“不妊治療をがんばりすぎて妊娠しにくい体になる”という矛盾

不妊治療を受ける人が増加 「頑張れば頑張るほど妊娠しにくい体になる」医師が指摘

記事まとめ

  • 不妊治療を受ける人が増えているといい、放生勲先生が不妊治療の現状を語っている
  • 「不妊治療を頑張れば頑張るほど、赤ちゃんを迎える体からは遠ざかる」と先生は指摘
  • 不妊治療というのはストレスのオンパレードで、女性の体にかかる負担も相当だという

“不妊治療をがんばりすぎて妊娠しにくい体になる”という矛盾

“不妊治療をがんばりすぎて妊娠しにくい体になる”という矛盾

写真はイメージです(以下同)

「赤ちゃんが欲しい」と意識しはじめたものの、なかなか授からず不妊治療をスタート。しかし、成果が出ず、体のしんどさに加え、焦りと不安でこころのバランスを崩してしまう……。

 不妊治療を受ける人が増えているいま、決して珍しい話ではありません。

「不妊治療をがんばればがんばるほど、赤ちゃんを迎える体からは遠ざかってしまう」

 そう指摘するのは、『卵巣セラピーで妊娠体質をつくる』の著者で、20年にわたり、内科医の立場で妊活や不妊治療をサポートしてきた、こまえクリニックの放生勲(ほうじょう・いさお)先生です。

 赤ちゃんを望んで始めた不妊治療によって、なぜ、赤ちゃんが遠ざかってしまうのでしょうか? 不妊治療の現状を伺いました。

◆不妊治療のストレスで、心身がボロボロになる悪影響

――先生のクリニックではどのような治療をしているのでしょうか?

放生先生(以下、放生):うちは普通の内科のクリニックですから内診台はありません。風邪や糖尿病の患者さんと同じように対面でお話を聞き、検査をして妊娠できない理由を探り、必要に応じて漢方薬や薬を処方していきます。つまり、妊娠しやすい、妊娠を維持できるからだづくりのサポートですね。

 あとは、基礎体温表のつけかたをレクチャーし、タイミング法を指導。人工授精や体外受精を希望する方には、信頼できる医療機関を紹介します。

――どのような相談が多いですか?

放生:いろいろな方が来院されますよ。不妊治療は通常、排卵日を予測し、それに合わせてセックスをする「タイミング法」、精子を直接、子宮の中に注入する「人工授精」、それでもダメな場合、「体外受精」へと進みます。次の段階へ進むことを「ステップアップ」と言いますが、「ステップアップしようかどうしようか」と悩んでいる方は多いですし、また、不妊治療自体がつらくてやめたい、でも赤ちゃんを諦めたくはないという方も多くいます。

 妊娠できない原因が明らかにある場合は別ですが、いったん不妊治療を休止して、当院の「不妊ルーム」に通いながら、自分たちでタイミング法を試したら妊娠した、という人は少なくありません。

――「不妊治療をがんばればがんばるほど、赤ちゃんを迎える体からは遠ざかってしまう」とおっしゃいましたが、不妊治療をやめたら妊娠するというのは、矛盾しているような気がします。

放生:経験された方はわかると思いますが、不妊治療というのはストレスのオンパレードです。最近では、きれいなクリニックが増えましたが、それだとしても、不妊クリニックが楽しい場所のはずはありません。排卵日が近くなったら病院で内診を受けなくてはならず、それでもまた生理がきてしまい憂鬱になる。排卵誘発剤など、女性の体にかかる負担も相当なものです。不妊治療をお休みすると、そこから解放され、リラックスできたことがいい結果に結びつくわけです。

 しかし、不妊治療を行うクリニックの中には、こうした女性のこころとからだを考えない、それどころか、“卵”しか見ない医師も少なからずいるようで危惧しています。

◆“卵”しか見ていない不妊治療クリニックも

――妊娠するには「卵」が大事だと思ってしまいますが、どういうことでしょう?

放生:たとえば、不妊クリニックに通っていたのに、うちに来てはじめて子宮筋腫があることを知ったという人がいます。不妊治療をしているのに子宮筋腫を見逃すなんて、卵しか見ていないからです。また、女性のからだのコンディションを知るのに基礎体温表ほどわかりやすいものはないのですが、この基礎体温表を重視しない医師も増えています。

 また、検査結果の数値だけですぐに、ステップアップをすすめるケースが増えているのも、卵重視の現れだと考えています。

――どういった検査ですか?

