのか――。愛の伝道師として49本もの映画を生み出してきたルルーシュ監督に、愛と人生について聞いてみた。

【『男と女 人生最良の日々』あらすじ】

 かつてはレーシング・ドライバーとして一世を風靡したジャン・ルイ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は海辺の施設で余生を送っている。年老い、過去の記憶を失い始めたジャンを心配した息子アントワーヌはジャン・ルイが愛し続けてきたアンヌ(アヌーク・エーメ)を探し出し、父親と会ってほしいと頼む。アンヌとジャン・ルイは再会し、相手がアンヌだと気づかないジャン・ルイはアンヌへの思いを話し始める……。

◆別れても本物の愛は不滅

――1966年の『男と女』の第1作目から50年以上も経ち、第3作目の本作を撮影したときにジャン=ルイは88歳、アヌークは87歳となりましたが、彼らの年のとり方があまりにも違うことに驚きました。

クロード・ルルーシュ監督(以下、ルルーシュ監督)「ジャン=ルイは足も不自由だし、目もあまり見えなくなってしまいました。ほぼ同じ年の2人ですが、違う歳月が流れたみたいです。しかし、ジャン=ルイのユーモアと人生観にはこれまで彼が培った人間性を感じました。彼には死が近づいている一方、アヌークはますます美しく、愛らしく、上品で健康です。こういった2人の見せる正反対の人間性、人生と愛、人のもつ欠点と矛盾といったことを本作では描きたかった」

――1作目『男と女』から2作目『男と女 II』にかけて、別れてしまったジャン=ルイとアヌークは年月の隔たりなどなかったように再び恋に落ちます。なぜ何度も復縁するカップルは少なくないのでしょうか?

ルルーシュ監督「愛は不滅です。別れたとしても本物の愛は永遠に続く。何ひとつ確かなものがない人生において、恋人が「I Love You」と語るときにビッグバンが心に起こる……この瞬間こそが、私にとっては真実です。

 現実の幸せとは、将来の約束でも、過去の想いでもなく、“今ある”喜び。美味しいワインを飲んでいる瞬間や恋人とベッドに横たわっている瞬間を十分に味わうことが幸せにもっとも近づく方法だと思います。ですから、そういった日々の小さな幸せを映し出すのが私は好きなんです」

◆「人生最良の日々はこれから来る日々」

――愛の瞬間は真実だから別れた人と恋に落ちることもあると。監督の恋愛観を一言で言うと?

ルルーシュ監督「女性を幸せにすること。人生経験が浅い若い女性にとって愛は気まぐれですが、そういった女性を幸せにするのは難しい。ですから、『男と女』では、人生の酸いも甘いも噛み分けた女性を幸せにするという私の理想の恋愛を描きました。とはいえ、女性と恋に落ちるたびに私の恋愛観も変わるのですが(笑)」

――過去に監督はご自分のことをロマンティックな楽観主義者だとおっしゃっています。

ルルーシュ監督「私は常に18歳ですから(笑)。ヴィクトル・ユーゴーは『最良の日々はこの先の人生に訪れる』と言っていますが、私にとっても人生の最良のときは、これから来る日々なのです。つまり、明日は今日より幸せになる。先程言ったように“今”を味わうことが一番の幸せだから。これまでの私の人生でも去年よりも今年のほうが興味深かったし、きっと来年は今年よりももっと楽しい一年になるでしょう」

◆始まりがあり終わりが来る…愛の物語は同じ

――1966年に1作目が制作されてから3作目の完成まで53年が経ちましたが、この間、フランスでは結婚の概念が変わったように思います。現代のフランスでは結婚以外のカップルの形、事実婚やパートナーシップなどがあり、結婚の数は減る傍ら婚外子の数は増えています。結婚や家族の概念が変わっても、愛の概念は変わらないと思いますか?

ルルーシュ監督「時代が変わっても愛の物語は同じ。始まりと中間があって終わりが必ず来る。人は違う道を歩みながらも最後に辿り着くのは同じ所――死です。人間は誰かに愛されるために、様々な困難に立ち向かえると思うのです。私が映画を作り続けるのは誰かに愛されるためですが、実は、映画を女性以上に愛してしまったからなのです(笑)」

<文/此花わか>

【此花わか】

映画ライター。NYのファッション工科大学(FIT)を卒業後、シャネルや資生堂アメリカのマーケティング部勤務を経てライターに。ジェンダーやファッションから映画を読み解くのが好き。手がけた取材にジャスティン・ビーバー、ライアン・ゴズリング、ヒュー・ジャックマン、デイミアン・チャゼル監督、ギレルモ・デル・トロ監督、ガス・ヴァン・サント監督など多数。Twitter:@sakuya_kono Instagram:@wakakonohana

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