たけし再婚。長年の妻を捨てて、最後の恋に走る熟年男性の心境とは

たけし再婚。長年の妻を捨てて、最後の恋に走る熟年男性の心境とは

「映画監督、北野武。」フィルムアート社

<亀山早苗の不倫時評>

 次々と報道される有名人の結婚離婚。その背景にある心理や世相とは? 夫婦関係を長年取材し『夫の不倫がどうしても許せない女たち』(朝日新聞出版)など著書多数の亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)

◆「残りの人生」を考えた、ビートたけしの再婚という選択

 タレントのビートたけし氏(73歳)が、自らテレビの生放送で再婚について語った。

 昨年5月、40年連れ添った妻と離婚、18歳年下の愛人とすでに8年ほど一緒に暮らしていると言われていたが、再婚していたのである。再婚したのがいつかは明らかにしていない。

 長年、別居状態にあったとはいえ、彼は、糟糠(そうこう)の妻である前妻との関係を「親友みたいなもの」「たまに会うくらいがいいんだよ」と称し、「いい距離感の夫婦関係」を強調していた。だからこそ、突然の再婚に「老いらくの恋」のような言われ方をしている。

◆事務所も糟糠の妻も捨てて、新しい人生に賭けた

 たけし氏は、「お笑いのたけし」と「映画監督の北野武」を自身に内包している。おそらく発想も感性も考え方も、微妙に異なっているのではないかと思う。古希(※70歳のこと)を過ぎ、それぞれの分野における自身の「感性」に多少なりとも自信が揺らいでいることはじゅうぶんに考えられる。何かを創り出す、生み出すには常に新しいアンテナが必要なのだ。

 周りはもはや、彼に何かを言えない状態にあったのかもしれない。自分が時代や新しい感覚からずれていないかを計る術がないのだ。たとえ古い感覚で生きていくとしても、新しいものを知っていて古いものを選択するのと、新しいものを知らずして古いものに固執するのとでは、お笑いにせよ映画にせよ表出してくるものは異なってくる。

 そんなとき、A子さんが出現した。18歳年下とはいえ、彼女自身も人生経験は豊富な世代。そしてなにより、彼を巡るさまざまな煩わしいことから解き放ってくれたのではないだろうか。たとえば事務所とのやりとり、軍団との関係などなど。単なる男と女を超えた関係がそこには存在した。

「今からでも、残りの人生を彼女に預けてみたい」

 彼はそう思ったかもしれない。だから事務所も糟糠の妻も捨てて、新しい人生に賭けた。彼の仕事と、彼の人として男としての人生に惚れ込んでくれた女性とともに。

◆新夫人は「寝たまんまパンツをはかせて」くれる世話女房

 母親との関係を語るたけし氏を見るにつけ、「かあちゃん」と甘える女性を欲しているのではないかと想像できた。A子さんは、母のように彼を包み込み、ときには叱咤激励する、そんな女性なのではないだろうか。

 たけし氏は著書で、彼女との生活を「食事にも気を使ってくれるし、最近なんか、朝起きりゃ寝たまんまパンツをはかせてくれて」と明かしている。妻との「いい距離感」を強調していたころとは違うスタンスだ。当時は自身の本来の欲求より、若さゆえのやんちゃが上回っていたのかもしれない。若いときは世話女房はうるさいだけ、年齢がいけばそのありがたみがしみじみわかるといったところだろうか。

 筆者の知り合いで、飲食業を営む男性が、60代後半になって、突然離婚、再婚した。35年連れ添った妻がいながら、彼は20歳近い女性と恋に落ちた。それでも最初のうちは、「恋愛は恋愛」と割り切ろうとしていたのだそうだ。

◆靴下をはかせてもらって「スイッチが入っちゃったんですよ」

 彼は彼女に週に3回ほど会っていた。あるとき、ラブホで彼女が「靴下をはかせてあげたいんだけど、いい?」と遠慮がちに聞いてきたそうだ。彼はそんなことをされたことがないので照れたが、彼女にはかせてもらった。

 彼女は靴下をはかせると、ポンポンと足を叩いたのだという。「はい、終わり」というように。そのとき、彼の頭の中を10年ほど前に亡くなった母親の面影が浮かんできた。小さいころ、母はよくそうやって靴下をはかせてくれたのだ。

「それでスイッチが入っちゃったんですよ」

 彼はそう言った。その彼女とどうしても結婚したい。残りの人生を彼女に甘えながら暮らしたい。そう強く思ったそうだ。

「女性に甘えたい。それが本音だった。妻は甘えさせてくれるタイプじゃなかったから、私もいっぱしの男を気取っていたけど、本当は弱い自分をさらけ出したかったのかもしれない」

 そして彼は妻に家や預貯金をほとんど渡して離婚、3ヶ月後には靴下をはかせてくれる彼女と再婚した。

◆「今の私は、とにかく甘えたかった」

 経営者として今も仕事をしているから、そんな決断ができたのかもしれないが、新妻も自身の仕事を辞めることなく働き続けているそうだ。

 あれから数年、彼は今も靴下をはかせてもらっているとにやけた。

「若いときはしっかり家庭を守って子どもをちゃんと育ててくれる女性がよかった。それが前妻だったんですよね。だけどトシをとってくるとこちらも要求が変わってくる。今の私は、とにかく甘えたかったということでしょう(笑)」

 パートナーに求めるものが変わっていくのは女性側にもあることだろう。シニアになったからこそ、より自分に合ったパートナーと添っていきたい。そういう考え方が広がっていくのも悪くはない。人は今日より明日、少しでも幸せになりたいのだから。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数

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