発達障害の人たちが語る恋愛の難しさ「相手をメンヘラ化させてしまう…」

発達障害の人たちが語る恋愛の難しさ「相手をメンヘラ化させてしまう…」

※写真はイメージです

 雑談が苦手、物忘れが多い――発達障害を抱える人たちの生きづらさが、徐々に知られるようになっている。それは仕事や日常生活だけでなく、恋愛においても苦労を強いられるという。当事者特有の恋愛の悩みを聞いた。

◆発達障害の人が感じる、恋愛の難しさ

 コミュニケーションを取るのが苦手、落ち着きがなく同じミスを何度も繰り返す、できることとできないことの差が激しい――。こういった特徴を示すことが多いとされる発達障害。

 原因は先天的な脳の機能障害で、仕事や日常生活に支障が出るのはいわずもがな、人間関係の極致である「恋愛」において、当事者の苦悩は計り知れない。

「彼女に『早く会いたいね』と言われたので真夜中に車で2時間かけて会いに行ったら、『本当に来たの!?』と引かれてしまった」(27歳・男性)

「恋愛心理学で相手の表情や動作、仕草を真似ると好感が得られるというミラー効果を知って、意中の女性の前で実践したら、真似しすぎてかえって気持ち悪がられてしまった」(39歳・男性)

「毎日彼氏と会いたいという気持ちがわからない。もちろん好きって感情はあるけど、会うのはワンシーズンに1回くらいで十分だと思う」(28歳・女性)

 これらはすべて発達障害の種類のうちASD(自閉症スペクトラム障害)に当たる人から聞いたエピソードだ。発達障害カウンセラーで自身もASDである吉濱ツトム氏に、その特徴を聞いた。

「ASDにはいくつかタイプがあって、日本人に一番多いのが受動型。社会的適応力の欠如、コミュニケーション能力の欠如、興味の凸凹という特徴があります。孤立型は、表面的には他人にまったく興味がなく、コミュニケーションの必要性を感じていません。 ASDはストーカーのように異常なほど固執する印象をもたれがちで、確かにそういった面もありますが、用件がなければ連絡しない、会おうともしないこともあります。行動が極端で中間を取るのが難しいのです」

◆彼女をメンヘラ化させてしまう

 さらに発達障害YouTuberの光武克氏は、ASDの男性に顕著な恋愛傾向について語ってくれた。

「ASDは自分の世界に相手を取り込もうとする人が多く、それでいて自己肯定感が低いので不安になりやすい。それが恋人と連絡を取り続けるなどの束縛に繋がり、行きすぎた独占欲は共依存を引き起こす。結果として彼女をメンヘラ化させてしまうのです」

 光武氏自身も気づかぬうちに彼女をメンヘラにさせてしまった経験があるという。

「彼女の希望で、携帯電話を交換していたことがあります。通知が来たら『○○さんから連絡が来ている』と互いの連絡を監視していました。いつのまにか共依存になっていて、僕が彼女をそうさせたんだと後で気づきました」

◆恋愛をきっかけに発達障害が発覚

 続いてADHD(注意欠如・多動性障害)について精神科医の司馬理英子氏は次のように解説する。

「ADHDの人は行動力がありますが、衝動的で目の前の楽しみを優先しがち。行きすぎると恋愛に依存したり、多くの異性と関係を持ってしまったりする傾向があります」

 その傾向が窺えるエピソードがあった。

「男性と遊ぶのに夢中で、大学の授業がどうでもよくなってしまい、単位を取得できず中退してしまった」(23歳・女性)

「昼と夜で違う男と寝る日もあるほどで、気づくとセフレは2年間で20人超。ハプニングバーに通い、スワッピングにハマって毎週4〜5組のカップルとやっていました」(24歳・女性)

 また、衝動性は感情的になりやすい性格の要因にもなる。

「ついカッとなってしまうところがあり、辛抱強く関係を構築するのが苦手です。そのため、関係が長く続かず、離婚歴が多い人も少なくありません。ADHDは言いすぎたら『ゴメンね』と謝りつつも同じことを繰り返してしまいます。ちなみに『何が悪いの? 本当のことじゃん』となることがあるのがASDです」(司馬氏)

 ADHDが持つ注意欠如は、いくら好きな相手でもカバーできないようだ。

「名前を覚えるのが苦手で、何かと関連づけて覚えるようにしています。運命を感じる男性と出会えたときに、彼の苗字が偶然、私の通っていた小学校の名前と一緒だったので、すぐに覚えられると思っていたら、小学生のとき隣の席にいた田中くんとなぜかごっちゃになってしまい、後日『田中くん』と呼んでしまいました」(22歳・女性)

◆発達障害の人同士は惹かれ合いやすい?

