「シングルマザー死ねって日本が言ってる」ひとり親の過酷な暮らし

「シングルマザー死ねって日本が言ってる」ひとり親の過酷な暮らし

「シングルマザー死ねって日本が言ってる」ひとり親の過酷な暮らしの画像

<『シングルマザー死ねって日本が言ってる』から考える社会問題 Vol.1>

『シングルマザー死ねって日本が言ってる』という過激なタイトルのブログ記事をご存じですか? 今年1月に公開された、シングルマザーの悲痛な訴えです。そのリアルさとインパクトからSNSなどで瞬く間に拡散され、「立派な社会問題……日本の闇を見た」「大変なのはシンママだけなの?」など、議論を巻き起こしました。

 このブログの筆者、misoyorishiohaさんが語った“ひとり親の現状”は、あまりに過酷だったのです。以下、ご本人の許可を得て紹介します。

◆「シングルマザーに人権はないのかも」

『シングルマザー死ねって日本が言ってる』というエントリーは、次のような書き出しから始まります。

<ここは先進国の日本 未就学児を抱えた片親に 人権はないのかもしれない>

 その先には、ニュースや政治家の口からは語られることのない、シングルマザーの生々しい日常が続きます。例えば保育園問題。(<>内はブログより原文ママ抜粋、以下同)

<役所からもらった来年度の保育園と保育可能児童の数がほぼ全てほぼ全て!!数字の0しか並んで居ないのを、見て。今年の保活は諦めた。>

<独りで子供を育てて、周りに頼れる人も居ない状態、元旦那からは養育費もなし。

こちとら必死に働かなければ子供にご飯も食べさせられない。保活に使う時間なんかないし、そんな時間があるなら仕事をする>

 子どもを預けなければ働けない。しかしその預け先が見つからない。空きを探して走り回れる時間もないほど追い詰められている様子が垣間見えます。

◆保育料や増税で圧迫される生活

 そんななか、やっとの思いで預けられたのは認可外保育施設だったとのこと。ところが……

<保育料無償化に伴っても、認可外保育施設は施設によって金額が違うから、と、半年後の支給になっていて、結局は増税やらなんやらで生活はただ圧迫される。>

 昨年10月から始まった幼児教育・保育の無償化ですが、misoyorishiohaさんの場合は支給まで半年はお預けの状態でした。待っている間、むしろ消費増税の方が生活に重くのしかかります。それでも生きていくためと子どもを預けて働く先では、シングルマザーへの容赦ない偏見にさらされます。

◆「男の味忘れてるんじゃねぇのか」職場でのセクハラ

 ひとつは、職場でのパワハラとセクハラ。

 会社では子どもの体調不良で早退を申し出るととがめられ、「早退したくらいだからもっと(仕事を)できるはずだ」などと叱責される日々。さらには、<男の味忘れてるんじゃねぇのか、と酷いセクハラを受けた>といいます。

 そしてもうひとつは、シングルマザーへの誤解からくる圧力でした。

<シングルマザーやシングルファーザーはいいじゃないか、児童扶養手当ももらえるし、医療費も薬代も地域によればタダじゃないか、こっちが払ってる税金なんだよ。謙虚にしなさいよ

これは私が実際に昔の女性上司に言われた言葉だ。(略)まるでそれでは私が税金を納めていないような口ぶりだった。

離婚であろうが死別であろうが、税金も年金も収入に応じて当たり前に支払う。>

◆ひとり親が金銭的に優遇されている、という大誤解

 シングルマザーの公的な支援や負担には、多くの誤解があります。

 年金や国民健康保険には免除や減免の制度がありますが、一定額以下の所得や失業などの条件があり、将来受け取れる年金額にも影響します。

 年末調整や確定申告では「寡婦控除」が受けられ、地方税や所得税などの各種税金の決定額にも影響しますが、納税を免除されるのは一定の所得以下。「シングルマザーだから払わなくていい」というわけではありません。misoyorishiohaさんも、独身時代とあまり変わらない額の税金を納めているといいます。