放生:代表的なのがAMHの数値です。AMHとは抗ミュラー管ホルモン(anti-M.llerian hormone)の略で、卵巣内にどれぐらいの卵が残っているのか、卵巣予備能をおし図るものだと考えられています。この値が低いと「あなたは37歳ですがAMHの値は43歳相当です。1日も早く体外受精をしたほうがいいでしょう」と言う医師が多いのです。

 確かに、AMHの値は年齢と相関し、年齢が高くなればAMHの値も低くなります。しかし、決して、卵の質を表すものではありませんし、卵の数自体を示しているわけではありません。

――そうなんですね。

放生:AMHの値は体調などにも影響されます。私の患者さんでも、AMHが42歳の平均値の0・8から26歳の平均値4・3に改善した人がいます。AMHは決して妊娠の可能性を示すものではないのです。でも、「AMHの値は43歳相当」なんて言われたら、1日も早く体外受精をしないと間に合わないと思ってしまいますよね。同じように、「もう38歳ですから」と、年齢から体外受精へ誘導されることも多いようです。

◆不妊治療のベルトコンベヤーに乗せられてはいけない

――妊活は年齢のリミットがありますから、年齢を言われると「それしか方法はない」と思ってしまいます。

放生:タイミング法からスタートしたカップルも、タイミング法を2〜3回試してみてダメなら人工授精へ、人工受精がダメだから体外受精へと、ベルトコンベヤーに乗せられたかのように進んでしまいます。しかも、そのスピードがどんどん速くなっています。

 本人たちの気持ちは置き去りにされたままで、後戻りも許されない。それが現在の不妊治療の現場なんです。

――それもストレスになりますね。

放生:気持ちだけではありません。多くのクリニックで行われている体外受精は、強い排卵誘発剤を使って人為的に刺激を与え、複数の卵を成熟させて、たくさんの卵子を採る方法です。先ほど、AMHの値が低いから体外受精をすすめられるとお話ししましたが、ただでさえ卵巣予備能の低い状態から採れるだけの卵をとったら、あっという間に卵巣が空っぽになってしまいます。そしてそこで妊活は強制終了です。

――体外受精をした結果、赤ちゃんができないと突きつけられてしまう、ということもあるわけですね……。しかも不妊治療の費用って、高額なんですよね?

放生:地域やクリニックによって違いますが、タイミング法は1回2000円〜3000円。人工授精は2万〜3万円。体外受精は40万円から80万円、なかには120万円というところもありますね。

――120万円!

放生:だからこそ、ベルトコンベヤーに乗せられて流されるのではなく、カップルでどういう治療をしてくのかを話し合い、自分たちがイニシアチブをとりながら、妊娠を目指してほしいと思っています。納得して治療を受けることで、ストレスも軽減されるはずですから。

◆いい不妊治療クリニックの見分け方

――いい不妊治療クリニックの見分け方はありますか?

放生:そうですね。体外受精はとくに「どこで治療を受けるか」にかかっていると言ってもいいほどで、クリニック選びは大切です。

 医師との相性もありますが、私としては、「開院から5年以上」経っているクリニックで、「その日のうちに採血検査ができる」「培養士が複数人いる」「AMHをことさら強調しない」ところがいいと思います。あと、専門的になりますが、体外受精に対してロング法だけではなく、「低刺激採卵、自然周期採卵の選択肢がある」ところがおすすめです。

――そのほか、不妊治療にあたって、気をつけるべきことはありますか?

放生:誤解して欲しくないのですが、私は人工授精や体外受精などの高度生殖医療を否定しているわけではありません。人工授精は男性側に不妊の要因があるカップルの光明となりましたし、体外受精は赤ちゃんを諦めざるをえなかった人にも可能性を開きました。

 体外受精が成功しなくて当院に来られた方でも「体外受精をもう一度試してみては?」とアドバイスすることもありますし、ステップアップを決めたカップルには信頼できる医療機関を紹介しています。

 不妊治療は赤ちゃんを授かる選択肢として重要なものです。しかし、先ほど言ったように、流されて治療を受けていると、希望とは違う結果となったときにやりきれない思いが残ってしまいます。

 ステップアップを急がなくてもいい。ときに休んだり、“ステップダウン”をしてもいい。カップル自身が治療の舵取りをし、赤ちゃんを迎えるこころとからだをつくっていくことが大切だと思います。

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では「赤ちゃんを迎えるこころとからだ」をどう作ればいいのか?次回はその点を伺います。

【放生勲(ほうじょう・いさお)医師】

1960年、富山県生まれ。こまえクリニック院長、内科医。87年、弘前大学医学部卒業。97年、東京大学大学院医学博士課程修了(医学博士)。99年、東京都狛江市に「こまえクリニック」を開院。2000年、「不妊ルーム」を開設。不妊に悩むカップルのカウンセリング、フォローアップを行い、2000組を超えるカップルを妊娠に導いている。著書多数、近著は『卵巣セラピーで妊娠体質をつくる』

<文/女子SPA!編集部>

【女子SPA!編集部】

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