 代表的な発達障害は、ほかに読み書きや計算が苦手なSLD(限局性学習障害)があるが、恋愛に影響を及ぼすケースは比較的少ないとされている。

「学校の勉強ができて仕事も成功している社会的地位の高い人が、恋愛で初めて挫折して、自分が発達障害だと気づくケースはよくあります。恋愛は誰しも悩む問題ではありますが、その度合いは障害のない定型の人とは大きく異なります。ただし『発達障害=モテない』というのは間違い。抜群に容姿が整っていたり、社会的に成功していたり、独自のセンスが光っている人もいます。つまり『異常にモテる』か『まったくモテない』かなのです」(吉濱氏)

 ちなみに、発達障害者同士は惹かれ合いやすい傾向があると識者3人は指摘。だが、障害の組み合わせによって、相性の良しあしには大きく差があるという。

 当然ながら、解説した傾向がまったく該当しない人もいる。発達障害は、個人によって持っている特性がバラバラだからだ。とはいえ、空気を読むのが苦手とされる発達障害者にとって、究極の空気の読み合いともいえる恋愛は、最大の課題かもしれない。

◆当事者に聞いた、恋愛の困難

 以下は、今回当時者に聞いた、恋愛で感じた困難のエピソードである。

▼異常に忘れっぽい…「何の日だか覚えてる?」思い出せなかった誕生日

 デートの約束や記念日をすぐに忘れてしまいます。彼女の誕生日に「何の日だか覚えてる?」と聞かれてもまったく思い出せず、彼女が怒って帰ってしまいました。悪気はないのに自分のダメさにショックでした。

▼恋愛が楽しめない…好きってどういうこと? 恋愛感情がわからない

 自分のことだけで精いっぱいなのに、恋人のことまで考えられません。付き合っても、途中でなぜ好きなのかわからなくなり、2〜3か月で別れてしまいます。タスクが2倍3倍になる感じで、疲れてしまいます。

◆発達障害の主な種類と恋愛傾向

▼自閉症スペクトラム障害(ASD)

●コミュニケーションや社会性、想像力に障害がある

・日常的に雑談や気配りが苦手で、恋愛のスタートラインに立てない

・対人緊張が強く孤独を好むが、一方で寂しがり屋という自己矛盾を抱える

・恋愛感情がわからず、恋愛に興味が持てない

・強い劣等感ゆえ、相手を束縛したり、献身的になりすぎて、共依存に陥りやすい

▼注意欠如・多動性障害(ADHD)

●注意が散漫、衝動的な行動や多動の制御が困難

・ドジなミスを多発したり、ついカッとなってしまったり、恋人と喧嘩しやすい

・飽きっぽく辛抱強さに欠けるため、交際期間が短くなってしまう

・恋愛体質で人を好きになりやすいが飽き性で浮気しやすい

・流されやすく危険な恋愛に走ったり、刺激を求めて肉体関係に至りやすい

▼限局性学習障害(SLD)

●知的に問題はないが読み書きや計算などが極端に苦手

・騙されて利用されやすく、デート商法に引っかかる可能性がある

・仕事が安定しないので恋愛に奥手になる

・対人能力に支障が表れにくいため、恋愛的な問題には比較的発展しない

※特性には個人差が大きく、まったく当てはまらない人もいます

【吉濱ツトム氏】

発達障害カウンセラー。自身もASDで、知識と方法を体系化し、約2000人の当事者と面談した実績を持つ。著書に『発達障害と結婚』(イースト・プレス)など

【光武 克氏】

発達障害YouTuber。発達障害の当事者としてYouTube「ぽんこつニュース」で役に立つ情報を紹介。発達障害バー「THE BRATs」の代表を務める

【司馬理英子氏】

精神科医。’97年に、著書『のび太・ジャイアン症候群』(主婦の友社)を刊行。発達障害という言葉を日本に知らしめる。主に子どもと女性の治療を行う

<取材・文・撮影/桜井カズキ ツマミ具依>

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