 また、上司の言う「児童扶養手当」はひとり親へ支給される助成金で、支給額は前年度所得と子どもの人数で変わります。月の支給額は、満額支給で第1子43,160円、第2子10,190円、第3子以降6,110円。親の前年度所得の制限は、子ども1人なら87万円、子ども3人では163万円となり、所得制限を超えた場合は所得額に応じて減額されます。

 つまり、例えば3人の子を持つシングルマザーの年間所得が163万円以内なら、支給額は満額で3人分59,460円/月になり、1人っ子で親の所得が87万円以下なら、43,160円/月となります。(※令和2年4月現在。金額は毎年改定されます)

 いただけるのは、確かにありがたい。でも、仮に所得をギリギリの額に抑えて満額の支給額をもらったとしても、生活が潤うほどではありません。そして所得基準を超えれば、手当は容赦なく減額されます。その所得制限や支給額に、misoyorishiohaさんは疑問を呈します。

◆月6万円で、子ども3人育てていける?

<児童扶養手当も、時代錯誤な金額制限と設定だ。

(略)

月に6万で、子供三人の全てが賄えるっていつの時代ですか?

本当にまだ昭和中期の中で生きていますか?>

<保育園無償化なんてつい最近の話で、それまで三人とも未就学児で全員保育園に入れていれば大変な事になる。月6万だよ?無理くないか?私は無理だ。

(略)

フルタイムで働きながら、子供の将来の為に今しか無理して働けない!と、掛け持ちで清掃のバイトや日雇いの派遣に行っていた私は、もう二回、児童扶養手当を減額されている。

この時点で色々おかしい気がするのは私だけなんだろうか。>

 職場ではひどいパワハラとセクハラを受け、睡眠時間を削って子どもと過ごす時間を捻出するうちに体を壊し、それでも子どもとの生活のために、シングルマザーへの偏見に耐えながら働く日々。そして、がんばった分だけ児童扶養手当は減額される……。そんな環境が、Misoyorishiohaさんに「シングルマザーに人権はない」との思いを抱かせたのでした。

◆身体を壊すほど働いて、白い目で見られながら暮らす

<独りで家の家賃を払い、食費を払い、保育料を払い、税金を納め、年金を納め……

その上で、子供が熱を出したと電話があれば嫌味を言われながら早退し、子供の看病をし、回復したらまた嫌味を言われながらデスクの上に山積みになったままの仕事をこなす。

(略)

そうして、会社員を続けながら税金を納め、年金を納め、子供の貯金をし、雀の涙ほどの児童扶養手当を貰っている事を白い目で見られながら生活している。(略)児童扶養手当の年収上限をオーバーしてでも、働くしか私たち親子がご飯を食べていく術はない。>

 ブログにはほかにも、フルタイムの職場で理不尽にも退職を余儀なくされた経緯や、退職後の会社の耳を疑うような対応、女性軽視を感じさせるトラブルなど、misoyorishiohaさんがシングルマザーであるがゆえに経験してきた様々な出来事がリアルに描かれています。

 一方で、子どもの預け先は保育士の表情が疲弊していないことに注視して選んだり、子どもを注意するときは叱るのでなくミュージカル調に伝えたりと、子どもに精いっぱいの愛情を注ぎ、楽しく暮らす工夫をしている様子もブログからはうかがえます。

 しかし、待機児童問題、職場の無理解とパワハラやセクハラ、不十分な公的支援、そしてシングルマザーへの偏見や女性軽視が満ち溢れた世の中に

<なんだこれは これが日本か 世界に誇る先進国なのか?

時代はいつから止まっているんだろう>

 と、日本で暮らすシングルマザーのあまりに悲痛な現状を訴えているのです。

◆困っている人たちを叩く“自己責任論”

 ブログは公開初日だけで10万件を超えるアクセスがあり、SNSでもシェアされて、方々でたくさんのコメントが寄せられていました。

「愚痴ではなく立派な社会問題」「政治家に届いてほしい」「読んでいて涙が出た。幸せになってほしい」など、共感や応援の声も多くみられましたが、同時に否定的なコメントも多く、このブログへのコメントが、まさにシングルマザーを取り巻く日常の縮図にもなっているのです。具体的には、次のような傾向が見られました。

1. 自己責任論

・「勝手に離婚したんだから自己責任。国のせいにするな」

・「男を見る目がないのが悪い」

・「金がないのに親権取るのが間違い」

 DV被害に遭っている女性や、やむを得ない事情で生活保護を受けている人などに関する話題でもよく目にしますが、果たして彼女の提起した数々の問題は“自己責任”で片付けて良いものでしょうか。

2. 男尊女卑、女性軽視

・「周囲に愛される努力でもすれば?」

・「男にバカにされないようにもっと勉強するべき」

・「いくらもらえれば満足なの?」

 セクハラや女性軽視と言えるコメントも多数見られました。もしブログ主がシングルファーザーであったとしたら、このようなコメントは付いていないかもしれません。

3. 無理解、見当違い

・「かわいそうアピール、不幸アピールにしかみえない。正直どうでもいい」

・「ゴチャゴチャ言ってないでしっかり稼げ」

・「児童手当なんか独女ももらってない」

 ブログの一部を読んだだけで書き込んでいる様子ですが、「全体を見ず、単語だけに反応して叩く」タイプは、他の場所でも見かけます。“現状への無理解”以前の問題かもしれません。

◆「ひとり親は、かわいそうな存在でいるべき」という偏見

 misoyorishiohaさんにこのブログについて話を伺ったところ、「ちょっと愚痴を吐き出しただけのつもりだったから、反響には驚いた」と言いつつも、次のように語ってくれました。

「シングルマザーは部屋を借りるだけでも大変です。世間の目も、公的な支援からしても、シングルマザーは“みじめでかわいそうな存在でいるべき”みたいなイメージが根強いんだなって感じます。シングルマザーが増えているからこそ、イメージを変えて、理解を得られるようになっていってほしいです。

 助けを求める人に必要な行政サービスが行き届き、サポートをしてくれる職業の人たちや施設にも、もっと手厚い保障があってしかるべきとも思います。でも現実では、公立の保育園が閉園しています。子どもを預けないと、働けないのに。そしてたとえ預けらえても、『子どもがかわいそう』『母親失格』とまで言われてしまう。

 シングルでも夫婦そろっていても、みんな必死で子育てをしています。だからこそ、“女だから”“母親だから”といった偏見がなくなるよう、日本の男尊女卑も減っていってほしいと切に願います」

 かつてシングルマザーとして2人の子どもを育てていた筆者も、シングルマザーへの風当たりの強さや偏見に思い悩んだ経験があります。10年以上経っても変わっていない現状にショックを受けると同時に、misoyorishiohaさんの上げてくれた声が、シングルマザーを取り巻く社会を変えるきっかけになってくれたらと願っています。

 そんな思いも込め、次回からは『シングルマザー死ねって日本が言ってる』で提起された社会問題について、misoyorishiohaさんの体験や専門家の解説とともに深堀りしていきたいと思います。

<取材・文/千葉こころ>

【お詫び】

編集上の手違いにより、タイトルに誤字がございましたので、訂正いたしました。

misoyorishioha様、読者、関係者の方々にお詫びいたします。

女子SPA!編集部

【千葉こころ】

ビールと映画とMr.Childrenをこよなく愛し、何事も楽しむことをモットーに徒然滑走中。恋愛や不倫に関する取材ではいつしか真剣相談になっていることも多い、人生経験だけは豊富なアラフォーフリーライター。

関連記事(外部サイト)